視点:リンカ「精神構造バグってんじゃないの?」
リンカ視点
夜三時頃...いつも通り王城の自室で眠っていると、マジックフォン...マジフォに電話がかかってきた。
眠気でぼーっとしている頭を叩き起しつつ電話に出てみる。
部下からの電話で内容は、
サイの砦の近くの川にボロボロの勇者が流れ着いたのを夜間警備の兵士が見つけた。対処に困っている。
との事。
夜中に電話をかけてきたことに文句の一つぐらい言ってやりたかったがサイの砦は私の管轄。
普通の人間ならまだしも勇者ならこの時間に電話が来ても仕方ない。
急いで支度して、サイの砦まで飛んで行った。
サイの砦に着くと、ボロボロの勇者が砦前の広場に寝かされていた。
兵士に話を聞き情報収集をした後、勇者に鑑定スキルを使う。
兵士の情報通り、勇者スキルの適合率が99.9%という驚異的な数値を叩き出していた。
安全のために殺した方が...
そんな考えが頭をよぎる。
「ん?...レベル1??」
勇者のレベルは1だった。
普通に考えて、どこの国だろうと勇者の訓練でレベル1では野外訓練は行わないはずだ。
野外訓練中の事故で川に落ちて流されてきたという線はありえない。
「そうなんです。しかもこの勇者の体の傷やアザ...調べてみるとかなり前に出来たものであるものが複数見られます。
傷やアザの形から推測するに、ムチや棒などでつけられたものでしょう。
体がかなり痩せ細っていることからも考えるに拷問されていたとしか...」
っと救護兵がそう語った。
「ふむ...適合率が高すぎて脅威と考えた...それで拷問して洗脳でもしようとしたのかもしれないね...もし、それがあってるなら魔王様を呼ぶしかないね。勇者をこちら側に引き込めるチャンスだよ。」
兵士に命令して、砦の医療室に運ばせる。
そこで勇者の治療を行った。
もし目覚めた時に暴れられたとしても、このレベルの勇者なら兵士1人でも勝てる。問題は無い。
最後に残した指の治療中に勇者は目覚めた。
話を聞いてみると、
「...逃げてきたんだよ。耐えられなくて...」
っと勇者が言う。
大方予想通りっぽいので魔王様を電話で呼ぶことにした。
時間が時間なので申し訳ないけどこれは緊急の要件だからね。
この時、正直な話さ。私は勇者の抵抗の無さに実は驚いていた。
...普通、目覚めたら敵地なんてパニクってもおかしくないよね?
精神構造がおかしいのか、心臓に毛でも生えてるのかを疑ったね。
魔王様が来たあとは、魔王様の同意もあり同族の儀を行って勇者呪いを解くことになった。
勇者は最初、サキュバスになることに戸惑っていた。
だけど吸精が絶対必要じゃないことを説明したら即決してきた。
「え!決断早!」
この時は思わず声が出ちゃったよ。
種族も性別も変わるんだよ?普通もっと悩むよね?
やっぱこいつ精神構造バグってんじゃないの?
サキュバススキル中にはメンタルケアに特化したスキルが梱包されてるから是非使って欲しい。
バグった精神構造を治してくれる...はず...多分...どうだろう?
同族の儀は体の構造を変えるためかなり時間がかかる。
いや、私は血の提供と最初の呪文唱えるだけだけだから問題ない。
王国の自害命令に関しても、1度儀式を開始するとその時点で職業が消えるんだよね。だから自害命令も効かないから時間がかかるのはあまり問題ない。
私はのんびり儀式の完了を待つことにした。




