視点ユニ:「私は生まれて初めて知った。」
ユニ視点
丁度いい時間になっていた。
今からサイの砦に向かえば勇者が目覚めたあとぐらいのタイミングに着くかな。
会ったらまず何を話そう?
...きっと新しい体に戸惑ってるはずだよね。安心する言葉をかけてあげたい。
魔王国での立場がどうなるのか気になるよね?
...絶対悪い地位にはしない事を約束しよう。その為の資料も用意したもんね。
魔王のスキルで見た勇者の心の傷...私がそれを癒してあげたい。何故かそう思った。
そして、その為には次会った時の行動が肝心だと思う。
だから色んなことを考えて、勇者に会ったのに...
「おっ、ちゃんとサキュバスになれたんだね。こっち向いてみてよ。」
「ん?こう?」
くるん...
...きゅん......
こんなこと初めてだった。心臓が激しく鼓動して頭の中が真っ白になった。
何か声をかけてあげなきゃ行けないのはわかってる。でも世界中の可愛いを集めたような存在から目が話せない。
真っ白になった頭は、すぐにあなたのことだけで埋められていった。
私の全てを捧げたくなった。あなたの全てが欲しくてたまらない。
これが恋なのだと...これが好きなのだと...私は生まれて初めて知った。
「ぁ...ぁわ...ぇぁ...ちょま...やばぃ...めっちゃかわいい...」
何とか絞り出した言葉はそんなありきたりな言葉だった。恋という感情を処理するために脳のメモリのほとんどを使用してしまっている。
余ったメモリじゃ、その程度の言葉しか用意できなかった。
そんな私を心配してか、あなたが私に近づいてくる。
それだけで心臓の鼓動がうるさいくらいにさらに高まり、身体中が熱いくらいに熱を持つ。
1歩1歩近くに来てくれるだけで強い幸福感が私の全てを支配する。
「えっ...?大丈夫?」
私を心配してくれる。今まで何度もかけられてきたその言葉が...あなたが発するだけで特別なものに変わる。
私があなたの心の傷を癒してあげたかったのに私が癒されてどうするのか。
「えっ!!はっ...はひ!だいひょうぶ...です...」
「んー?......全然大丈夫そうじゃないよね??」
近い!近い近い近い近い!
濁流のように暴走する恋という感情を少しでも抑えたいのに、あなたを感じるだけでそれが無駄だと分かってしまう。
こんなの知らなかった。恋とはこんなにも危険なものなのか。
急にほっぺたを指でぐにっと押された。
「ひゅ!?」
脳がショートした。
脳は、1度限界を迎えると少し限界の上限が上がるという。
そのおかげか脳が復帰した頃には先程よりスムーズに脳内の処理が行われていく。
そんな私が次に導き出した、次の行動は...
「あっ...あのっ...その...!私のっ...!お嫁さんになってください!!」
求婚だった。
あとから考えれば、まだ脳がバグっていたのだと思う。
それでも最高の行動には変わりないって思う。
だってあなたが...ヒマリアがお嫁さんになってくれたのだから。




