【八の扉⑥】096)チームニーア、結成!
「分かった。じゃあ、一度だけチャンスをやる。ただし条件はアタシが決める。いいね」
シャロさんに譲歩させることに成功した私は小さくガッツポーズ。けれど、まだ不満そうなのはレジーだ。
「ニーアちゃん、向こうに一方的に決めさせる必要ないよ。どーせ無茶な要求を出してくるに決まっているんだから!」
私はレジーをまぁまぁと宥めながら
「レジー、大丈夫。どんな無茶を言われても、どの道無茶な場所に行く実力が足りないって追い出されそうになったんだから、なんでもクリアしてみせるよ!」
「、、ニーアちゃんがいいなら、いいけどさ、、、」
「話はまとまったかい? なら、ルールは3つ。1つ、当然実力を見るために無限回廊に挑んでもらうわけだが、扉の選別はロビーにやってもらう。ロビーは星読みも上手い。手心なし、実力を見るにふさわしい扉を選んでもらう」
「ポルク君が預かっていたギルドのギルド長ですよね。かまいません」
「実力の評価もロビーにやってもらう。ロビーが認めたのならアタシも認めよう。ここまでいいかい?」
「はい」
「では2つ目。今からいう者たちは今回の挑戦に参加させない。ウェザー、トッポ、ノンノン、フィル、の4人。それにハルウもだ」
「おれもダメなのか?」ノンノンが不満そうに言うと
「アンタがいたんじゃ危険なことがあっても、アンタの槍頼みになるだろう。それじゃあテストの意味はない」
「でも、、、」まだ何か言いかけるノンノンに私が「その気持ちだけで嬉しいよ」と伝えると口をつぐんだ。
「ってことは、私は当然参加でいいね」レジーが力強く宣言して
「無論私もです。除外されないかハラハラしていましたよ」とダクウェルが私の横に立つ。
「でも、それだと、、、荷物持ちがいないわ」フィルさんが心配そうに声を上げた。けれど、シャロさんは譲らない。
「荷物持ちは別に雇ってもらう。フィル、アンタもトッポも通常の荷物持ちの何倍もの荷物を持ててしまう。ノンノンの実力同様に、これはフェアじゃない」
シャロさんがそのように言ったところで、私は口を挟む。
「他のギルドから雇うのは問題ないんですね?」
「それは構わないよ。荷物持ちがいないと冒険にならないからね」
「冒険者を雇うのも問題ありませんか?」
「冒険者を?」訝しげな目を向けるシャロさん。少し考えてから続ける。
「、、、ま、かまいやしないが、アンタらはゲオルとも仲が良かったらしいね。ゲオルに泣きついて連れてゆくような真似をすれば、当然ロビーはアンタのことを認めないと思うがね」
そう言ったところで、一歩前に出たのがジュニオールさんだ。
「なら、私程度の実力なら問題ありませんね」とシャロさんに言う。
「ジュニオール、、、久しぶりだね、、なんでアンタがついてきたのかと思ったら、入れ知恵をしたのはアンタか」
「お久しぶりですね。いえ。私ではありませんよ。私はニーアさんが貴方の説得に成功したら無限回廊挑戦のお手伝いを申し出ただけです。無論、有償で。教会を動かすことを考えたのはニーアさん自身です。聖女様は随分と大胆なことを考えるものだと感心しました」
ジュニオールさんが私に提案したのは、ジュニオールさんを冒険者として雇わないかと言うことだった。今でこそカジノのオーナーだけど、元々冒険者で成功して商売を始めたのだそう。
もしもシャロさんから、うちのギルドの人たちを使っちゃいけないと言われたら、その時はカジノで勝ったお金で、それなりの冒険者達を揃えてくれると申し出てくれたのだ。
「ずるいですね、、、」呟いたのはシャロさんではない。ダクウェルだ。「そんな面白そうな場面に私が立ち会えないとは、、、」と非常に不満そうだ。放っておこう。
「ジュニオール、ほぼ引退していたアンタだが、かつては一流と呼ばれたアンタの同行を許せと?」
ジュニオールさん、そんなに凄かったのか、、、
「昔の話ですよ。今は引退した身です。それに私は最低限のフォローにとどめると約束しますよ。そう言う意味ではゲオルさんより安心ではないですか?」
安心の意味はよく分からないけれど、確かにもしゲオルさんに頼んだら、ゲオルさん一人で扉を攻略しそうな気がする。
「、、、どいつもこいつも、なんでこの娘一人に拘るんだい?」
「それはニーアさんが面白いからですよ!」と力説するダクウェル。ちょっと黙っていてほしいと思ったけれど、
「そうですな。ニーアさんは実に面白い」とジュニオールさんも同調するので、目を見開いた。え? そんな理由で!?
「面白い?」シャロさんも困惑している。
「ええ。私は比較的付き合いが浅い方ですが、彼女は何かしてくれそうな、実際、話題に事欠かない存在です。今回も教会を巻き込んで思いもよらぬ方法でシャロを説得しようとしている。この度の件、また話題になるでしょうね。多分、本人は分かっていませんが」
「自分で言うのもなんですが、小娘一人がクビになるならないの話ですよ? 話題にはならないと思いますが?」
そんな私の言葉に、教会の苦労人のノリウスさんが丁寧に説明してくれる。「やっぱり分かっていませんね。多分話題になりますよ。シャロさんは結構有名人です。それに喧嘩をふっかけて、教会を使って脅し、なおかつジュニオールさんなんてちょっとした伝説の人物を復帰させて、それでいて高難易度の扉に挑むんですよね? 話題にならない要素。あります?」
「えーっと、、でも誰も話さなければ、、、」
「すでにジュニオールさんがレジー達に使いを走らせたんですよね? もうその使いの人から有る事無い事噂になっていると思いますよ? そう言う話題大好きですから。この街の人たち」
中途半端にガセネタが出回るくらいなら、それこそ教会を使ってちゃんとした情報を回しておいた方が良いですよ。とアドバイスをくれるが、知らないうちに大掛かりになっていて困惑する。
「あ、そうだ、フラージュは連れて行ってもいいんですか?」
「フラージュ?」
「私に懐いている狼です」
「ああ、異世界の大型獣か。構わないさ。そんなに懐いているなら置いてかれても迷惑だ」
フラージュも連れて行けるのは良かった。まだこの世界に慣れていないのに、置き去りにするのはかわいそうだ。
なんとなく話がまとまったような気がしたけれど、もう一つ条件があるんだった。シャロさんにそれを聞く。
「最後の一つは10日間、異世界に滞在すること。これで全てだ」
それなら問題ない。この間のポメルの時もなかなかの長丁場だった。厳しい環境でも耐えられるかのテストだろう。望むところだ!
私が全ての条件を飲むと、シャロさんは大きくため息をつく。
「全く、ウェザーもとんでもない娘を拾ったもんだ、、、」と呆れたように呟いた。




