シェフが仲間になりました。
厨房に行ったら干しブドウはあった。
シェフに何に使うか聞かれたけど、上手くいくか分からないから内緒ってはぐらかした。
ついでにジャムを入れるような空きビンがあるか聞いたらないって言うから、肩を落としていたらシェフが料理の材料を仕入れる時に一緒に買ってきてくれるって!
シェフ優しいじゃん。
まだ6才の私には厨房の作業台は届かないし、何よりお湯とか使いたいけど危ないと思うのよね。
そんな訳でシェフも巻き込むことにした。
前世では大きなボウルにラップで蓋して作ってたんだけど、この世界にはラップはないから蓋付きのビンでやることにした。
分量とかうろ覚えだけど、干しブドウとぬるま湯でいけたと思う。
シェフが買ってきてくれたビンを熱湯消毒してもらってから、(カビたら嫌だしね)干しブドウを1/3程入れて一回沸騰させてから冷ましたぬるま湯をビンの半分位まで入れたら終わり。
フリフリして、ちょっと温かいところに置いておいたら良い。
ガスが発生して破裂したら怖いから、朝と晩に蓋を開けてガスを抜いてまたフリフリする。
何日かして中の干しブドウがシュワシュワしてきたらOK。
これを使ってパンを作ってみる。
小麦粉と塩とこのブドウエキス(酵母液)を水変わりに使って生地を捏ねる。
これは力仕事だからシェフに任せた。
私はそれを横から見ていて、ちゃんとグルテンが出来ているかをチェックした。
シェフからしたらつい最近まで厨房に入ったこともないただの子供なのに、文句も言わずに手伝ってくれた。
しっかり生地が出来たら、濡れた布巾を被せて乾燥を防ぎつつ生地を休ませる。
生地が膨らんできたのを見たシェフはびっくりしていたけど、これからもっとびっくりするよ~と伝えるとワクワクした顔で待っていた。
膨らんだ生地を粉を敷いた台の上に優しくのせて、切り分ける。
それを表面が破れないように気を付けながらツルツルになるように丸める。
これは私でも出来る作業なので、足元の踏み台に乗ってシェフに手伝ってもらいながらやった。
また濡れた布巾を被せて15分位生地を休ませたらいよいよ成型。
ガスを叩きながら抜いて、試作だしシンプルでいいかと先程と同じように表面がツルツルになるように丸くした。
それを鉄板に等間隔に乗せて、また布巾を被せる。
3倍位まで膨らんだらパンの表面にバツ印の様な切り込みを入れていよいよ焼成。
窯は危ないからとシェフが触らせてくれなかったけど、近くで一緒に焼いているところを見せて貰った。
焼き上がったパンは外はカリカリ中はモチモチで
、ハード系ではあるけれど今までのカチコチパンに比べたら全然美味しい!
シェフも気に入ってくれて、今までより時間も手間もかかるけど、これから毎日作ってくれることになった。
ビンの大きさも大きくして数も増やして、毎日空いたビンに新しい材料を入れて古いやつから順番に使うようにした。
私的にはもっとフワフワを目指したいから、シェフにはこれからも実験に付き合ってもらうつもり。
まぁ、シェフは6才のお嬢様がいきなり言い出したレシピで作ったパンに驚いていたし、どこからそんな知識を得たのか気になったみたいだけど、(そりゃあ当たり前だと思うわ。)私が妖精と話すことが出来るのも知っているし、このお嬢様なら不思議じゃないかって受け入れてくれた。
ありがたや~ありがたや~!
ちなみに私が妖精と話せることを知ってるのは家族とこの屋敷に勤めてる一部の人達だけ。
お父様が、多分妖精と話したりコミュニケーション取れるのは私だけしかいないから(実際私だけなんだけど)、変に知れ渡って悪用されたりとかする可能性も視野に入れて外の人達には内緒にしてる。
毎朝のパンがこれに変わって、家族も驚いていた。
いつかパン屋さんを開くまでいきたいから、このレシピは門外不出でとシェフにも家族にも伝えた。
流石、手広く商売をしているお父様はこの価値に気付いてくださって、私の好きにしていいって言ってくれた。
家族も私が妖精と話せることを知っているからあまり深く追及しないでくれるところが本当に助かる。
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