親衛隊
イーサン視点で、クッキーの検分の翌日です。
家の馬車から降りて学校の門まで歩けば、大抵は幼なじみ達の誰かには会う。
今日はいつもより少しだけ遅く出たからボクの目の前にシルフィーとヨハネスがいた。
相変わらず仲良くて、人目も気にせず手を繋いでいる。
学校入学までは二人の婚約は白紙になる可能性もあったから、ボクもシルフィーにアピールしてたんだけど、結局ヨハネスが婚約者のままだ。
まぁどっかの知らないクソ野郎に盗られるよりよっぽどマシだけどね。
シルフィーだけは他の女子と違って媚びたりもしないし、何より突飛なことばっかりするから目が離せないっていうか、一緒にいるだけでワクワクする。
ボクの婚約者だったら良かったのに。
そんな幼なじみ二人が目の前にいるから勿論声をかけに行くよね。
「シルフィー、ヨハネスおはよう♪」
ボクに気付いた二人は手を繋いだままだけど、振り返って挨拶を返してくれた。
このまま三人で教室まで行きたいけど、今日からボクはウェンディに惚れたフリをしなければならない。
二人はボクにしか聞こえない声で、『頑張って』と言ってくれた。
ボクに薬を盛ったウェンディを地獄に落とすためだ。
ボク、頑張るよ♪
二人の視線の先には門の前で待つウェンディの姿が。
いよいよだ。
二人に『また後で』って声をかけてウェンディの元へ駆け寄る。
「ウェンディちゃ~ん♪おはよう!」
ボクに気付いたウェンディは嬉しそうだが、どこか探るような態度だ。
恐らく″惚れ薬″が効いたかどうかを確かめたいのだろう。
ここからがボクの腕の見せ所だ。
ウェンディのことは嫌いだけど、地獄に落とす為ならいくらでも優しくするよ!
何か楽しいかも♪
ニコニコして自分から
「ウェンディちゃん、クッキーありがとう♪美味しくって、ボク一人で全部食べちゃったよぉ。また作って、く・れ・る?」
首をコテンと傾げて瞳を潤ませておねだり。
ウェンディの方が小さいから上目遣いは使えないからね。
そしたら顔を赤くしたウェンディはまた作ってあげるって言ってた。
惚れ薬盛るほどの女の少女らしい反応は滑稽だ。
「ねぇ、ウェンディちゃん。ボクね、ウェンディちゃんのこともっと知りたいなぁって思うんだ。今日から一緒にお昼ご飯食べよう?」
ボクがウェンディのジャケットの裾を軽く引っ張りながらお願いすると、耳まで真っ赤に染まったウェンディはフイっと横を向いて
「私もイーサン様のことを知りたいと思っているので、お昼ご飯をご一緒出来るのは嬉しいです。」
だって。
かぁわいい♪
とりあえずお昼ご飯は食堂で一緒に食べることになった。
約束したら、門を潜ってBクラスの昇降口までウェンディを見送る。
「ウェンディちゃんと離れるの、寂しいなぁ。同じクラスだったら良かったのにね。」
シュンとした様に声をかければ、女なんて母性本能擽られてイチコロだよね。
普段はわざわざ他人と深く付き合いたくないから必要最低限だけど、ボクはコイツを落とさないといけないからね♪
そりゃ、あざとさも全力で使うよねぇ。
ほらやっぱり目の前のウェンディはキュンてしたみたいで軽く胸を押さえてる。
「ウェンディちゃん大丈夫?具合わるいの?また保健室までお姫様抱っこしてあげようか?」
心配した様にウェンディちゃんの両肩に手を置いて顔を除きこむ。
「な、何でもありません!イーサン様、ご心配ありがとうございます。朝のホームルームに間に合わないといけませんから、先に校舎に入りますね。」
踵を返して昇降口に向かうウェンディに背後から
「じゃあまたお昼にね♪教室まで迎えに行くからBクラスで待っててね☆」
って声をかけて、姿が見えなくなるまで手を振った。
