【五の扉閉】060)ブレンザッドの聖女?
五の扉ラストです。話のキリが良いので、本日少し短めです〜
参った。
私は今、この街に来て最大の危機を迎えている。冒険者、この場合案内ギルドのスタッフも冒険者に数えるとして、冒険者は名前が知られてくると、あだ名が付くことがある。
私のギルドでいえば、「悪食のロブ」「臆病者ウェザー」。臆病者ウェザーなんてただの悪口に聞こえるけれど、まぁ、大体こういうあだ名は碌でもない言葉から選ばれるのが定番なんだって。
そして私。最近ちょっとずつ広まってきたのが「聖女ニーア」。恥ずかしい。嫌すぎる。私が嫌がると余計にみんなが面白がって呼びたがるので悪循環だ。本当にどうにかしなければ。
私がこんなあだ名をつけられた理由ははっきりしている。ドノバンさんとトラヴィオさんのせい。
どうにかこうにか一人も欠けることなくホルプルスの世界から帰ってきた私達。私達が無限回廊から帰還したことは、すぐに教会関係者に伝わりロデオルやノリウスさんが慌ててやってきた。
「ドノバン殿! いやあ、流石でございますなぁ! そこな案内人の者どもは足など引っ張りませんでしたか?」
そのように出迎えたロデオルに対して、ドノバンさんより「この馬鹿者が!! 我が命の恩人である聖女様に何たるもの言いか!!」と烈火の如く怒り、ロデオルの胸ぐらを掴んで今回の冒険がどれだけ大変だったか、私のおかげでなんとか生きて帰ってこれたことなどを唾を飛ばしながらお説教開始。
「!? !?」
あまりのドノバンさんの勢いに、ただただ混乱するロデオル。ノリウスさんも何が起こったのか分からないという顔で事の成り行きを見守っている。
「良いな!? 今後二度とニーア様にそのような口を聞くことは許さん!! 忘れるでないわ!!」と言うや否や、ロデオルを突き飛ばす。そのまま地面に尻餅をついたまま、「え? は?」と未だ状況が把握できないロデオル。
「不快である。ロデオル。しばらくワシの前に姿を現すな」
そこまで言うと、こちらにくるりと向き直り「無礼をした。然るべき報いは受けさせよう。此度の案内、完璧であった。感謝する」と私たちに伝え「では、我々は失礼させていただく」と言うと、教会の方へと歩いてゆく。
トラヴィオさん達も私たちに手を振りながら「またな!」と言って、ドノバンさんの後ろをついていった。
「お、、、お待ち、、、!」
尻餅をついたままドノバンさんに縋ろうとしたロデオルだったけれど、ドノバンさんに睨まれてそのまま項垂れる。
悄然としているロデオルにウェザーがそっと近づき「なんでも、うちのスタッフと面白い約束をしたそうですね」と耳元で囁くと、「ひっ、ひいっ!」と悲鳴をあげて、転がるように教会へと駆けていった。
残されたのは私たちと、ノリウスさん達。それと騒ぎを遠巻きに見ていた観光客。その中からノリウスさんが、教会の方を指差しながら
「何? あれ?」と、私に問いかけてくるけれど、それは逆に私が聞きたいのである。
こうして無事に終わったドノバンさんからの依頼であったのだけど、その翌日、まだ疲れの残る私が受付でぼんやりしていると、レジーがめちゃくちゃ楽しそうにやってきた。
「やっ、聖女様!」
「!? どうしてそれを!?」私はギルドに帰る前にウェザー達にお願いして、聖女のくだりは内緒にしてもらっていたはずだ。
「いやー、噂になってるよ! どこぞの貴族に聖女呼ばわりされた案内人がいるって。名前はニーアだって」
「ぎゃああああああ、レジー、もちろん内緒にしてくれたんだよね!? それかただの噂だって否定してくれたんだよね!?」
慌てる私にレジーは「もちろん!」と胸を張る。
そしてホッとする私に向かって
「それ多分、うちのニーアだよってちゃんと言っておいた!」
レジいいいいい!
こうして瞬く間に聖女ニーアの噂が広まっていったのだった。




