【幕間4-2】062)謎の視線
「なんか、、、最近、視線を感じる」
「自意識過剰じゃない?」
ギルドの受付カウンターで、まあギリギリ女子トークと言えそうな話をしていた私とレジー。
レジーは気のせいだと言うけれど、最近妙に視線を感じるのだ。
ただ、ここのところ”ブレンザッドの聖女”なる不名誉(?)な通り名が浸透しつつあり、知っている顔からちょくちょくと揶揄われているせいで、妙に視線を感じている気がしているといえばそれまでなのだけど。
「そこはもうちょっとさ、「ニーアは最近有名になったから」とか、「ニーアは可愛いから」とか言うところじゃない?」
「え〜、じゃあ、ニーアが「レジーは可愛いから街の男逹がほっとかないぜ」とか「レジーの美しさはブレンザッドで一番だぜ」とか言ってくれたら言うよ」
、、、こんな不毛な会話はない。
レジーが仕事中の私に絡んできているのは、ひとえに暇だから。暇があればカジノに通い詰めるレジーがここでぐだぐだしていると言うとこは、つまり、負けてお金がないと言うことだ。
この間私からせしめたお金はどこに行ったのだろう。もっとも、一時期の異常な忙しさがなりを潜めた当ギルドでは、受付の私も暇なのだけど。
今日も平和である。
「そう言えばドノバンだっけか? あいつら帰ったらしいよ」
「ああ、うん。お別れの挨拶に来てくれたよ。あれ? レジーいなかったっけ」
ドノバンさんやトラヴィオさんは、一昨日挨拶に来てくれた。また今度遊びに来ると言ったので「今度はあんまり危険な狩りは控えてくださいね」と伝えて、笑顔で別れた。
最初はちょっと揉めた相手だったけれど、最後はとても仲良くなれた。。。。”様”呼びだけはやめて欲しいけれど。
そのドノバンさんであるが、私が思っているよりもずっと偉い人だったみたい。具体的に言えば、三大大国と呼ばれるルマリアの要職に名前を連ねる貴族なんだって。そんな人が支援してたら、あのロデオルがこの街の司祭になるのも納得。
そんな会話をしているところに、フィルさんがひょっこりと顔を出す。「あら、レジー、暇ならちょっとお使いを頼んで良いかしら?」と声をかけてきた。
「え〜、仕方ないなぁ、、、フィルさんの頼みなら、特別に行って来てあげる」
「ふふふ、ありがとう。それじゃあこれなのだけど、、、」
レジーがお使いに出かけ、フィルさんも事務所に引っ込むと、いよいよやることがない。ハルウを連れてきてもふもふさせてもらおうかと思い、立ち上がった時、入口の方からやっぱり、何か視線を感じた気がした。
私がバッと振り向くも、やっぱり誰もいない。「、、、気のせいか。本当に自意識過剰なのかな」と首を傾げてハルウを探しにゆく。
そして、ニーアの姿が見えなくなったところで、藪に隠れて胸を撫で下ろした少女が一人。
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ゲオルゲガーさんが来た。突然来た。私は本能的に身構えてしまう。
別にゲオルゲガーさんが悪さをするわけではないのだけど、何か厄介ごとを持ち込んできたのではないかと思ってしまう。
そういう意味では大手案内ギルドのジーノさんといい勝負だ。そう言えばジーノさんもしばらく見えてないなぁ、元気かなぁ。。。などと思っていたら、すぐ後からジーノさんも来た。これは只事ではない。
本能的に慌てて逃げようとする私を見つけたゲオルゲガーさんが「おお!! 聖女様ではないか!!」と大声をあげる。「本当にやめてください!」と懇願するも、「何! 名誉なことではないか」と取り合ってくれない。その上ジーノさんまで参加して囃し立ててくる。私ではこの2人に敵うわけがないのだ。
それでも若干開き直って、「それで、本日はどのようなご用件で!?」と頬を膨らませながら言うと、2人揃って「依頼だ!」という。この街で、すなわちこの世界で指折りの冒険者ギルドと案内ギルドが揃った依頼。果たしてどのような危険が待ち受けているのか、私は思わず喉を鳴らした。
「ああ、そう言えばもうそんな季節だね」
深刻な表情で2人の来訪を告げた私に対して、ウェザーの反応はゆるゆるだった。
「あの2人が来てるんだよ? どんなとんでもない依頼を持ち込んできたのかわからないよ?」と、口調がセルジュさんのようになりながらウェザーに言ったけれど、ウェザーは笑うばかりだ。
そうして私が迎え入れる前に、当たり前のように事務所に入ってくるゲオルゲガーさんとジーノさん。狭い空間に2人が揃うと圧迫感がっ!
「ウェザー、この間は大変だったみたいだな」
「ウェザー、そろそろニーアをうちに寄越しな!」
2人とも好き勝手なことを言いながらソファへ座る。私はフォルさんのお茶出しのお手伝い。
3人のギルド長の手元にお茶が揃ったところで、ゲオルゲガーさんがおもむろに口を開く。
「さて、今年の夏の休暇は、どこに行く?」
、、、、、は?




