【三の扉⑤】029)油断ならない相手
おまけのキャライメージ、最後はロブさんです。ロブさんはフィルさんの次に身長高め。イラストよりもう少し老けています。
「今回狙うのは氷の洞窟のある扉だよ」
シャヒールさんの依頼で無限回廊に挑むことが決まり、ウェザーが提案した目的地。ちなみにシャヒールさんは状況がわからない以上宿に戻ることはせず、出発まではギルドの部屋で過ごすことになっている。
「氷の洞窟の扉?」
「氷の洞窟のある扉、ね。確か以前に見た記録だと、雪の森の中に扉があって、目の前には洞窟の入り口がある。だから通称が氷の洞窟のある扉」
「へえ」
「で、詳しい情報を集めなくちゃいけないから、ニーア、また大図書館で手伝ってくれる?」
ウェザーの依頼を私は二つ返事で了解する。今回はトッポさんも一緒。
大図書館には入場料がかかるので普段は1人か2人で行くらしいけれど、今はギルドのお財布が暖かいことと、先日ギルドにも押しかけてきたごろつきに絡まれると面倒なので3人で行く。
通りに出るとやはり道ゆく人たちの視線がトッポさんに注がれる。もう慣れたけれど。基本的にみんな遠巻きに見つめるだけで、直接絡んでくる人はいない。
人ではない得体の知れない相手、なんとなく怖いのだろう。なので、視線さえ気にしなければなんということはない。
と思っていたら、「よう」と馴れ馴れしく声をかけてくる人がいた。どこかで見たことがあるなと思って見ていると、「なんだカインか」というウェザーの言葉で思い出す。
私が初めて無限回廊に挑んだ時に入り口で、ウェザーと話していた人だ。今日は私服なので分からなかった。
「昨日はなんだか大変そうだったみたいだな」
そんなふうに言ってくるカインに、ウェザーの横で聞いていた私がなんで昨日のこと知っているんだろ? と思っていたら
「そうだね。カインのギルドに出入りしている奴が混じっていたらしいけど、何か知っているかい?」とウェザーが聞く。この人、シャヒールさんを襲ったゴーウィン商会の!?
しかし問われたカインはニヤニヤしながら
「へえ、うちに出入りを!? 知らないなぁ。ゴロツキは色んなところに出入りするからね。気をつけないと」
「そうだね。カインのところの評判にも関わるだろうから、気をつけておいた方がいいよ。まぁ、一流冒険者と名高いカインが率いるゴーウィン商会が、あの程度の雑魚を飼ってるとは思っていないけれど」
ウェザーの皮肉にカインの笑顔が初めて少し歪んだ。
「、、、、もちろんだ。ま、せいぜい気をつけろよ」
最後は捨て台詞を吐いて去ってゆく。そんな後ろ姿を見ながら
「なんなんですか、あの人」とウェザーに聞くと
「見ての通り、シャヒールさんを襲ったギルドのギルド長だけど?」と返ってくる。
「え? あの人がギルド長、、、」
「そう。結構有名な冒険者だよ。だから国との契約も来る。内情は手段を選ばない三流ギルドだけど」
ウェザーの言葉が辛辣だ。それに、フィルさんが前に言った言葉の意味もわかった。とにかく私はあの人には近づかないようにしておこう。
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大図書館の中での私はウェザーに指示されるままに、あっちに行ったりこっちに行ったり大忙しだ。
途中で一息つきたいなと思ったところで、前回も椅子を用意してくれたギルド本部の職員さんがまた貸してくれた。お礼を言って椅子を借りるとその人と少しお喋り。
職員さんはソユールさんといい、すごく穏やかそうな感じの人だ。お茶も用意してくれて、2人で忙しなく動き回るウェザーとそのあとをついてゆくトッポさんを見ながらぼんやりする。
「ウェザーさんは大図書館を十分に利用してくれるから、見ていて楽しいのですよ」とソユールさんが言う。
毎日毎日届けられるたくさんの無限回廊の資料。それらを必要であれば書き起こし、分類して保管する。大切だけどとても地味な作業を続けるソユールさん達には頭が下がる思いだ。
そんなソユールさん達としては、せっかく集めた情報だから、多くの案内人に利用してもらいたいと思っている。けれど、実際にはなかなか難しいみたいだ。
「閲覧料金がかかるという事もあるのでしょうが、情報の大切さを実感できない若い案内人も多くて」
案内人になるケースは様々だけど、多いのは冒険者としてやってきて夢破れた者達だ。もちろん誰にでもなれる者ではなく、各ギルドがスカウトしてくる。
年々大図書館を利用する新人案内人が減りつつあり、それに比例するように案内人の質が下がってきているという。
「各ギルドにはもっと大図書館を利用するように勧めているんですけどね、、、だからあんなふうに大図書館を使ってくれるウェザーさんはここの職員に歓迎されています」
、、、なんだかちょっと貴重な話が聞けた気がする。
私も一応新人案内人だ。ソユールさん達にガッカリされないように頑張らねばと、気合を入れて立ち上がると再びウェザーのお手伝いに走る。
私たちはその日も夜遅くまで、資料集めに奔走するのだった。




