【幕間3-1】050)ケーデル通り
今作も無事に50話を迎えることができました。ひとえに読んでいただいている皆様のおかげです! ありがとうございます。
私はこのギルド「ミスメニアス」に借り、具体的に言うと借金がある。それを返すためにギルドで働くことになったのだけど、それはそれとして、ちゃんとお給金が出ている。
ギルドに入った頃はお小遣い程度だったけれど、万能薬の利益や、ゲオルゲガーさんへ売り渡したカインのギルド権(ウェザーは格安で譲ると言ったけれど、それでも結構な金額だった)のおかげで潤っているため、私に渡されるお金も比例して増えた。
私としては恐縮しきりだったけれど、ギルドのお財布を預かるフィルさんが「ちゃんと返済分や食費は天引きしているから気にしないで」と言ってくれるので、ありがたく頂戴しているのである。
「お洋服買いに行かない?」
一応カインのギルドの報復(カインは既にやってきたけれど、他にもギルドメンバーが来るかもしれない)を警戒してギルド戦から3日ほど様子を見て、もう大丈夫そうだとなったところで、フィルさんに買い物に誘われた。
お給金をもらったばかりでお財布は暖かいし、よくよく考えたらこの街に来て以降、食材や備品の買い出し以外でお買い物に出たことがなかった。私物の買い物はやっぱり気分が違う。レジーと行ったザックさんの店は例外だ。私物ではあるけれど、あれはちょっと特殊すぎる。
と言うわけで私は二つ返事で了承し、フィルさんと2人でお買い物に出かけることになった。ちなみに同じ女子であるレジーは、お金を握りしめてカジノへ走っていった。お金の使い方は人それぞれなので放っておこう。
ブレンザッドは、無限回廊のある高台を頂点として、扇状に発展していった街だ。無限回廊から真っ直ぐに正門へ至るのが大通り。主だったギルドの拠点が立ち並ぶのもここ。その大通り以外にも、いくつかの歓楽街があり、それぞれ似たようなお店が集まって、専門店通りの様相を呈している。
その通りの一つ、服飾や装飾、宝石などを取り扱う店が並ぶ通りをケーデル通りと呼ぶ。
ケーデルは伝説的な冒険者。引退後はこの通りで宝石店を始めた人の名前だ。現在もケーデル宝石商といえばこの街どころか、国内の女性の憧れのお店の1つとして知られている。最もとても手の届くような金額のものは売っていないし、基本的に会員制で入店の敷居はとても高い。
他にも高級な装飾を扱うお店が多く、観光などでやってきたお金持ちが、大枚を叩いてアクセサリーを購入してゆくことも珍しくないので、通りにはお店に雇われた用心棒が数多く立っている。ゆえに通りの治安の良さはこの街でも指折りだ。
そのような客層事情からか、目を引く容姿の上、異世界からの迷い人として一般的には差別されがちなフィルさんと一緒でも、比較的好機の目に晒されることが少ない気がする。
「フィルさんは今日は何を買うんですか?」
「そうねぇ、季節のもので良さそうなのがあれば、、それと、エプロンがそろそろくたびれてきたから、ついでに買っておきたいわね〜」
キョロキョロとお店を物色しながら、のんびり会話しつつ歩く。そろそろ暑くなる季節だから、私も涼しげなワンピースなんかが欲しいかも。そうか、夏が近づいているんだよね。異世界に入ると一面銀世界だったり、まだまだ春みたいな陽気だったりするから、本当に季節感がない。
「あ、このお店の洋服、かわいい」
「あ、ここは、、、まあいいか。じゃあ入ってみましょうか?」
ちょっと含みのあるフィルさんの言葉ではあったけれど、目についた一つのお店に入ると、店内にはふわりとした緩やかなデザインが特徴的な服が何点も並んでいた。私の好みにはすごく合う感じだ。
「わぁ」
私が楽しそうに物色していると、
「あら、フィル。いらっしゃい」と奥から出てきた店員さんが声をかけてきた。ウェーブのかかった長い髪と、整った顔。小柄な身長もあいまって妖精みたいな人だ。
「リリー。こんにちは」フィルさんが手を振ると、リリーさんも手を振りかえす。フィルさんは目立つし人当たりも良い上、ギルドのお財布を預かってよくお店に出入りするので、お店の人達に顔が広い。
「あら、お友達とお買い物?」リリーさんがこちらに目を向け
「そうなの。うちのギルドの新人ちゃん、ニーアちゃんって言うのよ」フィルさんが紹介してくれたので、私はペコリと頭を下げる。
「初めまして、このお店の店主をやっています。リリーです。よろしくね、ニーアちゃん。よければゆっくりと見ていってね」
「ありがとうございます。どれも可愛くて目移りしちゃいます」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。もしよければ、私のおすすめをご案内しても良いかしら?」
「え! すごく助かります。自分のセンスに自信がないので、、、、」
「そんなことないんじゃないの? 今着ているのだって似合っているし」
「実はこれ、姉が選んでくれたものでして、、、」
そうなのだ。私はあまり服装に対するセンスがない。それでも今まで住んでいた村は、服屋さんなど2軒しかなかったので、それほど困ることもなかったし、私のことをよく知っているお姉ちゃんが選んでくれていたので任せっきりだったのだ。見て楽しむことは好きなのだけど、いざ自分に合うかと言うところになると、大変自信がない。
こうしてリリーさんに色々とあてがってもらって、その中でも色の気に入った数着を購入することに決める。大変良い買い物をした。
私がお店の店員さんに会計をしてもらっている背後、リリーさんとフィルさんの話し声が耳に届く。
「フィル、、、、ロブは元気?」
ロブさん? ロブさんとも知り合いなのだろうか。
「あらあら、またしばらくリリーを放っているの? もう。私から言ってあげましょうか?」
「ううん。いいの、怪我とかしていなければ、それで」
ん? その会話だと、なんだかロブさんとリリーさんって、、、
私が考えをまとめようとしたときに、お店の扉が開いて、カランカランとベルが鳴る。
「ぐ! フィルとニーア、、、お前らがなぜここに?」
振り向けば、花を手にしながら動揺しているロブさんの姿があった。




