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【一の扉12】012)案内ギルド本部にいくよ!


 ウェザーと(ニーア)の間に多少(?)の齟齬があったけれど、私は無事にこの案内ギルド「ミスメニアス」で働くことが決まった。


 喋るフクロウのセルジュさん、もふもふ耳のパワフルなお姉さん、フィルさん、それにノンノンとハルウが味方してくれたからだ。


 ウェザーは深いため息をついていたけれど、追い出すような真似はしなかった。ただ、「給料は安いよ、覚悟して」と言っていた。


 お姉ちゃん(デリア)は、私の選択を咎めることはなかった。もともとお金を返す必要はあったし、私があの小さな町から出たがっているのを知っていたから。「たまには手紙を出してね」と何度も言っていた。


 ちなみに帰りはセレイアの木を守らなければならないので、教会で護衛をつけてもらうことになる。異世界の宝物を抱えたお姉ちゃんが行けば、教会も嫌とは言わないはずだ。


 司長と統括長のやったことに関しては、黙っておくことにした。本人たちも悪気があったのではないみたいだから。ほんの少し魔が刺したのだろう。


 ただ、ウェザーの助言もあって、お手紙を書いた。「葉っぱの秘密は分かりました。姉をくれぐれもよろしくお願いしますね」と。これで姉が肩身の狭い思いをすることが無くなるのなら、それ以上はいいかなって思っている。


 私たちが戻ってきたその夜は、入れ違いになった他のギルドメンバーも交えて、お姉ちゃんとシグルの送別会と、私の歓迎会が行われた。片隅ではセレイアの木が淡い輝きを放っており、木を初めて見るギルドメンバーは興味津々だった。


 そして翌日。


「元気でね。何かあったらすぐに連絡するのよ」


「うん。お姉ちゃんも元気で」


 別に今生の別れというわけではない。会おうと思えば会えるのだ。ま、私が無限回廊で死ななければだけど、、、私たちは2度ハグをして、大事そうにセレイアの木を抱えるお姉ちゃんと、護衛役のシグルを送り出した。


 2人の姿が見えなくなるまで見送ったところで、「さ、じゃあ報告書を書かなくちゃ」とフィルさんが伸びをしながら言う。「ニーアちゃんの最初のお仕事ね」と言われて、私もフィルさんの後に続いて部屋へ戻る。


 報告書は案内ギルドの義務。どの扉から何時、どんな世界に行ったのか、どんな旅程で、どんな危険があったのか。或いはこの世界に利する物は見つかったのか。事細かな項目が並び、一つ一つ記入する。


 完成した報告書は案内ギルド連盟に提出され、新たな情報として蓄積されてゆくのだ。


 フィルさんに教えてもらいながら午前中をめいっぱい使って完成した報告書を眺め、私は本当に無限回廊に行ってきたのだなぁと改めて実感する。


「うん。これで大丈夫ね。よく出来ました。午後はウェザーと報告書の提出に行ってきてね」そのようにフィルさんに送り出された私とウェザーは、賑やかな大通りの案内ギルドへ向かってテクテクと進む。


「ウェザー、、、怒ってる?」結果としてかなり強引にギルドに潜り込んだ私としては、ギルドの長であるウェザーに、少し申し訳ない気持ちがないわけではない。


「ん? なんで」今日も眠たげな顔をしたウェザーは私を見ながら小首をかしげた。


「だって、無理やりギルドに加入したから」ウェザーは最初反対していたのだ。一番大きな理由は無限回廊では何時死んでもおかしくないという点だ。


 私のギフトは不安定で危なっかしいし、かと言ってギルドでお留守をさせるておける程、ミスメニアスは余裕のあるギルドではない。私と言う食い扶持も増えるわけだし。


 それでも渋々ギルド加入を認めさせた経緯があるので、一応気持ちは聞いておきたい。


 しかしウェザーは「まあ、僕は忠告したから、本人がいいって言えば、それ以上はいいよ」とあっさりしたものだ。


「ただし、昨日も言ったけど無限回廊の探索はそんなに楽なものじゃない。それだけは覚悟しておいてね」と言われ、私は「はい」と気持ちを引き締め直した。


 そんな会話をしているうちに、大通りへと到着。ウェザーは無限回廊の一番手前にある大きいけれど、看板も何もない建物に入ってゆく。


 私も後に続くと、室内はとても静かな空間だった。職員が言葉少なに動き回り、棚には多くの書物が立ち並んでいる。間違って観光客が扉を開けても、慌てて閉じるような厳粛な雰囲気が漂っている。


 私がキョロキョロしている間にウェザーはカウンターの女性のほうへ。「やあシルヴィア。こんにちは」と声をかけると、少し青みがかってウェーブしている髪を束ねたお姉さんが、ウェザーを見てにこりと微笑む。


「あら、ウェザー。そう言えば3日前に無限回廊に挑戦したのよね? 随分早いお帰りね。今回はハズレだったのかしら?」


「いや、逆だよ。すぐにお目当のものが見つかったんだ」


「それは幸運ね。あら、そちらは?」


 シルヴィアと呼ばれた女性が私に視線を向け、


「新しいギルドメンバー。今回はこの娘も報告書をまとめたんだ、ニーア、君の分の報告書を提出して」


 と促されて、私は慌てて報告書を手渡しながら


「ニーアです。あの、よろしくお願いします」と挨拶。


「はい。案内ギルド連盟本部のシルヴィアです。よろしくね。確かに報告書を受け取りました。ここにサインしてもらえるかしら」


 シルヴィアさんに言われるままにサインをして、私の初仕事は終了だ。


 ホッと肩の力を抜いて、シルヴィアさんと少し世間話をしている時、案内ギルド連盟本部の扉が開いて誰かが入ってくる気配が。私はなんとなくそちらへ視線を移す。


 私が「あっ」と思うより先に、静謐だった案内ギルド連盟本部の室内に胴間声が響いた。


「おや! あの時の嬢ちゃんじゃないか!! なんでこんなところにいるんだい!?」


 入ってきたのは、燃えるような赤い髪が特徴的な大柄な女性。


 私にウェザーのギルドを教えてくれた人だった。


 



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