【六の扉⑥】068)髑髏と視線
ゲオルさんが楽しそうに取り出した髑髏を前に、後ずさったのは私だけ。他の面々は興味深そうにゲオルさんの手を覗き込む。
「汚れてはいますが、思ったより新しいですね」とはウェルさん。
「損傷はなさそうだけど、死因は何かな?」とビーツさん。
そしてウェザーは「何人分くらいあった?」と聞く。ウェザーの質問に、「うむ。朽ちていない物だけでも10人程度あったぞ。多分、探せばもっとあるように思う」
ゲオルさんが髑髏を発見したのは、島のもう少し奥の方らしい。その場所には大きな木と湧き水があり、水の確保して一息ついていたゲオルさん達が、ついでに周辺を探ったらごろごろと出てきたそうだ。
「周辺に衣服なんかはあった?」
「いや、不思議なことに何もなかったな。武器なども見つからなかった」
「ふーん」ちょっと考え事をする体制に入るウェザー。
「まぁ、一旦浜辺に戻って仕切り直しといこうではないか!」と言うゲオルさんに、ウェルさんが自分達も迷っている可能性が高いことを説明する。
「なんと! 探しに来たのに迷ったのか! 情けないのうお前ら!」とガハハと笑うゲオルさんだったが、先に迷ったのはゲオルさん達である。ウェルさんにも突っ込まれてすまんすまんと笑う。元気だなぁ
「、、、、また、こちらを見ているけはいがするな」
黙って私たちの様子を見ていたノンノンの耳がピクリと動くと、ゆっくりと槍を構える。
「さっきの猿かな?」
「そうかもしれない。一応、けいかいしておけ」
ノンノンの言葉で上空を見渡したけれど、どこにも猿らしき姿はない。姿を隠しているのだろうか。
「ん? なんだ? お前達も猿を見たのか」と話に入ってくるゲオルさん。
「も、ってことは、ゲオルさんも?」
「うむ。こちらを探るような、おかしな動きをする猿がいたのでな、気になって追いかけたら帰れなくなった。やはりあの猿が原因であったか」
やっぱり猿が原因で間違いないみたいだ。「あ、そうだゲオルさん、その猿、なんか持ってませんでした? 私たち布切れみたいなのを持っているのを見て追いかけてきたんですけど」。私が気になったことを聞くも「布切れ? いや、持ってなかったぞ」とゲオルさんは首を傾げた。
「ま、とにかく布切れよりも、まずは脱出だな。とにかく浜辺にさえ出ればなんとでもなろう。髑髏のあった場所は向こうだから。反対に進めば良いか?」と、ゲオルさんが自分達の来た方向を指差す。
「、、、、まぁ、ここにずっといるわけにもいきませんし、ひとまずは歩いてみましょうか。ウェザー、君もそれでいいかい?」ウェルさんに声をかけられたウェザーは「ん? ああ、任せるよ」と心ここに在らずといった感じ。
そうして歩き出した私たち。特に何も襲っては来ないけれど、ノンノンが言っていたように何者かがこちらを探っているのであれば、なんだか落ち着かない気分。
いっそ襲い掛かってきてくれた方が安心する。何と言っても、こちらにはノンノン以外にもゲオルさんたちベテランの冒険者が5人もいるのだ。なんでもどんとこい! 、、、私のところ以外に。
ゴリゴリと突き進むビーツさん。その後ろをゾロゾロと進むことしばし。
「ん? んんん?」妙な声を出しながら、ビーツさんを押し退けて先頭に出るゲオルさん。
「こりゃあ、どうなってんだ?」そんな声が聞こえて、私たちもゲオルさんの背後から顔を出すと、そこは広場のようになっていて、中央には1本大きな木が立っている。その横に小さな泉。。。。なんか割と最近、聞いたことある風景だ。
「ゲオルさん、、、ここって、、」私の声に応えることなく、ずんずんと大木の方へ足をすすめ、何やら地面を弄っている。
「おお、やはりあったな」そう言って高々と掲げたのは、やっぱり髑髏。うへえ。
「つまりここは、ゲオルさん達がさっきまでいた場所で、同じ場所に戻ってきたってことかい?」先ほどまでずっと黙ってついてきていたウェザーがようやく口を開いた。
「うむ。先ほどもこの髑髏はあった。持っていく髑髏をどちらにしようか迷ったのだ!」
笑顔のゲオルさん、なんて嫌な2択。
「ノンノン、まだ気配は感じるかい?」
「うん。増えてる」ノンノンは警戒を緩めずに言う。
ノンノン、、、、増えてるって言った、今?
「じゃあやっぱり、猿は何頭もいるのか。僕らの見た猿とゲオルさん達の猿は別の個体なんだろうね」一人納得するウェザー
「だがウェザーよ、それがなんだと言うのだ?」
「さあね」これがウェザーのいつもの感じなので、私もそろそろ慣れてきた。
「、、、、いっそあの木、燃やしますか?」ウェルさんが期待のこもった目で、ゲオルさんとウェザーに提案。この人、単純にやばいなぁ。けれど、そんな私の気持ちはよそに、
「いいね、燃やしてみようか、あの木」とウェザーが賛意を示すのだった。
ポポポポと、小さな炎の塊がウェルさんから紡ぎ出されてゆく。
「こんなに大掛かりなフレアクラウンは久しぶりですからね。腕が鳴りますよ」
とても楽しそうなウェルさん。フレアクラウンとはウェルさんが自分のギフトにつけた名前らしい。小さな炎の塊は大木を囲むようにぐるりと包むと、ウェルさんがスッと指を地面に向けた。
小さな炎が地面についた瞬間に、炎の柱が立ち上る!
「うわあ!」想像以上の迫力に、私は状況を忘れて見入ってしまう。こんな炎に包まれたら、大木だってひとたまりもないだろう。そう思っていたのに、不思議なことが起きた。
バキバキ、ベキベキと大木から大きな音がしたかと思うと、表面の皮がバリバリと剥がれ落ちたのだ。炎は皮と共に地面に倒れ込むと、ジュウと音を立てて鎮火する。いつの間にやら泉の水が溢れ、木の周りに流れ込んでいた。
「、、、何これ? どうなっているの?」私が驚いている横で、ウェザーが木の近くへ歩みを進めて「なるほど、なるほど、へぇ〜」と皮の剥けたばかりの幹を触っている。その横では「私の炎が、、、」とウェルさんが地面に膝をついて落ち込んでおり、横ではゲオルさんが「なんだか分からんが面白いな!」と、髑髏を抱えたまま笑っている。カオスだ。
完全に炎が消えたのを確認するかのようなタイミングで、頭上から「キイ」と猿の鳴き声が。
「キイ」
「キイ」
「キイ」
「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」「キイ」
待って待って! 何匹いるの!?




