GG
ピロシキマウンテンの件基シュトレンによる侵略未遂事件も解決して、今まで以上にシュトレンとヴァイツェンブロート間の流通が盛んになった。
シュトレンはヴァイツェンブロートの属国になり、実質今はヴァイツェンブロートの領土のような物だ。
若きシュトレン国王は母君を人質に取られ周りの大人達に良い様に利用されていた。
しかし、それが正しい治世でないことに聡明で慈悲深いシュトレン国王は胸を痛めていた。
身寄りのない子供や女が裏で人身売買されていることも前国王の時にはなかったことだ。
それで私服を肥やしている貴族がいることも若きシュトレン国王は知っていた。
ヴァイツェンブロートの暗殺部隊がシュトレン国王に同行を求めると、何の抵抗もなく従ったという。
そしてヴァイツェンブロート国王に助けを求めた。
シュトレン国王は人身売買の件や一部の貴族による悪政などの憂いを全て話した。
ヴァイツェンブロートのクロワッサン公爵をシュトレンの宰相に据え、腐った考え方の幹部を一掃した。
シュトレンの貴族達の中にも善良な者はおり、領地での民からの評判、領地経営の采配や功績を元に新たな国の幹部を選出した。
勿論人身売買なども厳しく取り締まり、見付け次第極刑になる程の重罪として禁止した。
数年は要すると思われるが、あの若きシュトレン国王はきっと立派な王になるだろう。
そんな感じで勿論輸出入も増えて、今まで手に入らなかった珍しい香辛料なども比較的簡単に手に入る様になった。
その為、王都にも新しい香辛料屋さんが出来たりしていて今日は買い出しにやってきた。
何故かヨハネス様も一緒だけど、私は気にせず香辛料選びに熱中する。
見つけた!
シナモン!
これでシナモンロールを作りたい!
そう思って大量に仕入れる。
勿論このままではシナモンスティックの状態なので、粉にしてから使う。
早速屋敷に戻って試作に取り掛かろうと帰路を急ぐ。
最近のヨハネス様は以前より明るくなり、私に対する執着や気持ち悪さはそのままだけど、人間らしくなってきたと思う。
それも毎日の様に同年代の友人と過ごしているおかげかな?
まぁ勝手にうちに集まってるだけなんだけど。
屋敷に着いてドアを開けると水色のおかっぱ頭が目に入った。
誰?
するとそのおかっぱ頭のイケメンが満面の笑みを浮かべて
「ヨハネス!」
と叫んで駆け寄ってきた。
「GG、いきなりどうしたんだ?」
ヨハネス様も満更でもないような笑みを浮かべて熱い抱擁を交わす。
ヨハネス様のそんな行動は初めて見たので固まる。
ん?今GGって言ってた?
誰だろ?
それにあの水色のおかっぱ頭に金色の瞳。
冷たそうなイケメン。
あっ!!最後の攻略対象のグルマン=グリッシーニ伯爵子息だ!
何でここに?
それにゲームでは人を寄せ付けない氷のような性格だった筈。
でも、今目の前にいる彼はとても人懐っこい様な笑顔を浮かべているし、ゲームの印象とは対照的だ。
もしかして、雪崩が起きる前はこういう性格だったの?
