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【完結】案内ギルドの新人さん~時の聖女と世界の秘密~【130万PV感謝!】  作者: ひろしたよだか


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【三の扉⑦】031)氷の洞窟とウェザーの狙い


「っさっむ! というか顔が痛い!」


 今回は目を開けて扉へ飛び込んだけれど膝まで積もった雪に足を取られて転んで、まっさらな雪のクッションにダイブして、早々に雪まみれになった(ニーア)の第一声である。


 先に入っていたウェザーが呆れたように私を見ながら、「ニーアは初めてきた世界では転がってみる義務でもあるのかい?」と言うけど、そんな義務はない。


 雪を払いながら改めて見回せば、周辺は高い木々が伸びる森の中。いずれの木々も葉っぱが刺々しく、なんだか少し威圧感を感じる。


 そうしてぐるりと視線を走らせたところで、確かに少し先に洞窟のような穴がポッカリと口を上げているのが目に入った。


「あれが洞窟、、」


「ん? ああ。まあね。それよりもニーア、こっちにきて手伝ってよ」


 私よりも先に来たウェザーとトッポさんはスコップを持って雪をかき、スペース作りに奮闘している。


 出発前に聞いていた通り、キャンプ地を確保するのだ。「寒いところだと、ちゃんと拠点を作って行動しないと命に関わるからね」と言っていたウェザー。


 後からやってきたノンノンも加わって、えっさえっさと均してゆく。依頼主のシャヒールさんも手伝っての作業だ。ただ、レジーだけは来て早々に洞窟の入り口に向かって行って、何やら調べていた。


 私達のパーティに続いて、カイン達がゾロゾロとやってきた。「おお、さみい!」などと言ってはいるが、声には余裕を感じる。なんというか、手慣れた冒険者パーティという雰囲気を纏っている。


 私たちがせっせと拠点作りを進めているのを見たカインは、楽しそうに「大変だなぁ、ま、少なくとも数日はこんな場所でキャンプだ。しっかり準備しておいた方がいい」と、嫌味な感じに言ってきた。


「カイン達は拠点を作らなくていいのかい? 寒い場所の冒険の基本だろう?」


「ああ、俺たちはそんなに長居をするつもりはないからな。お宝を見つけるまでのせいぜい1〜2泊だ。それに、そちらさん三流案内ギルドと違って、洞窟内でも安全に眠れるアイテムもあるからな」


 クククと笑って「せいぜい頑張れよ」と言いながら洞窟へ向かうカイン達。ご丁寧にそれぞれ一人一言嫌味を言ってから通り過ぎてゆく。後ろからやってきたセラージュ王子と取り巻きは、シャヒールさんの鋭い視線を避けるように足早に通り過ぎて行った。


 洞窟にカイン達が消えてしまってからも、私達の作業は続いた。


「ウェザー、急いで設営しないと」


 慣れない雪上の作業は遅々として進まず、焦る気持ちがつい口を出た。そんな私に「大丈夫だよ。むしろ一旦休憩しようか」と、作業の手を止める。


「休憩している暇なんてないんじゃ、、、」


 私の言葉に、厳しい顔をしたシャヒールさんも手を止めずに頷き、同意する。


「ウェザー、君はもしかしてこのまま、私に無限回廊へ挑戦したという実績だけ残すつもりであるのか? 洞窟には挑戦せずここで数日を過ごすつもりであろう? 確かに私にはもう、勝ち目はないかも知れぬが、それでもせめて洞窟へ挑んでみたいのだが、、、」


 そのように言われて、一息ついていたウェザーが意外そうな顔をしながらシャヒールさんに、言葉を返す。


「え? ちゃんと設営が終わったら動きますよ? それにもちろん勝算も」


 当然のように勝算があると返された返されたシャヒールさんが、今度はきょとんとあっけにとられる。私にも勝ち目があるようには思えないけれど。。。


 あれだけ寒かったのに、今では汗ばむくらいになった頃、ようやく設営が終わって大きく息を吐く。


「疲れたー」


 私が声をあげると、ウェザーが「ニーア、まだ一仕事残っているよ。それを終わらせてからお昼にしよう」という。のんびりお昼食べている余裕はないと思うのだけど、でもお腹は減っている。


「もう一仕事って何?」私が聞くと、ウェザーは洞窟の入り口に視線を移す。


「洞窟の入り口を雪で塞ぐ。カイン達がしばらく出てこれないようにね」


 ………ん? 今なんて言った?



 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「入り口塞いだら私たちも入れないじゃないですか」という私の訴えは、「まあまあ」という返事にもならない言葉にいなされながら、私たちは洞窟の入り口に雪を積んでゆく。


 ちなみに先ほどからずっと洞窟周りにいたレジーは、すでに出入りの邪魔をするトラップを仕掛けていたらしい。


「ま、雪で塞ぐのはちょっとした時間稼ぎと嫌がらせだよ。本命はレジーのトラップさ。多分解除に半日はかかる」


 どんなトラップかわからないけれど、レジーが「楽しかった」と言っていたので聞くまいと思った。レジーのあの顔は、完全にタチの悪い悪戯を仕掛けた子供の顔だ。


「あれ? でもそれって入る時に決めた”記録預かり”とかいう約束を破ることになるんじゃ、、、?」


 確か、相手に危害を加えないルールをウェザーが追加していたような?


「何言ってるの、ニーア。僕が追加したのは「こちらのパーティーへ直接的な攻撃をするのも禁止事項として記載する」であって、お互いに危害を加えない、なんて一言も言ってないよ? こちらから攻撃する分にはなんの問題もない」


「それって、、、」


「カインも了解したのだから取り決めは成立している。つまり僕らは一方的に攻撃できるってわけ」


 、、、、うわあ。セレイアの木の時もウェザーの助言で脅しじみたお手紙を書いたけれど、ウェザーって結構腹黒い。


 トッポさん達はウェザーの性格をよく知っているからか、こうなることがある程度予想できていたみたい。


 ひとり、シャヒールさんだけが若干引き気味に「これではシャザールたちは死んでしまうのでは」と心配している。


 そんなシャヒールさんに「この程度のトラブルで死んでたら冒険者なんてやってられませんよ?」とあっさり返して、嬉々として雪の壁を作っていった。



 洞窟の出入り口を塞いで、今度こそゆっくりとお昼。作業の間に、少し大きなテントの中はしっかりと温められていてホッとする。温かいスープが沁みる。


 しっかりとご飯を食べて、お茶まで飲んだところで、シャヒールさんが「そろそろ教えてもらえんか? 入り口を塞いでどのように洞窟に挑むのだ? 近道できる入り口でもあるのであろうか?」とウェザーに質問。もちろん私も気になっていたので、グッと身を乗り出す。



 聞かれたウェザーは、少し勿体ぶってお茶を啜ると、おもむろに




「僕らはあの洞窟には挑みませんよ?」と言った。





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