【六の扉③】065)ゲオルさんとジーノさん
「ほお、面白そうではないか!」
大騒ぎの一夜が明け、酔っ払いやらロブさんの料理にやられた人やらで、未だ死屍累々といった浜辺の一角。一際呑んで騒いでいたゲオグゲガーさんは、今日も朝から元気いっぱいにそう言った。
ゲオルゲガーさんが興味を示したのはもちろん、「孤島で消えた冒険者の謎」である。ウェザーの話を聞いたゲオルゲガーさんは早速でも出発しようとする。
「あのう、ゲオルゲガーさん?」私が皆んなが起きてからで良いのでは? と声をかけようとしたところで「ニーアよ! ワシの事はゲオルさんと呼ぶが良い! 一緒の釜の飯を食った仲ではないか!」さあ呼べ、さあ! と圧をかけてくるゲオルゲガー、、、ゲオルさん。
「、、、それじゃあ、ゲオルさん。他の人たちはまだ寝てる人もいますから、もうちょっと後でも、、、」
「いやじゃ! 今行く! ビグロー! ザヴェイン! ついてこい! では行ってくる!」
ちょ、そんな半裸みたいな格好で!? 目的も分からずに!?
ゲオルさんといえど流石にそれはまずいだろうとウェザーを見れば、「いってらっしゃーい」と手を振って笑顔で送り出している。
「ウェザー、いいの? ゲオルさん達行っちゃうよ?」
「うん。ゲオルさんに関しては僕が指示するのは無理だよ。自由に動いてもらったほうが面白い結果になるんじゃない?」
「適当だなぁ、、、島の中に何がいるか分からないんだよ?」
「じゃあ、ニーアはゲオルさんを攫うような奴が、この島にいると思う?」
、、、思わない。人攫いだって相手は選ぶと思う。少なくともあんな騒がしい人が来たら、それだけで敬遠しそうだ。
「だろ?」
「心を読んだ!?」
ともかく薮の中へ消えていったゲオルさんを眺めていたら、
「バカは朝っぱらから全く騒がしいね!」と現れたのはジーノさんだ。
「あ、ジーノさんおはようござ、うわ!」
ジーノさんのウェーブのかかった赤髪が寝癖で爆発して、通常の2倍くらいの大きさになっている。
「うわ、とはご挨拶だね、ニーア」
「あ、すみません。でもジーノさん、髪すごいことになってますよ」
「ま、くせっ毛だからね。後で整えるさ」
それは癖っ毛で済まされるレベルだろうか。でもこれ以上突っ込んだらいよいよ怒られそうなので黙っておく。
「そんで、何を朝から騒いでいるんだい?」
「実はーーーー」
「、、、、ああ、人喰いの孤島の話か。随分と懐かしい話を」
「え? ジーノさんは知っているんですか?」
「当たり前だろ? 私だって案内人だからね。私が駆け出しの頃に、先輩から聞いた話さ。むしろあんた達がよく知っていたね」
「大図書館でたまたま、、、」
「そうかい。それにしても、ここがあの孤島なのかい。へえ」
ジーノさんは少しだけ島を見回してから、大きなあくびをして
「それじゃあ、もう一眠りするから、この辺であんまり騒ぐんじゃないよ」と、自分のテントに戻ろうとする。ゲオルさんとは対照的な反応だ。
「ジーノさんは気にならないんですか?」私がなんとなく聞いてみると、大きな目でギョロリと私を睨んで
「私はここに休暇に来たんだ、なんでわざわざ冒険なんかしなくちゃいけないんだい? そう言うのはあのバカに任せておきな」といって、のしのしと立ち去ってゆく。確かに尤もだ。
今度はジーノさんがテントに入ってゆくのを見送ってから、
「さて、じゃあ僕らもゆっくりしようか」とウェザーが伸びをする。
「え? 探索しないの?」
「うん。ゲオルさんが帰ってきてからでいいよ。もしかしたらゲオルさんが原因を見つけてくるかもしれないし。そしたら楽でいいよね」
実にウェザーらしい返事が返ってきた。
けれど、お昼どころか太陽が海に隠れようとする時間になっても、ゲオルさん達は帰ってこなかったのである。




