【六の扉⑧】070)ゲオルさんのギフト
空の上からこんにちは。目下落下中の私たちです。
原因は私がウェザーに頼まれて上空へと瞬間移動したからなので、誰のせいでもないのだけど、誰かに助けてもらえないと私は地面に打ちつけられて人生の終わりです。そうならないように祈るしかない。
最も頼りになりそうなゲオルさんへ視線を向けると、ゲオルさんは笑顔でこちらへサムズアップ。どう言う意味かな?
「これならわしの攻撃がちょうど良く最大化されるのである! ウェザー! 狙ったな!」と言っている。攻撃よりも今は救出を優先してほしいのですが!?
そんな私の願い虚しく、ゲオルさんは落下しながら「ウェザーとニーアの着地は任せるぞ!」と、ウェルさん達に言い残すと、自ら加速して一足早く地面へと向かってゆく。
「ニーアちゃん、ちょっと失礼しますね」放火魔ことウェルさんが私の体を引き寄せると、「多分もう一回浮くから、そのつもりで」と言う。
「もう一回? 私はもう跳びませんよ!?」落下しながら再び跳ぶ余裕は私にはない。それど、ウェルさんの言葉の意味はすぐに分かった。
「ふははははははは!!」地面に突っ込んでいったゲオルさんが、器用に体を回転させて、どぉうん!!! という大きな音と共に着地した瞬間である。ゲオルさんを中心に、地面がべこりとへこみ、一歩遅れて巨大な衝撃波が周囲のものを吹き飛ばしたのだ!
目に見えるエネルギーとでも言うのだろうか、ゲオルさんを中心に竜巻のような衝撃に襲い掛かられ、周辺にいた猿は軒並み空中へと放り出されて、空中をくるくると回転しながら吠えている。
この衝撃波を予め予測していたのだろう、私と地面の間に器用に体を入れたウェルさんが衝撃だけ引き受けてくれて、確かに私の体は一瞬空中で浮いた。と言うか、落下が止まったと表現した方が正しいだろうか?
暴風に翻弄されるように待っている猿を尻目に、ウェルさんが
「着地するから、ちゃんと捕まっていて」と私に声をかけ、私はウェルさんの体をぎゅっと掴んだ!
ズダン!!
結構な音を立てて地面に着地するも、さすがと言うべきか、ウェルさんに抱えられた私にはそれほど大きな衝撃はなかった。
「大丈夫?」爽やかな笑顔で私を気遣う放火魔さん。違う。ウェルさん。
「あ、ありがとうございます」お礼を言いながら下ろしてもらうも、上にいったり下に行ったりでちょっと頭がくらくらする。
しかも、私たちが着地したのはゲオルさんが作った大きな穴の斜面。足元がおぼつかなかった私は、そのまま穴の斜面を転がって、ゲオルさんの足元で「ぐえ」と声を上げながら止まった。
「大丈夫であるか?」と心配してくれるゲオルさんに対して、少し後からビーツさんに補助してもらって着地したウェザーが「あ、ニーアは異世界では一度は地面を転がりたいらしいから、気にしなくていいよ」と言い、ゲオルさんも「変わった趣味であるな」と納得。
ウェザー、、、、後で絶対に仕返ししてやるんだから!!
私が今回も異世界で転がったのはともかくとして、起き上がった私はゲオルさんに気になったことを聞く。
「ゲオルさんのさっきのってなんなんですか?」
「うむ。わしのギフトである。わしは自分で生み出した衝撃を増幅させることができるのだ。衝撃が大きければ大きいほど威力が増すぞ!」
「はへ〜、それであんなふうに猿が、、、」納得。
「それよりもニーアのギフトこそなんなのだ?」
「実は、、、」と私は私の不安定なギフトについて簡単に説明する。
「ほお、それはまた、変わったギフトであるな」とゲオルさんが感心してくれて、ミスメニアスのメンバー以外で、あまりギフトの話で良い顔をされたことのない私は少し面はゆい。
「あ、そうだ、猿はもう襲ってこないのかな?」
改めて周辺を見渡せば、先ほどの衝撃で近くにあった泉は跡形もなく消え去り、大木も傾いている。思った以上にとんでもない一撃だったみたい。
「多分、しばらくは大丈夫だと思うよ。司令塔がこれじゃあね」
ウェザーが斜めになった大木をポンポンと叩きながら私に答えてくれた。
「司令塔、その木が?」
「うん。厳密に言えばこれは木じゃないんだよ。さっき皮のむけた内側を調べてみたけれど、樹木のそれじゃなかった。見た目は木だけど、どちらかといえば生物の触覚みたいなものだと思う」
「ほう、そういえば先ほど空中で島が生きているとか言っておったな? どう言う意味だ?」
「文字通りの意味さ。ゲオルさん。多分ね、この広場がこの生物の消化器官なんだ。猿は目みたいなものかな? 自分の栄養にするためにこの島に入ってきた生物を広場まで誘導して、一度きたら地面を動かして逃さないようする。だからここにはたくさんの人骨があったし、逃げようとしても猿が監視をして、地面を回転させながらまた広場に戻ってきてしまう。猿も見た目は猿だけど中身は別物かもしれない」
「なるほど、それならば我々が逆方向に歩いたはずなのに、広場に戻ってきたのも道理であるか」
「かつての失踪記録も同じなんだろうね。今回は確認もできたけど、少人数で迷い込んだら気づかないまま永遠に広場を行ったり来たりすることになる。そして力尽きたら、栄養として吸収するんだ」
淡々と説明するウェザーだけど、その予想が事実ならゾッとする。
「この木が司令塔だと言うのは予想だけど、現に今、猿達は統率の取れた動きができていないように見える。さっきとの違いが何かといえば、この木が大きなダメージを受けていることだから、多分、この木からなんらかの指示が出てたんだろうね」
「うむ。そのように言われればそんな気がしてきたのう! では、脱出するなら今のうちであるか!?」
「そうだね。いっそこの木を完全に破壊しておく必要があるかもしれないけれど、、、ゲオルさん、どう思う?」
ウェザーに相談されたゲオルさんは少し考えてから
「いや、やめておくのが無難であろう。完全に破壊した時に何が起こるかわからぬ。いきなり島が沈み始めでもしたらたまったものではないからな!」
「だよね。よし、じゃあさっさとこの場所から脱出しようか」
2人の意見が一致して、お互いに頷き合ったちょうどその時。
「えい!」とさも当たり前のように炎を大木の周囲へ巡らせるウェルさん。瞬く間に炎に包まれる大木。今度は皮を剥いて炎をかわすこともできずにパチパチと音を上げる。
「、、、、ウェルよ、、、何をしておる?」
「え? さっき焼き損なったので、今度こそと」
放火魔は爽やかな笑顔でそう、のたまった。




