小説とかでよくある話
気がついたユニは顔を合わせてくれなかった。
ずっと俯いていて...時々唇を触っては...
「うぅ...」
っと小さく唸っている。
「怒っちゃった?」
「おっ...怒ってないよ!...ただ...恥ずかしくて顔が見れないんだよぉ...」
...かわいい。この初々しいユニが可愛すぎる。
どうしても顔がにやけちゃうし、アホ毛もぴょこぴょこ動いてしまう。
そんなアホ毛が後ろから急にガシッと掴まれた。
「魔王様に何してるんだよ。さらに悪化してるじゃないか。」
「うぇ?見てたの?」
アホ毛を掴んで来た相手は、リンカだった。
リンカってテレポートが使えないはずだよね。ここまでどうやってきたんだろう?
...羽根で飛んできたのだろうか?
「いんや、見てない。でもこの状況を見ればサキュバススキルに従って魔王様をからかったんだろうなってことは予想がついたよ。」
「いやぁ...ユニが可愛くてー...えへ?」
笑顔で誤魔化してみる。
...失敗した。
その瞬間、強引にアホ毛が引っ張られた。
「...えへ...じゃないよ!馬鹿なのかい?魔王様が可愛いのは分かるけど、ヒマリアもそうとう可愛いんだぞ。魔王様を何回気絶させればすむんだよ!」
「いでででっ!!分かった!分かったから!!アホ毛引っ張らないで...!!」
「はぁ...私の気苦労も考えてくれ...」
グイグイ引っ張られていたアホ毛が、ぱっと手を離されて開放された。
「うぅ...いたかった...抜けるかと思った...私のチャームポイントがぁ...」
痛みのあまりアホ毛もしんなりしょぼんとしてしまっている。
俺はそのアホ毛をなでなでしながら、ひとつため息をついた。
その様子を見ていたリンカは...
「ねぇ...ヒマリア.....なんかめっちゃ行動とか言動が女の子に引っ張られてない?」
「へっ...そう?」
「ほら!いま!首を傾げた。そういう細かいところから...行動が女の子になってきてるよ。」
え...TSしたら体に心が引っ張られるのは小説とかでよくある内容だが...俺にもそれが起こってる...?
心が侵食される事を考えると恐ろしくなって思わず身震いしてしまう。
「いや...完全に染まることはないと思うよ。サキュバススキルはメンタルケアも凄いからね。ただ...そういう行動がどんどん魅力アップに繋がって魔王様をドキドキさせちゃうのは理解して欲しいな。」
今だに唇を触って悶えているユニを見ながらそう言われた。
実際、ほんとに引っ張られるんかな…気になるよね。