10才で起こる筈だった雪崩を阻止した今、彼の性格を正反対にする様なことはないのかもしれない。
「ヨハネスに会いにブリオッシュ辺境伯の屋敷に行ったらここに行ってるって聞いたから来ちゃった!」
カスクルート家もそうだけど、それぞれ領地にある屋敷とは別に王城のある王都にも屋敷を構えていて、そこで生活している貴族も多い。
そんな訳で割と簡単に集まれてしまう訳だけど、ヨハネス様に会いになんでうちに来るかね。
二人の様子を横で見ている私に気付いたグルマン様が、私に向き直り
「二度目ましてかな?僕はグリッシーニ伯爵家の長男のグルマンです。気軽にGGと呼んで欲しい!」
GG…。なんかジジイみたいだなんて思っても口に出してはいけない…。
「お久しぶりです。お茶会の時にはお話することがありませんでしたので、ほぼ初対面ですね。私はカスクルート子爵家の長女のシルフィーヌです。殿下やイーサン様にはシルフィーと呼ばれていますのでお気軽にそう呼んでいただけたらと思います。」
淑女の礼をする。
横からヨハネス様が
「シルは私の婚約者だから、いくらGGでも馴れ馴れしくしないように!」
と牽制していた。
まぁあまり効果はなさそうだけど。
「何言ってるんだ。シルフィーとの婚約はまだ仮のような物だろ?」
どこからかアンドリュー殿下が現れてそう言う。
「そうそう。殿下もボクもシルフィーの婚約者枠狙ってるんだからね~♪」
イーサン様までもが現れた。
「姉様はモテモテですね☆」
呑気なルー…。
「絶対にシルの婚約者の座は譲らないからな!GGもシルに手を出すなよ!」
目くじらを立てて怒るヨハネス様。
何だかカオス過ぎて訳が分からない。
GGことグルマン様を見ればキョトンとした表情で
「僕はシルフィーヌ嬢には興味ないですよ!ヨハネスに会いに来ただけなんだから。」
ヨハネス様の腕に纏わり付く。
ヨハネス様は安心した様にグルマン様の手を引いて部屋に入っていった。
何だったんだ?
まぁ私には関係ないでしょ。
それよりも買ってきたシナモンを粉にすることが最優先♪
早速オリゴさんに相談しよう。
屋敷の厨房に入れば、新たな弟子にパン作りの指導をしているオリゴさんがいた。
そろそろ二号店を出そうと人員を育てているところだ。
二号店は前から思っていたカフェも併設したいから、孤児院の大きな子達を接客のメインにして雇いたいと思っていて、領地にある屋敷に研修に入って貰って執事やメイドに給士の仕方などを教わっている。
オリゴさんから弟子が作った練習パンを貰って皆のところに持っていくと、ヨハネス様にべったりなグルマン様が目に入る。
ヨハネス様が私に気付くと素早くすり寄ってきて、隣の席を陣取る。
私を挟んで反対隣にはアンドリュー殿下とイーサン様。
ヨハネス様の反対隣にグルマン様。
ルーはイーサン様とグルマン様の隣で丸いテーブルに座っている。
何かすごい圧迫感…。
いつもよりヨハネス様のイスが私の方に寄ってるし、反対側の殿下とイーサン様もすごく近い。
ヨハネス様の隣ぴったりとグルマン様も横付けしているし…。
「あの近すぎて落ち着かないので、皆さんもう少し離れませんか?」
困って声をあげれば
「婚約者である私がシルの近くに寄るのは何もおかしいことではないよ?」
「婚約者(仮)なんだから、俺だってシルフィーの近くにいたい。」
「ボクだってシルフィーの横に行きたいけど、今日は先を越されちゃったから殿下の横で我慢してるんだよ?」
「イーは俺の横は嫌なのか?」
「そんな訳ないじゃないですか。だけど、シルフィーの横に行きたいって気持ちは嘘じゃないです。」
「僕はシルフィーヌ嬢には一切興味ありません!憧れのヨハネスと仲良くなれた今、より交流を深めたいだけです!」
あぁあぁあぁあ~!!
皆うるさい!!
ちょっとイライラしてしまった私は思わず立ち上がり、大声を出してしまった。
「皆さん、落ち着いてください!ちゃんとした距離を取らないなら帰ってください!!パンは配りませんし、私も部屋に籠ります!」
皆一瞬キョトンとしてから、それぞれの適正位置に戻った。
それでもグルマン様はヨハネス様にだいぶ近かったけれど、それはどうでも良いので放置した。
グルマン様の話を聞いていると、この間の件で密入国者を一掃したブリオッシュ辺境伯に憧れて、その後取りであるヨハネス様のことも尊敬しているんだって。
素直に慕ってくるグルマン様に満更でもないヨハネス様。
親友にでもなれたら良いね。
ゲームではブリオッシュ辺境伯のことを恨んで、ヨハネス様のことを憎んでいて、ヨハネス様もそれを受け入れ必要以上に近付かないようにしていたけど、ストーリーだいぶ変わったな。
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