Aクラスの昇降口から校舎に入って教室のドアを開ければ、幼なじみ達がこちらを見ていた。
労う様な顔をしているが、ボクは楽しんでやってるから何の苦痛もない。
シルフィーのおかげで食べてないのに気付けた惚れ薬入りのクッキー。
領地であった毒薬事件から、一緒にあらゆる毒の耐性を付けているボクとアンドリュー殿下にはおそらく効かないとは思うけど、食べずに済んだのに毒薬入りだったと分かれたことは有難い。
毒薬を使って人の心を操ったり、自分の思い通りにしようとする奴は地獄に落ちるべきだ。
工場長だって長年寝たきりで、今は割りと元気だけど車椅子生活だ。
他者を傷付けて自分の利益や幸せを得ようとするような人間は決して許せない。
昨日の幼なじみ会議でシルフィーからもらったお守りはジャケットの内ポケットに入ってる。
これを触ると何か心が温かくなる。
学校では例えAクラスでもボクはウェンディに夢中なフリをしないといけない。
だから幼なじみ達が集まってる中に入ってもウェンディのことを褒め続けた。
短い休み時間はウェンディのクラスまで行って喋ったりして、昼休みは一緒に食堂に行った。
そしたらボクとウェンディの後ろを三人の男子がついてきて、二人の座った席の横に座ってきた。
それぞれ子爵、男爵、商人の息子でBクラスの男子達だ。
ボクがウェンディをうっとり見詰めながらご飯を食べていると、三人は自分達が先にウェンディの魅力に気付いて、奪い合って争ったけど、ウェンディがそれを望まなかったから皆でウェンディを愛で護ることになったと話してきた。
だから、ボクにもウェンディの親衛隊の一員になれと。
ふぅ~ん。
ウェンディはまずコイツらで惚れ薬の効果を実験したんだな?
でも解毒してないところを見ると、チヤホヤされて嬉しいからって訳か。
まぁ良いだろう。
二人きりよりは精神衛生的にもマシだと思うし。
親衛隊とやらに入って探るとするか。
「ウェンディちゃんの親衛隊?いいねぇ♪ボクも入る。可愛いウェンディちゃんを護る為ならボク頑張るよ♪」
ウェンディは満足そうだ。
「でも、ごめんね?放課後はボク家の用事があるから皆と集まれなくて…。」
落ち込んで見せれば
「その分俺らが伯爵子息の分まで放課後はウェンディを護るから安心してください!」
って三人のリーダーっぽい男子が言ってきた。
放課後はシルフィーの屋敷に行くからウェンディとはいれないんだよ。
これだけは譲れない。
「じゃあ、学校ではボクがしっかりウェンディちゃんを護るね♪」
「クラスでのことは俺らが護るから、それ以外を頼みます。」
リーダーが頭を下げる。
「ふふっ任せて♪」
何かあっけなさ過ぎて拍子抜けだけど、チョロくて助かるわぁ♪
昼食を食べ終えてBクラスまで送る。
ウェンディの手を握って、離れたくないって耳元で囁く。
他の親衛隊員が手を握るのは規律違反だとか言ってたけど、ウェンディが良いって言ったから黙った。
「それじゃあまた帰りにね。一緒に帰ることは出来ないけど、門までは送るからBクラスまで迎えに行くね♪」
って頭に手をポンとのせて一撫でしてAクラスに戻った。
隣の席のアンドリュー殿下に
「ウェンディちゃん可愛すぎて、何で同じクラスじゃないのかって思っちゃうよ。」
ってウェンディにぞっこん発言をしておいた。
アンドリュー殿下は笑ってたけど、周囲のクラスメイトはウェンディって誰?みたいな空気だ。
それでいい。
周りにもボクがウェンディに夢中だって思われてた方が信憑性も上がる。
ボクの心の癒しは放課後のシルフィーの屋敷での幼なじみ会議だから、それ以外は頑張るよ♪
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