【三の扉③】027)冒険者ギルド、ゴーウィン商会
本日のおまけのキャライメージはフィルさん。作中にあるように、身長は高め。耳を入れると一般的な成人男性をちょっと超えます。
瞬間移動で突然ギルドの事務所に現れ、大きな音を立てて床へ転がり込んだ私とシャヒールさんと、ハルウ。ハルウだけはサッと身を翻して着地したけれど、私は「ぐえ」と情けない声を上げながら床へ這いつくばる。
「なななな何!?」
ソファでくつろいでいたレジーが驚いてソファの後ろへ飛んで隠れると、恐る恐るこちらを覗いて「もー!! ニーアちゃん! 驚かさないでよ!!」と抗議する。しゃーって威嚇する猫みたいだ。
一緒に話をしていたらしい熊のトッポさんも目を丸くしていたが「昼間の…」とシャヒールの顔に気づき、同時に怪我をしていることを認識すると、
「レジー、すぐにロブを。万能薬を持ってくるように伝えて。それから多分屋上にいるウェザーを呼んできて」とレジーに指示を出す。
レジーも気を取り直して「分かった!」と言ってあっという間に駆けて行く。
それから程なくしてロブさんがやってくると、シャヒールさんの怪我をしている右腕を確認してから、持ってきた万能薬を与えた。
万能薬を口に含むと、怪我した右腕がうっすらと光り、みるみるうちに傷が癒えてゆく。
「凄い」
初めてみる万能薬の効果に感動しながら、これは確かに高値で売れると感心しているうちに、「痛みが、、、」と、驚いた顔をしながらシャヒールさんが起き上がった。
「大丈夫ですか!?」
私が声をかけると、何度か腕の動きを確認したシャヒールさんは信じられぬと呟きながら頭を振る。
「一体、何を飲ませたのだ?」
「万能薬ですよ。もう痛いところないですか?」
「万能薬!? そんなハイレアアイテムを、私に?」
「一応料金は請求されると思うけど、いっぱいあるんで大丈夫です」
「いっぱいある!? 万能薬が!? 何を言っているのだ!?」
万能薬って、そんなに珍しいのかな? 私とシャヒールさんがなんだか微妙に噛み合わない会話をしている間に、レジーがウェザーを連れて戻ってくる。
「思ったよりも元気そうで良かったです。詳しい話を聞いても?」
ウェザーに促されて、私たちはひとまずソファへと座ると、タイミングを見計らってフィルさんがお茶を淹れてきてくれた。
お茶を口にして一息つくと、シャヒールさんが深いため息と共に事情を話し始める。
「ゲルザードが、裏切ったのだ」
シャヒールさんが絞り出すように名指ししたのは、昼に来た時に後ろに立っていた護衛の一人らしい。
今後のことを相談するために取り巻きの人たちと宿の一室で膝を突き合わせていると、ゲルザードと言う護衛が、政敵であるセラージュ王子の配下を連れて乗り込んできたのだ。
目的は宿への軟禁。つまり、セラージュ王子が必要なアイテムを見つけるまで、シャヒールさんを拘束しようという魂胆だった。
セラージュ王子が次期王に内定できるほどの宝を手に入れてしまうまでの間、閉じ込めておく。
宝さえ手に入れてしまえば、その段階でシャヒールさんが解放されて無限回廊に挑んだとしても、時間に差がありすぎる。
どうにか対抗できるだけのお宝を発見できたとしたも、その頃にはセラージュ王子の継承者指名が終わってしまう。
そのためシャヒールさんの陣営は決死の覚悟で脱出を試みた。なにやらしびれ薬を使われたようで、部下の人はシャヒールさんを逃がすのが精一杯だった。
土地勘もない街で、とにかく闇雲に逃げたシャヒールさんは、町外れの森へと飛び込んだらしい。そこから追っ手に追われているところ、私と出くわした。
「部下達がどうなったかはわからぬ」
悔しそうに拳を握るシャヒールさん。そんな時、ギルドの扉を叩きながら声がする。こんな時分に案内ギルドにやってくるお客さんはいない。つまり、シャヒールさんを探している追っ手だろう。シャヒールさんが身を固くして、私たちの表情を見る。
私はウェザーに目で「助けてあげて」と訴えると、ウェザーは本当に面倒臭そうに「トッポさん、悪いけど適当にあしらってきてもらえるかな」と頼み、トッポさんがゆっくりと入口の方へ。
しばらくして、入口の方から何やら怒声が聞こえたかと思うと、それが直ぐに悲鳴に変わる。悲鳴は何度か聞こえて、突然静かになったと思ったらトッポさんが何事もなかったかのように帰ってきた。何があったのか聞きたいけれど、すごく聞きづらい。
トッポさんはソファに座ると、シャヒールさんに「そちらさんの国が提携している冒険者ギルドって、ゴーウィン商会?」と聞く。
その言葉でウェザーが「うへえ」とすごく嫌そうな顔をした。そしてシャヒールさんは少し驚いた顔で「どうした分かったのだ?」と言った。
「ゴーウィン商会に出入りしているのを見たことがある、ごろつきがいたんだよ」
そのように説明するトッポさん。
「、、、、つまり、私の監禁に冒険者ギルドも手を貸していると言うことか。何故だ?」
困惑するシャヒールさんに、ウェザーが補足する。
「冒険者って言ったって、質は様々。無限回廊に挑む実力も、気概もない自称冒険者もこの街にはたくさんいるよ。タチの悪い冒険者ギルドはそういうのを飼っていて、つまらない足の引っ張りをしたりする」
「ゴーウィン商会っていうのはタチが悪いってこと?」私が聞くと、トッポさんが大きく頷く。
「この街でも指折りだねぇ。うちとも結構因縁があるよ。もっとも全部向こうの逆恨みだけど」
超タチ悪いじゃん!
私がトッポさんから説明を受けている横で、ウェザーはシャヒールさんに厳しい表情を向ける。
「はっきり言うけれど、現状ではシャヒールさんに勝ち目はないように思うよ。大人しく捕まって軟禁された方がいいんじゃない?」
と、急にひどいことを言い始めた。




