【一の扉⑥】006)巫女の妹はギフトを秘密にしたい
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
「出発する前に、ギフトを確認しておきたい」
珍しく同じ夕食を囲んだウェザーから、この言葉を聞いた時、ニーアは遂に来たかと思った。
ギフト。神が人へともたらした奇跡。人は何かしらのギフトを持って生まれてくる。良くも悪くも私達はギフトの影響を受ける。ギフトの種類は様々で。本当に良くも悪くも、なのだ。
現に私たちがセレイアを枯らせたと疑われた理由の一端は、私のギフトにある。正直あまり人に話したくないギフトなのだ。
その事をよく知る姉が、私を見て心配そうな顔をする。しかし、どうしようか悩む間も無く、ウェザーが意外な言葉を放った。
「ま、言いたくなければ言わなくていいよ。ちなみに僕は言わない」
呆気に取られている私たち姉妹のよそに、シグルが「は? 自分は隠して俺たちには言えっておかしくないか?」と抗議の声を上げる。
「だから言いたくなかったら言わなくていいって言ったろ。そもそも僕らは君たちのギフトには大して期待していないよ。だからもし使えるギフトだったらラッキーくらいのものさ、なので、別にどっちでもいい」
そのように言われたシグルは、かえってムキになったようで
「馬鹿にするな! 俺は炎の加護を得てるんだ。この中じゃ一番優秀な戦士だろ?」
「炎の加護? 具体的には何ができるんだい?」興味を持ったウェザーに、ふふんと鼻の下をこすったシグルは
「俺の能力は武器に炎を宿すことができるんだ!」と胸を張る。
それを聞いたウェザーは、「それはすごくいいね!」とシグルを褒め、当然だといよいよ反り返るシグルに対して
「じゃあ、シグルは炊事担当ね」と言った。
「、、、炊事?」
「そう。炊事。常に火を使えるなんてすごく便利だ。荷物も減るし、獣よけにもなるし良いことずくめだよ」
一瞬何を言われたかわからなかったシグル、次第に言葉の意味を理解したらしく、プルプルしながら顔を赤くして「俺のギフトをバカにするな!!!!」と怒鳴った。
その後、シグルが炊事担当をすれば食費や燃料費は値引いてくれるというウェザーの言葉で、私たち姉妹の説得によってシグルはしぶしぶ了承するのだけど。
結局このシグルの騒ぎによって、ギフトの話はうやむやになり、私は密かにホッとしたのである。
そんな騒ぎの翌日、ここでの生活にもだいぶ慣れて来た朝、私がフィルさんのお手伝いで森で薪を拾いに出かけようとした時の事だ。ドアを開けた瞬間に、何か大きくてふかふかした物にぶつかった。
「きゃっ!」声を上げる私に、
「あ、ごめんごめん、、、、っていうか誰?」
目の前にはびっくりして目を丸くする、人とそれほど変わらない大きさのクマがいた。
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「あら、トッポさん、お帰りなさい」
私がもふった中くらいのくまさんは、トッポさんというらしい。そのトッポさんの後ろから数人、ひょこりと顔を出す者がいる。
「フィル、ただいま〜」のんびりとした返事を聞きながら、ああ、無限回廊に挑んでいたギルドの人だと思い至る。
「それで、この娘は?」
「ああ、新しい依頼人よ。ニーアちゃんって言うの」
フィルさんは依頼人と言ってくれていたけれど、実際のところ私たちは、自分たちのコートや備品を用意しただけでお金がなくなってしまい、1クルールも払っていない。なので、私がお金を返すまでははっきり言って、依頼人でもなんでもないのだけど。
冷静に考えると大変申し訳ない気持ちになって来た。
それはともかく、トッポさんや他のギルドの人たちとも挨拶を交わしていると、騒ぎを聞きつけたウェザーがやって来た。
「やあみんなお疲れ様。ちゃんと全員揃っているね。何よりだよ。それで、バタバタして申し訳ないのだけど明日からちょっと無限回廊に挑んでくるから、留守番頼むね!」と言う。
こうして唐突に私の無限回廊へ挑む日が決まったのだ。
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トッポさんや帰還組の人達は報告や手続きに慌ただしく、ほとんど入れ違いのように翌朝を迎えた。
無限回廊に挑むのは私、シグルの依頼人に加えて、ウェザー、ノンノン、フィルさんの5人。足元にはちょこんとハルウの姿もある。彼も同行するので、5人と1匹である。
フクロウのセルジュさんは基本的にギルドを守る役目なので留守番。トッポさん達の見送りを受けながら入り口前に揃うと、シグルがパーティを眺めてから小さくため息をつきながら一言。
「なんか、、、頼りないパーティだな」
「こ、こら!」一緒に見送りに出てきていたレデルが慌ててシグルを注意するが、なんと言って良いのか言葉を選んでいるようだ。
確かに、私は見ての通りだし、ウェザーも実際はどうか分からないけれどまぁ、見た目は少年。
ノンノンは大きな槍を背負っているけれど、その槍が体よりずっと大きい。と言うかノンノンが小さいのだ。私の胸くらいの身長しかない。
フォルさんは大きな荷物を背負って、見た所武器はなし。なんと言うかホワホワした人なので、戦える感は皆無。
これで全員。
私が言うのもなんだが、かの無限回廊に挑むパーティとは思えない。どちらかといえばピクニックが似合いそうだ。
「ははは。その通りだなぁ」トッポさんが愉快そうに笑いながら「でも安心してよ。このメンバーならみんな無事に帰ってくるさ」と安心感のある声でのんびりと言ってくれる。
私がそれで少しホッとしたのもつかの間。
「多分ウェザーなら、すぐに逃げるから」
と逆に不安のが募る言葉が続いた。すぐ逃げるって、どのくらいの危険度で? すぐ逃げたらセレイアの苗はどうなるの? 2回も3回も繰り返したら、私の借金っていくらになるんだろう、、、、
いろんな不安を残しながら、ともかく私たちはみんなに見送られて出発したのだった。




