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【完結】案内ギルドの新人さん~時の聖女と世界の秘密~【130万PV感謝!】  作者: ひろしたよだか


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【七の扉②】076)やめて。いらない肩書きに追加するのやめて。


「とりあえず名前を聞こうか?」


 事務所の中、ちょっと笑いを噛み殺したようなウェザーの言葉に、先ほど(ニーア)に駆け寄ってきた3人組が名乗りを上げる。


「俺はトラン、青髪のこいつはチーク、そんでこの黄色い服を着ているのはカディスってんだ。あんたがギルド長? 俺たちとそう変わんねえ歳じゃんか?」


 多分ウェザーは見た目より年上なのだけど、外見も言葉遣いも怖いもの知らずのお年頃だ。私はここまで一緒にやってきて、姉と共に帰っていったシグルのことを思い出した。


 3人が名乗りをあげている後ろでは、レジーが楽しそうに冷やかしに来ていた。普段は全く見かけないのに、面白そうなイベントごとがあるとどこからともなくやってくる女の子である。


 そしてその面白そうなイベントとは、もちろん私に駆け寄ってきた3人組に端を発している。


 3人は受付でぼんやりしていた私に駆け寄ると、「聖女の姉御の幸運を使って、俺たちを金持ちにしてくれ!」と願い出てきたのだ。


 全く状況のわからない私が、とりあえず事務所へ連れて行ってウェザーに引き合わせたところ、先ほどと同じことを伝えつつも「俺たちは無限回廊の必勝法を発見したんだ!」と力強く宣言する。


 そんな騒ぎを聞きつけたレジーがひょっこり事務所にやってきて、冒頭のウェザーと共になんとも言えない笑いを噛み殺した顔をしていたのである。


 なお、笑いを噛み殺しているのは、トランたちの微笑ましささえ感じる無限回廊の必勝法発言に対してもではあるけれど、9割方は私のことを「聖女の姉御」と呼んでいる部分だということは、先ほどから私を見ながら笑いを堪えるレジーを見れば十分にわかる。


「トラン、チーク、カディスね。それで、君たちの必勝法っていうのは?」


「おいおい、ウェザーさんよ、俺たちが見つけた必勝法を簡単に喋ると思ってんのかよ? 高くつくぜ」


 どうもトランはウェザーに取引を持ちかけようとしているみたいだけど、話の持って行き方も拙いし、そもそも、、、


「まぁ、聞かなくても大体わかるけどね。大方、カジノに入り浸って運のいいやつを見つけて、無限回廊の扉を選ばせようってところかな。それで、勿体ぶっているのは自分達の予算がそれほどないから、必勝法とやらと引き換えに案内料を負けさせようってことか。ついでに言えば、カジノでそこそこ負けたのかな?」


「!? なんで負けたことまで分かんだよ!? いや、ちっ違げえよ!!」


 トランが慌てて否定したところで後の祭り。なるほど、それで幸運を分けてくれみたいなことを言っていたのか。

 だけど残念だったね少年たち。私はこのギルドに初めてきた時にウェザーから運がないと宣言された女なのだよ。ふふん。


 いや、自慢することではないけれど。なのでカジノの一件は完全にたまたまであって、そんなしょうもない理由で少年達の命を預かることはできない。申し訳ないけれど、ウェザーならあっさり断ってくれるだろう。


 ところが私の思惑など全く気にしないウェザーは


「、、、それで、トラン達が出せる予算はいくらなのさ? まずはそれを聞いてからだね」


 と意外なことに依頼を受け含みを残すことを言い始めた。


「ちょ、ちょっと、、、ウェザー!?」


 私が慌てて声をかけようとしたところで、パーティのお財布係なのだろうチークが予算を伝える。


「うーん、少し足りないけど、、、どうしようかな、、、」と悩むウェザー。


 そのタイミングでお買い物から帰ってきたフィルさんが事務所に入ってくる。


「あら、お客さん? こんにちは」


 もふもふの耳がチャーミングなフィルさんを見た3人は、一瞬驚いた顔をしたけれど「おお美人だぜ、、」「迷い人だ、喋るの初めてだ」などとコソコソ言葉を交わしてから「こ、こんにちは」と緊張を含んだ声で返す。差別的な気持ちよりも好奇心の方が勝っている印象だ。


 フィルさんへの対応で私の3人組への評価が少し上がった。基本的にフィルさん達への対応が良い相手への評価は甘いのである。甘々なのである。そしてそれはウェザーも同じだということをよく知っている。


 ウェザーは小さくため息をつくと、


「仕方ないなぁ。今回は特別だ。その料金で依頼を受けるよ。ただし出発は2〜3日後だ。それでいいかな?」


「ああ、俺たちは幸運の聖女の姉御が同行してくれるのなら、それでいい」


 ん? なんか今おかしなこと言わなかった?


「よし、じゃあ決まり。正確な出発日は後日知らせるから、泊まっている宿だけニーアに伝えておいて。それから、もうカジノには行かない方がいいよ、出発前に無駄に運を消費する必要はないからね」と笑うと、トランも苦笑いをしながら


「目的は達成できたからもう行かねえ。次に行くときは、無限回廊からお宝を見つけて金持ちになってからだ!」と、力強く微妙なことを言った。



「それじゃあ幸運の聖女の姉御! 無限回廊ではよろしく頼むぜ!」と見送りに出た私とウェザーに向かって元気よく挨拶をして立ち去ってゆくトラン達。

 うん。聞き間違えじゃなかったか〜。なんで肩書きに余計な言葉が増えているんだろう。


 その場で否定しても良かったのだけど、3人組は本当に「運」にこだわっているみたいだから、なんだか水を差すのは憚られたのだ。



 と、それよりも


「ねぇ、ウェザー、あんなの安請け合いしちゃって良かったの?」


「あんなのって?」


「決まっているじゃない。私が扉を選ぶって条件のことだよ」


「ああ、それか。うーん、ま、いいんじゃない。ちゃんと3人にも危険な場合は即帰るって伝えたし」


「でも、、、、」


 それでも私があの3人の、そして仲間達の命を預かる選択をすることには変わりない。


 そうか、ウェザーは毎回こんな責任を負っていたのか。すごいな。ウェザーは。


「すごいね、ウェザーは」思ったことがついそのまま口をついて出た。



 その言葉を聞いて少しキョトンとしたウェザーだったけれど、私の言わんとした意味を察したみたい。


「そんなに気負わなくても大丈夫だよ。どんな扉でもなんとかなるさ。それに、、、」


「それに?」


「いや、なんでもない。それよりもお昼にしよう。スープのいい香りがしてきた」


 と事務所へ戻ってゆくウェザー。なんだか少しはぐらかされた気がしたけれど、こうして私にとって7度目の無限回廊の挑戦が決まったのだった。





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