【幕間4-1】061)光の鎌
「ニーアの通り名はどうでも良いなぁ」
「ええ〜」
聖女などというとんでもないあだ名に対して、真剣に悩む私に対するウェザーの感想である。ひどい。
「いや、ごめんごめん。正確に言えば、ニーアが気にしなければならないのは、そこじゃないと思うんだけど」
「じゃあどこだっていうの?」口を尖らせて抗議する私に、「どこも何も、ニーア棒に決まっているじゃないか?」と言う。。。
本当は言われる前に分かっていたのだけど、ニーア棒は先送りにしたい問題だ。
先日の冒険で突然発動した謎の現象。手のひらほどの長さしかないはずのニーア棒が突然輝き出して、巨大な光の鎌を形作ったのだけど、帰還してから何度試しても再現ができていない。
そもそも鎌だったのを見ているのは私と、ドノバンさんとトラヴィオさんだけ。ノンノンはギリギリまでホルプルスの方を向いて私達を守ろうとしていたので、「おれのあたまの上をなんかひかりが通った」と言う形でしか見ていなかった。
なので、私本人を含めて、結局何だか分かっていないと言うのが現状だ。かといって先日のような命の危機を再現するようなことは、できれば御免被りたい。となると、やっぱり、、、
「ザックさんのお店で話を聞いてみようかなぁ」
私がニーア棒を購入したガラクタ屋敷、ではなく道具屋さん。もしかしたらニーア棒が流れ着いた経緯を聞けば、何かわかるかもしれない。まだあのお店に一人で行くのは抵抗があるなぁと思って、レジーに同行をお願いしようとすると、
「おれもいく。ウェザー、新しいぶきがほしい」とノンノンがふんすとしながら言った。
「ノンノンが? 珍しいね?」ウェザーの言葉に「じつはぶきが壊れた」と言う。ノンノンの槍は先日の戦いで全力の一撃を放った結果、槍が耐えきれなくなって破損したという。
「そういえば、今まで聞きそびれていたけれど、ノンノンのあのすごい攻撃ってなんなの?」
私が「すごい攻撃」と言ったことに気をよくしたノンノンは、「とくべつに教えてやる」と胸を張る。
ノンノン達ウーファ族は尻尾に電気を溜めることができるそう。そして貯めた電気を「こうやって腕をのばして」槍先から放つことで、狩などに使っていたらしい。
ノンノンは一族の中でもこの技に長けていて、みんなの尊敬を集めていたのだと教えてくれた。そこまで聞いたところで、ウーファ族について聞こうとして、やめた。
ノンノンだけじゃない。フィルさんにしても、トッポさんにしても、”迷い人”と呼ばれる人たちは文字通り異世界からこの世界へ迷い込んでしまった人たちだ。自分の世界に帰ることもままならず、しかもこの世界ではギフトを持たぬもの達として下に見られ、多くの迷い人は辛い思いをして生きている。
うちのギルドは比較的過ごしやすいとは思うけれど、それでもなんとなく、みんなのいた世界について聞くのは憚られる雰囲気があった。いつかノンノン達から話してくれるまでは聞かないほうが良いんじゃないかなって思うんだ。
「、、、いいんじゃないかな。ノンノン、お金は足りるかい? 折角だから、一番頑丈な槍を買ってくるといいよ。経費で落としてもいいけど」
見計らったようなタイミングで、ウェザーが話を切り替えた。
「だいじょうぶ。じぶんの武器はじぶんで買う。おれはせんしだから」
「そうか。でも足りないようなら言ってくれよ。そうだ、一応ニーアにある程度渡しておくから足りなかったらそこから出してよ。ノンノンに渡しても、使わなさそうだから」
「はい! お金なら私が預かるよ!」大変良い返事と共に名乗り出るレジー。
「うん。お前に大金を預けるなぞ間抜けのすることだろう」と突っ込むロブさん。
「なんだとう!」
「事実であろう!」
「あらあら、喧嘩しないの」フィルさんが穏やかに仲裁に入って、
ハルウが「くあ」っとあくびをした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぇ? その棒を握ったら、光って鎌になって? 何を言っている?」
ザックさんが長い眉毛の片方を上げて、首を傾げる。そうですよね。私も何を言っているんだろうとは思っています。
「ま、とにかくその棒がここに来た経緯を調べればいいんだな? いくら払う?」
「お金取るんですか?」
「ふぇ。情報に価値を感じぬ奴には教えられん」
「、、、、いくらですか?」
金額を聞いて私がお財布を出したところで、レジーが割って入ってきて、私を引っ張ってザックさんから引き離す。
そうして「半額私に払えば、ザック爺さんを説得するよ」と言う。ザックさんから提示された金額はそれなり額だったので、少し迷ったけれどレジーに任せてみることにする。「商談成立」と言ってザックさんに元へ戻るレジー。
「ザック爺さん。まけて」
なんという直球勝負。
「断る」
「そんなこと言っていいの?」
「ふぇ、わしは何も困らぬ」
「へえ、今日は買い物にも来たんだけど、、、この店で一番いい槍、買う気だったんだけどなぁ」
「ふぇ。ごたくを抜かせ。お前に槍など扱えんだろ。どうせ金も持ってなかろうに」
ザックさんにそう言われたレジーは「ふっふ〜ん」と余裕を見せながら、その辺でガラクタを物色していたノンノンを引っ張ってくる。
「買うのは私じゃないよ。ノンノンだからね」
「ふぇ。わしの武器は誰にでも売るものではないわい」と、ザックさんがノンノンが背負っている槍に目を止める。
「その槍、ちょっと見せろ」
言われた通りに槍を渡すノンノン。しばらく槍を眺めていたザックさんは「ほう」と少し感心した声を上げる。
「金は?」
ノンノンが出せる金額を伝え、それ以上でも私がお金を預かっているとも話と、ザックさんは小さくため息をついて「ふぇふぇふぇ、、、分かった。本当に買うなら情報料はおまけにしてやろう」と言った。
その言葉を聞いてガッツポーズをするレジー。得したけれど、、、、なんかずるい。
私がなんか釈然としていない気分を抱えている間に、ザックさんとノンノンは2階へ。
「これがうちで一番の槍だ。雷神ボルゲの加護が付与されている」
そう言って取り出した槍は三叉槍になっていて、穂先は捻れながら天をつき、輝いている。装飾も煌びやか。
すごく派手だけど、かっこいい。雷神ボルゲの加護と言うものノンノンに合っている気がする。
その分値段はすごく高かったけれど、なんとかノンノンの貯金で足りた。ノンノン、めちゃくちゃ貯金してた。
レジーが「今度お金に困ったらノンノンに相談しよう」と呟いたので、私はフィルさんに注意してもらおうと心に決める。
こうしてザックさんにニーア棒の調査をお願いして、嬉しそうなノンノンと共に店を出る。何か分かるといいなぁ。
レジーは私からせしめたお金を握りしめて、カジノへと走っていった。




