【二の扉⑥】019)無限回廊、再び!
今回の探索パーティーに急遽参加となった私。
前回、初めての無限回廊はわくわく感100%での挑戦だったけれど、前回サンドワームに食べられかけた事や、大図書館で全滅しかけたパーティの話を読んでしまった今は、好奇心半分、不安半分だ。
まして、期待されている私の能力、自分で言うのもなんだけどとにかく残念なものなので、せめて数日練習してから挑戦したい。
そう思っていたのだけど、現実は厳しい。過去の記録から、依頼主であるウルドさんが行った異世界が特定。ウェザーが星読みをした結果、無限回廊の挑戦は明後日となった。
明日は食料の買い出しなどに動くので、待ったなしである。そうしてあっという間に当日。ギルドの前に集まった私たちと、大変不安そうなウルドさん。
「あの、、、ほんとうにたったこれだけの人数で行くのですか、、、冒険者ギルドに依頼は?」
ウルドさんが不安になるのも無理はない。今回のパーティメンバーはギルド長のウェザー、薬師のロブさん、荷物持のフィルさん。自分の身体よりも長い槍がトレードマークのノンノン。そして、私の5名とウルドさん。
ちなみに前回一緒に行ったハルウはお留守番。崖沿いをへばりつくように歩くのであれば、ハルウには大変という理由からだ。ハルウはかなしそうにキュンと鳴いていた。
かろうじて戦闘ができそうなノンノンは小柄でもふもふ。持っている槍を扱えるようには見えないし、他のメンバーはそもそも戦えるようには見えない。
もっともそれは見た目だけの話で、フィルさんは人外のパワーを誇っているのことを私は知っている。なんならフィルさんだけでも戦力はおつりが来るくらいじゃないかなと思っている。
私の思惑はともかく、ウルドさんの不安も分かる。過去に無限回廊に挑戦した事があり、なおかつ命からがら帰還したウルドさんからみれば、頼りなさしか無いのだろう。
私だって同じ立場で2回目にこのメンバーを紹介されたら躊躇する。無知って強いよね。
「今回は海原に出る訳でもないし、目的地までのルートは分かっているので問題ないですよ。ま、依頼主がキャンセルするならここまでの手数料だけ貰って終了でもかまいませんが?」
ウェザーの言葉に一瞬固まったウルドさんは、しかし一度頭を振って、「お願いします」と絞り出すように言葉を吐き出す。ウルドさんの中で、不安よりもここで断ればも二度とあの味を味わう事はできないという思いのほうが競り勝ったのだ。
「それじゃあ行きましょう」
居残り組のギルドメンバーに後を託して、私は再び無限回廊に足を踏み入れる事になる。
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前回と同じ流れで、お金を払って足を踏み入れた無限回廊。見た感じは全く何の変わりもなく、ただただ整然と扉が並んでいる空間だ。今回も私たちは他のパーティが動くのをしばらく眺めて、最後に扉を選び始めた。
「うん。たぶんここだね」
ウェザーが立ち止まったのは、前回私たちが挑戦した扉よりも、少し先に進んだ場所にあった。必ずでは無いけれど、扉は奥に行くほど難易度が上がると聞いている。
でも、ここでギルドスタッフの私が不安そうな顔をしたら、ウルドさんはもっと不安なハズ。ここはぐっと我慢して、平気そうな顔をしなければ。
扉を空けると、やはりその先は見えない。最初にノンノン、次にウェザー、次は私の番だ。砂漠ではいきなり空中に放り出されたけれど、今回は、、、、危ないのは分かっているけれど、ついつい目をぎゅっとつぶって足を踏み出す。
次の瞬間、足下には柔らかな感触が。おそるおそる目を開ければそこは砂地。嗅ぎ慣れない香りに周囲を見渡せば、眼前に広がる大海原。
「うわあ! 海!」初めて見る海に私は先ほどの恐怖など吹っ飛んでしまい、海辺へ駆け寄った。そんな姿を見たノンノンが「ニーア! 危ないからあんまり海、ちかづいちゃダメ!」と注意してくる。
私もはっとなって、少し後ろに後ずさった所で砂に足を取られて後ろにひっくり返った。
今の所私は、異世界にきて砂まみれになってばかりである。
「ニーアちゃん、大丈夫?」くすくすと笑いながら私を起こしてくれるフィルさんにお礼を言って、「初めて海を見たのでつい」と言うと、フィルさんがちょっとビックリしたように「海を見るの初めて?」と聞いてきた。
「はい。私の住んでいた所は内陸部なので海は見た事無かったです。ブレンザットに来るまでは遠出した事も無かったので」
「そうなの。じゃあ、今後は色々な所が見られるわね〜」
私とフィルさんがそんなほのぼのとした会話をしているうちに、ウルドさんもやってきた。ウルドさんは私よりもせわしなく周囲をきょろきょろと見渡すと「この場所だ、、、間違いない」と呟いた。
そんなウルドさんの言葉に「良かった、ここがウルドさんが来た異世界なんですね」と声をかけると、すでにウルドさんは泣きそうである。
しかしウルドさんの感傷は長くは続かなかった。直後に扉をくぐり抜けてきたロブさんに「さっそくだが、ルートを教えてもらおう。その、神の食料庫とやらの」とせかされて慌てて私たちの先導を始めた。
「ここを行くんですか、、、?」
確かにウルドさん達は崖にへばりついて帰ってきたと言っていたが、それにしたって細い道のようなものがあると思っていた。私の目の前にあるのはまさしく崖。よくもまぁ、遭難したあとにこんな所を超えてきたものだとウルドさんに感心する。
しかし、足をかけるのもままならないのでは、私は崖を突破できる気がしない。途中で海に落ちそうだ。
でも、ひとりだけ砂浜で待っていますという訳には行かない。私は覚悟を決めて、試しに崖に手をかけてへばりついてみる。
、、、これは、思ったよりも辛い! 途中どころかもう落っこちそう!
「むむむむ」
なんとか壁から落ちぬように頑張ろうとする私の後ろから、ノンノンが「ニーア、なにやってる?」と不思議そうな声をかける。私は壁に頑張ってへばりつきながらノンノンの声をしたほうに振り向くと、ノンノンは小舟に乗っていた。
頑張って壁を突破しようとしていた私が急にばかばかしくなった瞬間、手が滑って砂浜へと転がり、再び砂まみれになるのだった。
もう!




