【六の扉⑤】067)完全に二次遭難な私たち
「うん。幻覚の類じゃない。この場所はビーツが切り開いた道じゃないね」
私たちが進んできた道があるはずの場所が、振り返ったら綺麗に消えていた。そんな不思議な状況にさして動じた様子もなく、消えた道のあたりを調べていたウェザーが断ずる。
「、、、つまり、どういうこと?」
「さあ?」
私はウェザーなら何かしらの答えを持っていると期待したけれど、返ってきたのは肩をすくめて首を傾げる姿だった。
「やっぱり先ほどの猿が何かしらの謎を持っていそうですね」ウェザーとは逆に先の方向を見つめながら、周辺を燃やして腰を落ち着けるスペースを作っている放火魔、、、じゃなくて、ウェルさん。
「でも、猿も何処かへいなくなっちゃったしなあ」
ウェルさんが燃やして作った休憩スペースに腰を下ろして、干し肉を齧るビーツさんとノンノン。
なんていうか、みんな余裕あるなぁ。ウェルさんとビーツさんも、流石に大手ギルドの人たちって感じで頼もしい。目下、わたわたとしているのは私だけである。
「ま、落ち着きなって、ニーア。はい、干し肉」
「ありがとう、、、って、それどころじゃなくない? これって私たちも迷ってるってことだよね?」
「そうだね。ゲオルさん達が帰ってこない理由がわかったよ。つまり、来た道を戻ったところで元の砂浜には戻れないんだろうなぁ」
「そんな、のんびりと、、、、」
「いや、そこまで悲観しなくてもいいんじゃないかな? 悪いことばっかりじゃないよ」
「良いことなんてあった?」
「うん。一つある」
「、、、、全然思い当たらないんだけど、、、」
「そう? 多分近くにいると思うけど?」
「、、、、何が?」
「ゲオルさん」
そうか、ゲオルさんも私たちと同じように猿を追いかけてきたなら、同じような場所で迷っている可能性が高いのか。確かにそれは良いことな気がする。
「いない可能性もあるけどね」
「もう! からかってるの!?」
ごめんごめんと言うウェザー。私とウェザーのやりとりを眺めていたウェルさんとビーツさんがが、苦笑しながら「余裕あるなぁ」と笑う。全然ないですよ? メンタルギリギリですけど!?
「ウェザーが言う通り、うちの大将がこの辺りをうろついている可能性は高いと思います。とりあえず合流を優先しましょう。なので、燃やします」
燃やすか、それ以外かという選択肢しかないウェルさんの宣言。完全に危ない人の発言だけど、一応理には叶っている。
私たちが下手に動き回るよりは、ここでウェルさんに狼煙をあげてもらって向こうに気づいてもらったほうが良いと言う判断だ。
ウェルさんのギフトはシグルのように武器に炎を灯すものではない。指先から小さな炎がポポポポと生まれて、それが一つの絵のように繋がってゆく。
ウィルさんが指を下ろすと、繋がった火の玉から一気に炎が立ち上ると言うものだ。整った顔立ちと、踊るように描く炎の芸術は思わず見惚れるほど。。。発言が残念でなければの話だけど。
そんなわけで私たちは狼煙をあげながら、その場から動かずにゲオルさんが見つけてくれるのを待つ。ゲオルさんも一人ではなく、ビグローさんとザヴェインさんという部下を引き連れているはずなので、誰か一人でも気づいてくれることを祈る。
「それにしても、これはどう言うことなのだろう」ウェルさんの炎でお茶を沸かして、完全に休憩を決め込んでいるウェザーが興味深そうに手元の本をめくっている。あれはウェザーが大図書館で気になった情報を書き記した物だ。
「無限回廊みたいに、別の異世界へ飛ばされたとか?」私が思いつくままに口にすると、ウェザーは「うーん」と微妙な反応。
「別の異世界に移動したにしては、風景に変わり映えがなさすぎるんだよね。それに、猿の存在も気になる。面白いなぁ」
ウェザーの楽しそうな様子に、さすがのウェルさんやビーツさんが呆れていると、
「誰かそこにいるのであるか!! いるのなら声を上げろ! 声なき場合は攻撃する!!」
と、大変聞き覚えのある声が聞こえてきた。私たちは慌てて名乗りを上げて、ゲオルさんの攻撃を受けることなく、無事に合流することができたのだった。
「いやぁ! 参った参った。お前らがきてくれて助かった!」ガハハと笑いながら、私たちが持ってきた干し肉を齧るゲオルさん達。聞けば、やはりゲオルさん達も同じように猿を追いかけていったら迷ったそう。
「どこまで行っても浜辺につかんし、置いていかれるかと思ったぞ!」
そんな風に言うゲオルさん
「ゲオルさん、他には何かあった?」ウェザーの問いに「おお、そういえば忘れとった!」と言って、腰にぶら下げた薄汚れた白い何かを取り出した。
「これがいくつか見つかったのでな、一番原型をとどめているものを持ってきた!」
そう言って私たちに見せてくれたのは、見知らぬ誰かの髑髏だった。
、、、、そんな満面の笑顔で取り出さないでほしい。




