【幕間1-3】024)ニーア、武器について考える②
思い切って飛び込んだ店内は、思ったよりも整頓されていた。あくまで思ったよりであって、雑然としているのには変わりないのだけど。
少し薄暗い店内の奥でレジーが誰かと会話している声が聞こえ、私は、薄暗い店内をキョロキョロしながら奥へと進む。
棚には見たところ石ころにしか見えないものや、柄しかない剣? 変な形をした盾。用途が見当もつかない球体や、妙に伸縮性のある何かなど、おかしなものばかり置いてある。
私が妙に伸縮性のある何かを手にして伸ばしていると、「ニーア! 何やってるの! こっちこっち」とレジーに呼ばれて慌てて商品を棚に戻して奥へ。
一番奥の突き当たりにはカウンターがあり、そこには髪の毛なのか眉毛なのかヒゲなのか境目の判然としない、もじゃもじゃのおじいさんがちょこんと座っていた。
レジーはその横のカウンターの上で胡座をかいて私を待っていた。…っていうか、そんなところに座って怒られないのだろうか。
そんな私の心配をよそに、レジーとおじいさんは何事もないかのように私を迎え「ザック爺さん、うちの新人、ニーアちゃん。ウェザーが適当な武器を見繕ってくれってさ」と紹介してくれる。
私がとにかく頭を下げておくと、「フェッフェ」と挨拶なのか何なのか分からない返事が返ってきた。
「あの、私武器じゃなくても能力を発動するための補助というか、触媒みたいなものでも良いんですけど…」
「フェ?」
ふぇ?
「ザック爺さん、ちょっとボケてるからね。ま、目利きは確かだから安心してよ」
「フェッフェ」
全く安心できない。
そんな私の心配をよそに、椅子からピョンと飛び降りたザックさんは、ゆっくりとした動作でお店の端に据えられていた階段へ向かう。2階に上がるようだ。
「じゃあアタシたちも行こうか」とレジーに促されて、私もザックさんの後からギシギシ鳴る階段から2階へ。
すると2階には1階とは全くの別世界が広がっていた。きれいに整えられた棚に、ゆとりを持って様々な道具が飾られている。1階の様相を見ていなければ何処の高級店かと勘違いしそう。
「うわあ」キラキラと輝く武器や道具の数々に私が感嘆の声をあげると、ザックさんは嬉しそうに片眉を上げてから「嬢ちゃん、ここにある道具、とりあえず全部触ってみな」と渋い声で言った。…ふぇ、しか言わないのかと思ってたよ。
私は言われた通り、一番手近にあった剣に手を伸ばす。ぐっと持ち上げようとして、諦める。うへえ。重い。これを振り回すのは絶対に無理。
次にその横にある杖を。魔法でも使えそうな杖は軽くて使いやすい。これ、良いかもとザックさんを振り向くも全く反応がない。とりあえず一通り触らないとダメみたい。
それから順々に様々なものに触れてゆく。重いものを持ちすぎて腕がきつくなってきたので、休憩を訴えると、別に持ち上げる必要はないみたい。なら先に言って欲しかった。腕、プルプルしてるんだけど。
「えっと、、、これで全部触ったかな?」
一仕事終えた気分になって、私は腕を一回大きく回して息をつく。その様子を見ながらザックさんは無表情というか、モジャモジャで表情は見えないのだけど、あんまり手応えのない顔だ。
「嬢ちゃん…アンタ、加護はなんだ?」
「……実は分からなくて…」
「分からん? フェフェ。レジー、先に説明せい」
「言ってなかったけ?」
こちらのことなどお構いなしに、飾ってあったナイフの感触を試していたレジーがしれっと返事をする。
ザックさんは「ふん」と鼻を鳴らして、飾り棚の下にある抽斗を開けた。その中にもいくつかの道具が並んでいたのだけど……なんかどれも禍々しい気がするんだけど、触って大丈夫なの? 呪われたりしない?
躊躇する私をじっと見つめるザックさん。目も半分くらい眉毛に隠れているのに、目力が強い。圧がすごい。どうしよう。そんな私の視界の端に、私の二の腕くらいの長さの棒が目に入った。きれいな彫刻が施されているけれど、どうみてもただの短い棒だ。
見た感じ一番安全そうなその棒を手に取ってみる。すると、不思議なことが起きた。棒がふわりと光ったのだ。私が驚いてザックさんを見ると、ザックさんは「それだな」と短く言った。
これなの? 棒だよ?
ザックさんの説明によると、抽斗にしまっていた道具の数々は異世界で発見されたものの、通常の属性では使えないものばかりなのだという。
厳密に言えば使うことはできるけど、属性を生かすことができないものと言った方が正しいけれど。そうしてガラクタとして流れ着いた物の数々なのだとか。
私が触った棒は、宝箱に入っていた財宝の片隅に転がっていたらしい。財宝の中に混ざっていたガラクタという認識で流れ着いたそうだ。
ただごく稀に、数々のガラクタが私のような属性不明な人間に反応するものがあるため、こうして仕舞ってあるそう。
というわけで押し付けられるように棒を売りつけられた私は、釈然としない気分でギルドへ帰る。最悪役に立たなかったらレジーに頼んで返品してもらおう。
ちなみに一緒に店を出たレジーは、そのまますぐ近くにあるカジノへと消えていった。やっぱりカジノに近いからこの店を選んだ気がして仕方がない。
一人でギルドに戻ってきた私は、ちょっと考えて、そのままギルドには入らずに森へと足を踏み入れる。適当なところまで移動すると、先ほど購入したばかりの棒を取り出した。
一応手で持つための部分は、ちゃんとそれらしい工夫がされている。デザインは悪くないのだけど、如何せん棒だ。何の役にも立つ気はしない。
それでも一応、ダメもとで棒を持ちながら、目を閉じて集中してみると、お腹の真ん中あたりにじわりとした感覚が現れて、それが棒を持つ右手に流れるのが分かった。
「えっ!? 何これ!?」
初めての感覚に私が思わず目を開くと、いつの間にか私はギルドの入り口の前に立っていた。




