ウェンディさんのクッキー
本日二回目の投稿です。
ウェンディさんは懲りません。
朝Aクラスの昇降口の前で和やかに談笑しているのは、イーサン様とウェンディさん。
イーサン様の手には綺麗にラッピングされた何か。
嫌な予感を感じつつ、ヨハンと私は二人に声を掛けた。
「おはようございます。イーサン様、ウェンディ様」
「イーおはよ」
「やぁシルフィーにヨハネスおはよう♪」
「まぁ、ヨハネス様とシルフィーヌ様おはようございます」
にこやかに彼女はどこか清々しさを感じる笑顔で挨拶を返してくれた。
それからイーサン様に向き直って、
「イーサン様、では宜しお願いしますね」
と言い残してBクラスの昇降口に消えていった。
三人で階段を昇っているとイーサン様が
「またクッキー貰った」
と言って手にしている包みを見せた。
「大きな包みですね?」
以前イーサン様が渡された包みよりも二周り程大きいので素直に訊ねる。
「はぁ…」
ヨハンがため息を吐く。
「ヨハンどうしたの?」
「分かっちゃった?」
私の方を一瞥してからイーサン様と目を合わせて深く頷くヨハン。
二人だけで何通じあってるの?
顔に″?″が浮かんでいる私にヨハンが説明する。
今回のクッキーは幼なじみ達と食べるように多目に包まれていて、イーサン様には幼なじみ達に食べさせる様にお願いしていたと。
そしておそらく確実にこのクッキーにも何かしらの薬物が盛られている筈だということだった。
イーサン様が、どんな薬物が使われているかを特定したいから家に持ち帰ると言うので、せめて匂いを嗅いだら思わず口にしてしまう効果だけは排除したいと、また味の感想とかを求められたら困るし中身を見せて欲しいと頼んで開けさせて貰った。
今回は意識して浄化の力を使ったから、惚れ薬の成分はそのままに食べたい欲が高まる香り成分だけを浄化した。
見た目は前回と同じで普通のクッキーといった感じだけど、浄化の力を自覚した今、改めて見てみれば怪しいオーラを纏っているのが分かった。
後でこっそりナンシーに訊ねると、前回の倍以上の薬が練り込まれていることが分かった。
親衛隊解散で、効力が無限でないと思ったのかは定かではないけれど、薬の量を増やして効果を高めようとしているのは伝わった。
親衛隊の三人より後にクッキーを食べたことになっているイーサン様の惚れ薬の効力が切れる前に、より強力に作用するように薬の量を増やしたクッキーを渡したのだろう。
ついでに幼なじみ達全員に食べさせて、王子様含む貴族達を自分の物に出来たらと企んだのかな…。
本当に身勝手だな…。
もしウェンディさんにクッキーの感想を聞かれたら美味しかったと言う様に幼なじみ達と話し合って決めて、惚れ薬が効いているかどうかはどうしようか?と言うことになった。
そこでヨハンには私という婚約者がいるし、グルマン様だってマリアンナとやっと正真正銘の婚約者になったのに、フリとはいえウェンディさんに惚れた素振りを見せるのは良くないってことで、ヨハンとグルマン様は食べなかったことにした。
アンディ様は第二王子様でこんな身分の方が、隣国の商家の娘という平民に惚れ込んでいると世間に拡がるのは得策ではないけど、このままウェンディさんを野放しにする方が問題だし、王族にまで薬を盛って操ったという事実が表に出れば、更に追い詰めるカードが増えるからと、いつもの軽い笑顔がニヤリと底冷えのするような笑顔に変わっていてゾッとした。
アンディ様とイーサン様はその日のお昼からウェンディさんと一緒に食堂に行ったり行動を共にした。
元々一番仲の良い二人は息ピッタリで、楽しんでウェンディさんを持て囃した。
アンディ様をも側に置くことに成功したウェンディさんは自信を取り戻したのか、また以前の様に傍若無人になってきたそうだ。
「あの女、ヨハネスとGGを手に入れられなかったことが相当気に入らないらしいぞ」
そう呟いたのはアンディ様。
「そうそう。この間のクッキーを食べなかったのは婚約者のシルフィー達の妨害のせいだって怒ってた」
イーサン様も同調する。
「あの何考えてるか分からない女は、恐らくまたシルフィーに何かしらの攻撃を加えてくるだろう。今度はマリアンナ嬢もターゲットなのは間違いない」
「ボクらといても二人の悪口ばっかりだもんね」
相変わらずウェンディさんは私のことを″モブ女″と呼んでいるみたいだし、マリアンナのことは″悪役令嬢のなりそこない″とか言ってるらしい。
ちなみに惚れ薬入りのクッキーを女性が食べたらどうなるのか気になって、ナンシーに聞いてみたら、多分だけどって前置きされて恋愛感情ではないけど親愛とか友愛とかで愛しくて護りたくなる様な感じになると思うって言ってた。
恐ろしいな…。
長期休みも近付いてきて、いよいよエンパナーダに行く日も目前だ。
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