いざ出発!
いざ出発と待ち合わせの場所まで馬車を走らせる。
馬車で向かった先はヴァイツェンブロート城。
カスクルート子爵家の馬車はそれほど大きくないが、荷物は多く積める。
その為座席が狭いのは仕方のないことだし、この馬車は商業目的で造られた物だから、何とも思わない。
御者をトンプソンさんが務めてくれるから、中にいるのは私とルーとメリッサの三人だけだし十分だ。
お城に着くと既に皆待っていたが、あまりの大所帯に驚きが隠せない。
いや、普通に考えたら分かることなのに考えなかった自分が悪いのだけど…。
アンディ様は第二王子様だから、護衛の数もすごいのだ。
孤児院にボランティアで行くのとは訳が違う。
今回は属国とはいえ、隣国のシュトレン城に行くのだから万全の体制で行くのは当然のこと。
アンディ様含む四人の幼なじみ達は、一際頑丈で豪華な馬車に乗るらしい。
私とルーもそっちに乗るように言われたけど、メリッサが一人になってしまうから交代で乗せて貰うことにした。
シュトレンとエンパナーダの国境まで順調に行って一週間かかるから、休憩の時に乗り換えさせて貰う。
その豪華な馬車の周りを馬に乗った騎士達が護衛で張り付いてくれていて、王族の遠出の大変さを身に染みて感じる。
エンパナーダの国境まで一緒に行ってくれるという申し出をすぐに了承しちゃったけど、断るべきだったかも。
シュトレン城に滞在するけど、国境まで心配だから着いてきてくれるらしいし、本当に申し訳ない…。
たかが子爵令嬢ごときに畏れ多いことだ。
幼なじみとして身近にいすぎて、たまにアンディ様が王子様だってことが抜け落ちる。
良くないことだ。
きっと断っても上手く丸め込まれて同じ結果になっただろうけど、知っていてこの待遇なのと知らずにこの状態なのは心づもり的に大違いである。
まずは私がアンディ様達の馬車に乗せて貰った。
メリッサは一人でも構わないからルーも一緒にと言ってくれたけど、馬車の中でも色々話を詰めたいと思っていたからルーとは交代でカスクルート家の馬車に残ることにした。
道中馬達を休ませつつ、初日はアンディ様が手配してくれた食べ物を食べた。
毒などを警戒する意味で、コックさんも同行させているらしい。
正直長旅だし野営も覚悟していたのに、泊まるところがいちいち豪華…。
そうだよねぇ…。
お忍びならいざ知らず、第二王子がシュトレンへ視察に行くってことになってるんだもんね。
宿があるような街なら、その街で一番の宿を用意するよね、街が!
宿というかホテルというか、王子が泊まっても良いような宿はオシャレ過ぎて落ち着かない。
アンディ様は一人部屋に身の回りのお世話をする侍従の方が付いている。
他の男子達は二人部屋で、グルマン様がヨハンと一緒、イーサン様はルーと一緒の部屋になった。
私も一人部屋って言われたんだけど、心細いからとメリッサと同室にしてもらった。
他の同行者達は、男女別に大部屋で泊まるらしい。
トンプソンさんも大部屋で申し訳ないと伝えると、屋根があるだけ有難いと言っていた。
普段の任務では屋根のないところで眠ることもあるらしく、大変なんだなと改めて思い、感謝した。
宿の厨房を借りて同行しているコックさんが調理した物を食べて出発の準備を整える。
コックさんはギリギリまでお昼ご飯の仕込みをしてくれていて、王族の遠出って本当に大変なんだなと思った。
私達がエンパナーダに行くのはあくまでも支店への視察が目的だし、アンディ様以外は本来の目的を知らない。
人数も多いし、休憩中はヨハンが離れてくれなくてアンディ様と二人で話す機会がなくてなかなか困った。
二日目の宿も同じ部屋割りで豪華な宿に泊まった。
私とメリッサの部屋にアンディ様がこっそりやってきた。
きっと気付いていたのだろうけど、お互い確認出来なかったから助かった。
ウェンディさんのことである。
アンディ様がウェンディさんにエンパナーダに行くことを聞いた時、初めは″エンパナーダの知り合いの所に行く″と言っていたのに再び問えば″エンパナーダに親戚が住んでいるから会いに行く″と言ったのだ。
これはその場にいたイーサン様も気付いていて怪しんでいたらしい。
言った本人は矛盾に気付いていないのか、シュトレンのお城入ってみたかったなぁと呑気だったそう。
ウェンディさんのエンパナーダ行きの目的は何か?
それを探って欲しいとメリッサに頼んでいた。
勿論、私達のエンパナーダ行きの目的のうちの一つなので引き受ける。
前回、メリッサが単独でエンパナーダに入った時に商人の知り合いも増えた様で、前回よりは調査がしやすくなったと言っていて心強い。
イーサン様がクッキーを調べても、ヴァイツェンブロートには存在しない薬物である為分からなかったそうだ。
クッキーの劣化も進んでしまった為、焼却炉に投げ入れたと聞いて、惚れ薬入りとはいえ手作りクッキーは一生懸命作ったのだろうし、少しだけ…ほんのちょっぴりだけウェンディさんに同情した。
最初の手作りクッキーをゴミ箱に投げ捨てた時は吃驚し過ぎて思わず抗議しちゃったけど、こうやって惚れ薬盛られたりとかすることを考えたら当然のことなんだよな。
私も気を付けないと…。
幼なじみ達は私の手作りのお菓子やパンを疑うことなく美味しく食べてくれてるけど、もし他の貴族の方に何か贈る時は市販品にしようと決めた。
カスクルートの商品にも美味しいものたくさんあるしね。
アンディ様と少し雑談がてらどうして私の手作りパンとかは躊躇なく口にするのか聞いたら、シルフィーは大丈夫だって信頼しているからだって言われて、照れ臭かったけど嬉しかった。
孤児院の人達も信用しているけど、一応義務としてイーサン様が先に食べてから食べるようにしているらしい。
ほんと食べ物一つにも警戒しないといけないなんて、前世の平民の感覚の私には到底理解しきれない程の苦労があるだろう。
アンディ様は、長く部屋を空ける訳にもいかずドアの前に待機していた侍従さんと自室に戻っていった。
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