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【ほんとうの扉③】145)テオドールの理外

 (ニーア)偽神(テオドール)の間に割って入ったウェザーとフラージュ。


 初めて苦い表情を見せるテオドール。


「ほら、僕らの心か、もしくは思考を読めるんだろ?」


「なぜそう思う?」


「そうでないと理屈が説明できないからね」


「お前達の理屈の中に、私はいない」


「なるほど、今の会話でひとつはっきりした。やっぱり普通に僕らの頭の中を読むことができないってことか。或いは時間がかかるのか、何かしらの仕掛けが必要なのか。そうなるとさっきの階段を降りている間ってことか、、、」


「おい、話を聞いているのか?」


「うるさいな。考え事の最中に。まぁいいや、ご覧よニーア。テオドールなんてこの程度の存在なのさ。口車に乗せられるだけ馬鹿馬鹿しいよ?」


 出てきて早々にテオドールに対して言いたい放題だけど、今はそれが頼もしい。


「ウェザーよ、君は随分と好き勝手に話しているが、私が君の思考を読んだ上で黙っていると言う可能性は考えないのは愚かとしか言いようがないな」


「ああ、もうその話はいいよ。結局僕らがどうやってここに来れたのかさえ、分からないんだから、今更強がられても、ねえ」


 ウェザー絶好調である。でも私もどうしてここに来れたのか気になる。テオドールは自信満々だった。つまりそれ相応に私に近づけない仕掛けを施していたはずだ。


 私が素直に質問すると


「テオドールが邪魔をしないなら説明してもいいよ」と言う。


 テオドールは少々不快そうにしながら「構わない。その程度の時間で私の優位性は動かないからな」と促す。なんだかんだで理由が気になるようだ。


「確かに僕らは散り散りにこの場所に放り投げられた。僕はこの”(ナイフ)”があったから場所さえ分かればテオドールの仕掛けを破ることはできたけれど、この広大な空間の中でどこを探せばいいかさえ分からない。闇雲にナイフを振り回してどうにかなるとも思えなかったし」


「それじゃあどうやって、、、、」


「そりゃあ、フラージュのおかげだよ」と言いながらフラージュの背中を撫でる。そのフラージュは私に抱きつかんばかりにぺろぺろしてくる。


「なぜ、その獣は私の意志に従い、別の世界へ旅立たぬ?」


 テオドールが問う。


「そりゃあ、フラージュはこの世界の生き物じゃないからね」


「、、、しかし迷い人、この場合は迷い獣か。なのだろう? なれば、私の影響は少なからず受けるはずだが、、、、?」テオドールは少し釈然としないようだ。


「ああ、やっぱり全ての迷い人といちいち会って、影響を及ぼすわけじゃないのか。なるほど」


「、、、、私に対する考察は不遜だ。話す気がないなら力づくで排除するが?」


「自称神のくせに短気だなあ。答えは簡単だよ。フラージュは迷い獣じゃないから。ニーアが異世界で手に入れたお宝だからね。表現するとすれば、正規のルートでこの世界にやってきた数少ない異世界の住人だ」


 テオドールが私に説明しろと目で命令してくる。


 私は簡単にフラージュを連れてきた経緯を説明する。


 、、、、何をしているんだろう私たちは。今目の前に捕らえるべき目的の相手と対峙しながら、のんびりとお話をしているだけだ。状況の意味がわからない。


「、、、、なるほどな。それは少々予想外であった」


 テオドールはテオドールですっかり話を聞くモードだ。自分の計画に発生した予定外の出来事の原因がはっきりして、若干スッキリした顔をしている。


「フラージュは最初に僕を見つけたみたいだ。暗闇から突然飛び出してきたから驚いたよ。テオドールの放った刺客かと思った」


「ククク、、、間抜けめ」先ほどから散々好き勝手言われていたテオドールは、ここぞとばかり仕返しをしようとする。一応私たちの世界の神様のはずだけど、器が小さい。


「厳密に言えば、ニーアを探して右往左往しているところで、たまたま僕を見つけたみたいだね。そのままフラージュがニーアを探すのを追いかけたら、この辺りを行ったり来たりしながら不思議そうにしていた。なら、この辺りに何か仕掛けがあるんじゃないかと思って”(ナイフ)”を使ってみたら、ビンゴ。ニーアはなんだかんだ言って単純だから、テオドールの話に騙されそうになっていた。危ないところだったよ」


「でも、ウェザー。もしかしたら私たちの世界が大きく変わっちゃうかもしれないんだよ?」


「その程度の補償、僕がイナンナ様に確認していないとでも思った? その辺りは想定済みだよ」


 ウェザーの言葉をテオドールが否定する


「だが、神が人ごときの約束を守るはずがない」


「そうかもしれないね。でも、少なくとも君よりは信用できるよ。テオドール」


「、、、、、愚かな。ではもう君らとの楽しいおしゃべりも終了だな。そこの獣という多少の予定外はあったが、所詮さしたる戦力ではない。君らの生はここで終わらせることは簡単だ。互いにお別れの挨拶をするといい」



 テオドールは再びその姿を変え始める。


 人の姿ではない。腕の2本ある禍々しい姿に、絵画で見た天使の羽のついた姿。爪は鋭く、さらにその手には黒く光る槍があった。



「ウェザー!」


「ま、なんとか間に合った、ってところかな」


 ウェザーはすっと指を立てると、テオドールに向かって静かに下ろす。


 刹那



 テオドールは吹き上がるような炎に包まれた。






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[一言] >君らの生はここで終わらせることは簡単だ。互いにお別れの挨拶をするといい」 【かいてんのこぎり】さんが、アップを始めました
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