第04話 活動にあたり・餞別をいただく
「ミズキさん! ――荷物持つの、手伝います!」
マルーはいち早く荷物を持ってきたミズキの元へ行き、それを受け取った。
「見た目も大きさも全然違う――あれ? 何か書いてある。これにもあるし。こっちにも――」
荷物にはそれぞれ、英語にも図形にも見える筆跡があった。マルーが読もうとした瞬間、彼女の視界にかすみがかかる。
「――あっ! 私の名前だ!」
なんと、筆跡がマルーに分かる文字に変わったのだ。自分の荷物を見つけられたマルーは、その他の荷物をテーブルに放り出し、早速開封にとりかかる。
「おいマルー、誰がどの荷物か分からねえだろ。この世界の文字なんて読めね――お。こいつ読める! すげぇ!」
「あたしにも読めたわ!」
「僕も読めたー!」
それぞれの荷物を見つけたサイクロンズは、がむしゃらに包みを外してゆく。
「君達に合う武器を探してみたんだ。餞別と思って、受け取ってほしい」
「こいつ、すっげえ切れ味良さそう――しかも軽いぜ」
ボールが手にした武器は、洗礼さを感じさせる細身の剣。つばの中心で六角形に整えられた乳白色の宝石が輝いている。
「この玉の中、きれい……!」
リンゴの武器は、真っ赤で大きな宝玉を頭に付けた、木製の杖。
「皆見て見てー、こーんなに長いよー」
「――本当ね。この中では断トツの長さじゃないかしら?」
リュウの武器は、竜巻のような護拳が付いた槍であった。
「いいなあ皆、かっこよくて」
「お、マルー。俺と武器の種類一緒だな」
マルーは朱色の柄のありきたりな剣。刀身はボールが持つ剣より太いようだ。
「かっこいいじゃないマルー! あの時の剣とそっくりだわ!」
「そっくりじゃないよ! あの剣はもっとここがキラキラしてて」
「あの剣?」
「あらら。彼女が言っているのはきっとフェニックスソードのことね。……ごめんなさいマルー。あの剣がないと私が戦えなくて」
「そうですか……」
「そう落ち込むことはない。君達にはもう一つ餞別がある」
「もう一つですか?」
マルーが尋ねるとミズキがある封筒を差し出してくれた。受け取ったマルーが封を切る。中には数枚便箋が入っていた。
異世界の文字でつづられていたものの、先ほどのようなかすみがかかり、マルー達に分かりやすい文字に変わる……内容はどうやらミズキ宛てのようだ。遺跡探索を手伝ってほしい、というものだった。
「それは私の友人からの手紙だ。毎年そのように遺跡探索に誘ってくれるのだが、今年はこの組織のことがある――残念ながら私は探索に行くことが出来ない」
「ってことは、俺達にその探索を頼まれろっつーことか」
「そういうことだ。サイクロンズの初仕事だと思って、友人の頼みを引き受けてほしい」
結成してすぐに仕事がもらえるなんて――マルーの顔がみるみる華やぐ。
「行きます! 行かせて下さい! 皆、良いかな!?」
「あてもねえしな。行こうぜ!」
「そうね! 行きましょ!」
「行こーう!」
「ありがとう、サイクロンズ。探索が終わり次第、最上階の本部に来てくれ」
「期待しているわよ! 頑張ってね!」
こうしてラビュラとミズキを見送ったサイクロンズは、早速目的地へ発った。
思い思いに時間を過ごす一行。
マルーは、ラビュラに案内されていた時と同様、窓からの景色に釘付けだ。
「マルーったら、あれほどいっぱい景色を眺めたのにまだ見てるの?」
「だって面白いよ? 時々飛んでる鳥とか、海の中に生き物の影が見えたりするもん」
「――だそうよ。あんたも外の景色見たら? 気が紛れるんじゃない?」
「パス」
リンゴの言葉を一言で返したボールは、ラビュラが用意したらしい毛布にくるまり、ただじっと目的地に着くのを待っている様子。
「健――じゃなくて、ボールが船酔いするの、私全然知らなかった」
「離陸した時は毎回あんな風になるのかしらね」
「ゆっくり離陸は難しいから、我慢してもらうしかないかもー。僕が上手に操縦出来るようになったら、考えてみるー」
操縦席から穏やかに発言したリュウは、三人に目をくれず。思わずマルーの足は操縦席に向かった。リンゴもその後を追う。
「リュウは何してるの?」
「このフライトについての本読んでるー」
「え、分厚くない? しかも随分字が小さいわね」
「ここ以外にも部屋があるらしいからねー。注意書きがびっしりだよー」
ほらー、と見開きを向けるがリンゴはすぐそっぽを向いた。
「それも大事だけど、今はミズキさんがくれた依頼の事を考えようよ! ささ、準備準備ー!」
マルーも苦い顔をして話題を変えてはリンゴと共にこの場を離れてしまった。