【幕間6-1】087)名前を決めよう!
「うーん、、、もちもち丸。赤くん。おおかみまる。。。」
「何? なんの話?」
受付でうんうんと唸っている私の横に、ひょっこりと顔を出してくるレジー。ダクウェルも一緒。
「この子の名前、決めてあげないといけないんだけど、なかないい名前がなくて。おおかみまるはちょっといいかなって思っているんだけど、、、、」
受付の足元でうとうとしている狼。その上ではハルウが背に乗って丸くなっており、大変微笑ましい絵面だ。
「、、、ちなみになんで、おおかみまるなの?」
「え? 狼だから?」
「さっき言ってた赤くんっていうのは?」
「目が赤くて綺麗だから」
「、、、もちもち丸は?」
「なんかここで寝ている姿を見てたら言葉が浮かんで、、、」
私の説明を聞いて、すごく大袈裟に頭を振って手を額に当てるレジー。その横ではダクウェルが手を口に当てて震えている。。。。もしかして笑ってる?
なんだか失礼な感じだったので文句を言おうとすると、それより早くレジーが私の両肩を掴む。表情は真剣だ。
「ニーアちゃん、ちなみに聞くけれど、ニーア棒の名前は決まった?」
その真剣な表情に気圧されながら、私は「、、、、まだです」と答える。
それからレジーは私を離すと決然と宣言。
「よし、これからみんなで犬っころの名前を決めます」
「えー、私が考えるからいいよ。それに狼だよ!」
「ニーアちゃん、その犬っころのためにも、”みんな”で決めるのが私はいいと思う。でしょ? ダクウェル?」と、ずっと忍び笑いをしているダクウェルに水を向けた。
「そうですね、、、私は聖女の名付けという栄誉も捨て難いとは思いますが、様々な人々の意見を聞くのは良いと思います」と無難な返事。
分かってますよ! 私にネーミングセンスがないことは! ふーんだ!!
というわけで急遽開催されることになった狼くんの名前会議。ちなみに雄です。
本会議に参加しているのは、私とレジー、ダクウェル。それにたまたま通りかかったロブさんと、事務所でうとうとしていたセルジュさんだ。無論本人もついてきて、私の足元で丸くなっている。
「名前、、、名前か、、、」たまたま連れてこられたにも関わらず、意外に真剣に考え始めるロブさん。
「ニーアの命名はともかく、身体的な特徴や出身地から取るのは良いかもしれんな。例えばレッドアイとか」
「それなら赤くんって考えました!」はいっと元気よく手を上げる私。可哀想な人を見る目でこちらを見つめるロブさん。
そして一言「なるほど。これは真剣に考えないとな」と言う。。。。真剣に考えていただけるのは何よりです。納得はいきませんが!
「人名に近いのもいいよね。ラルフとかさ」とレジーが言う。なるほど、その発想はなかった。レジー、1ニーアポイント進呈。
「やはり、愛着の湧く名前が良いでしょう。ファイアボールとかどうです?」それはダクウェルが好きなだけなので却下で。ダクウェルはニーアポイントマイナス1点。
それからあーでもないこーでもないと、喧々諤々な意見交換が続く。途中でウェザーが起きてきて顔を出したけれど、「ふうん」と言って、そのままどこかへ行ってしまった。
かれこれ1時間以上経ったろうか。
「では、最終候補はこの3つだな。まずはレッドキング。意味は狼の王を目指せという意味だ」自分で言いながら満足げなロブさん。
「次がゲオルジーノ。2人の強者より名前をいただいた、と」今度はレジーが胸を張る。
「最後がボンバーボンバー。印象に残る愛称ということだな」ダクウェルが微笑む。
、、、後から思い返せば、長い話し合いの末、私たちは完全におかしくなっていた。なぜこの3つが最終候補となったのか、全く理解ができない。
「、、、異論はないな。では、この中から決選投票とする。セルジュさんにも選んでもらおう」
全員なんだかギラついた目をして、混沌の様相を呈してきた命名会議。
そこに、ノンノンがふらりとやって来た。
「あ、フラージュ。ここにいたか。いっしょに狩にいこう」
フラージュと呼ばれた狼は「ウォン」と嬉しそうに鳴いて立ち上がると、ノンノンと共に事務所を出ていった。
、、、、というわけで、狼の名前はフラージュになったのである。
さてこのフラージュ。異世界ではノンノンが気配に気付くことができずに少し凹んでいたけれど、実はとんでもない能力を持っていた。
迷彩というらしいけど、フラージュは周辺の風景に合わせて体の色を変化させることができるのだ。それに伴い気配も大きく減じるとはノンノンの解説。
ノンノン曰く、多分フラージュ達は私たちのすぐそばを並走するようについて来たのではないかと言っていた。全く気づかなかったけれど、そうであれば恐ろしい。同時に、味方としては大変心強い。
また、あの赤い目はセルジュさんばりに夜目が効くみたいだ。「夜の狩りにむいている」とノンノンが満足そうに言っていた。
ノンノンとは何か通ずるものがあったみたいで、よく2人でつるんでいる。ノンノンがいない時の日中は、ハルウと一緒に大体私の足元で寝ていることが多い。
受付に来た依頼人は大抵驚くけれど、大抵は「これが聖女の従僕の、、、」と、嫌悪感はないみたいなので教会は上手くやってくれたみたいだ。聖女の〜のくだりはもう諦めた。聞かなかったことにする。
ま、そんなわけで日常が戻ってきた。今日も平和なのである。




