【六の扉⑦】069)惑いの理由は。
私たちがいる広場の周辺の木々に現れたのは猿の大群だった。10匹20匹なんて数じゃない。
見渡す限り鈴なりに連なった猿が、歯を剥いてこちらを威嚇している。大変よろしくない状況だ。
「おお、やっとご登場だな! やはり敵は見えぬよりもはっきりした方が良い!」とゲオルさんが吠える。私もそう思っていた。さっきまでは。
「いや、ゲオルさん。数がおかしいです!」思わずゲオルさんに突っ込んでしまうほどの数の猿がこちらを睨んでいるのだ。
「ニーアよ! ウェザーと共に下がっておれ! ノンノン、お前は戦えるな!?」
「うん! まかせろ!!」
ゲオルさん達とノンノンは、大木を背に私とウェザーを囲むように陣取ると猿の強襲に備える。
私がノンノンの小柄な背中に身を隠すようにしている最中も、ウェザーは大木を触りながら「なるほど」などと、独り言を言っている。
「キイイイイイイイ」
どこからか甲高い声が響いた瞬間、正面の十数頭の猿が枝から飛び出し襲い掛かってくる!
「来たか!」
構えるゲオルさん達! けれどその瞬間、私は目眩を感じて額に手を当てる。
「ぐうっ!」
私が視線を戻した時には、ゲオルさんの部下の一人、ザウェインさんが腕を抑えているところだった。腕からは血が流れている。
「大丈夫ですか!?」思わず駆け寄ろうとする私に、ゲオルさんが「何かおかしい! ニーアは動くな!!」と命令する! 私が声に反応して身をすくめた瞬間、今度は右方向から猿達が飛び出してきた!
するとやっぱり眩暈がして、私は思わず地面に手をついた。
下を向いた私のすぐ近くで、「ギャン」という猿の悲鳴と、「むん!」と気合を入れたビーツさんの声が響く。今のはビーツさんに噛み付いた猿が、ビーツさんの硬さで牙をやられた上、吹っ飛ばされた悲鳴だったようだ。
「むう、どうなっておる!? 向かってきた方向と違う方から猿がくる!」ゲオルさんが掴んだ一匹の猿を睨みつけながら、厳しい顔で怒鳴った。
そんなゲオルさんの後方からウェザーが「ゲオルさん、出し惜しみしないで時間作ってよ」とのんびりした声で言う。
「阿呆、出し惜しみしている訳ではないわ! より効果的なタイミングを狙っておるのだ! それよりもこのおかしな現象を解明せんか!」
そのように返すゲオルさん。けれどウェザーは「それなら、もう、分かったよ」と言いながら、私の手を取った。
「ニーア、悪いけどみんなを連れて”跳んで”くれるかい?」
「え? ここから逃げるってこと!? でもこんなに大人数だとそんなに遠くへは移動できないと思うけど、、、」
「ああ、構わないよ。次に猿が飛びかかってきたタイミングで、真上に跳んでほしいんだ。なるべく高いところに頼むよ。ゲオルさん、聞いていたね。着地の時はニーアと僕のフォロー、宜しく」
「む? 分かったというか、ニーアは何をする? 跳ぶとはなんだ!?」
「説明は後! みんないいかい! 合図をしたらニーアに触って! 遅れたら一人だけ猿に襲われるよ!!」
「む、信じて良いのだな!? ニーアよ!」
「分かりませんけど、頑張ります!!」
「来た!! ニーア!!」
「はいいいいいい!!」
みんなを連れて空へ! 上手くいくように私はニーア棒を持って祈る!
次の瞬間、
私たちは大木の頂点よりも少し上の上空にいた。
「うおおおおお!? なんだこれは!? ニーアのギフトか!? おお、向こうに浜辺が!」
上空から見渡すとよく分かる。この辺りがちょうど島の中心みたい。遠くには浜辺が見えた。
「ゲオルさん!! そんなことよりも見て! こっち!!」
ウェザーが指差したのは私たちがいた広場だ。
「なんじゃあれは!? 木が動いて、、、違う!? 地面が動いておるのか!?」
「あれが猿がおかしな方向から攻めてきた理由で、僕らが迷った理由だよ」
落下しながら冷静に解説するウェザーに、私のギフトを知らなかったゲオルさん達は目を白黒させながら聞く。
ウェザーは落下しながら楽しそうに
「つまりこの島、生きているんだ」
と言って笑った。




