ピロシキマウンテン(前)
前中後編に分けます。
前世でも経験したことのないモテ期という奴なのか?
モブなりに幸せに生きていけたらそれで良かったのに、盛大に攻略対象達と関わってしまった…。
でも学校に入学してヒロインさえ現れたらこのモテ期も終わるよね?
むしろ今すぐにでも終了して欲しいけど。
切実に。
12才まで耐えられるかしら?
そして今日も今日とて三人は屋敷に来ていて、あまりにも毎日殿下がうちに来て鍛練の時間が取れないからって、陛下がアンドリュー殿下用に雇っていた剣術の教師をうちに派遣してくれて、便乗してルー含む他三人も一緒に教えてもらっている。
いや、そもそも出掛けさせなければ良くないですか?
お勉強に支障が出ているなら尚更そう思いますけど?
それとなく、こんなところに毎日来ていてお勉強が疎かになってるんじゃないですか?って聞いたら、自信満々にうちに来る前に大体片付けて、帰ってからもやっているから大丈夫って言ってた。
はぁ、そうですか。としか言いようがない。
殿下はよく甘いお菓子を持ってきてくださる。
ヨハネス様が甘い物が苦手なことを知ってるからだと私は思っている。
イーサン様は領で栽培している身体に良い薬草を煎じてお茶にした物をよく持ってきてくれる。
苦いけど、お通じが良くなって肌荒れを防ぐだなんて飲まない訳がない。
ヨハネス様は季節のフルーツなどをよく持ってきてくれて、私はそれをジャムにしたりしてパン作りに使っている。
高価な贈り物は受け取り拒否するから、食べ物やお茶に落ち着いたらしい。
それでも頻度が多いと私が苦言を呈するからそれぞれ週に一回位までに留めてくれてる。
私は貢がれて喜ぶ様な女じゃないし。
剣術の稽古が始まったし、私も一人の時間を持ちたかったから自室に引きこもる。
するとナンシーが話しかけてきた。
ピロシキマウンテンに妖精達の大切な水晶を守っている洞窟がある。
そこは雪山で人間は寄り付かないし、見付からないように結界の様な物を張っているらしい。
最近その洞窟周辺を探っている人間がいるらしく、妖精達は落ち着かない。
それは結界を張っている妖精がもうすぐ代替わりするタイミングが来るからだ。
湖の妖精のように、亡くなってから生まれるので目覚めるまではその力を発することが出来ず、結界に隙が出来るのだ。
それがいつになるかは分からないけれど、少なくとも一年以内に代替わりが行われる。
その水晶は妖精女王が生まれた場所であり、女王の代替わりが行われる神聖な場所である為、他の妖精達もそこにいる。
四人の妖精達が力を合わせて結界を張って守っているのだけど、そのうちの一人がもうすぐ代替わりなのだそうだ。
普段なら生まれて数時間程で目覚めるし、目覚めたらすぐに先代の記憶を引き継いで結界を張る仕事を再開するから、人間が寄り付くこともないし問題がないのだけど、もし人間に見付かってしまって水晶が奪われることになったら妖精女王が再び生まれることがなくなり、他の妖精達も代替わりをすることが出来なくなるから、いずれ消滅してしまう。
妖精が消滅した土地は死んでしまうから、やがて世界も滅ぶ。
その話を聞いて思い出したことがある。
ピロシキマウンテンっていう雪山はグリッシーニ領にあり、その麓の村が雪崩で壊滅してしまい、攻略対象であるグルマン=グリッシーニ伯爵子息の乳母と乳兄弟の幼馴染みを含む多くの人間が生き埋めになってしまう大災害が起こる。
ゲームの中ではグルマン様の回想シーンで出て来て10才のグルマン様はそこから心を閉ざし、その雪崩が密入国者による人災であったことを知り復讐に燃える。
犯人は勿論だが、密入国者の侵入を許してしまったブリオッシュ辺境伯のことも恨んでいて入学後はヨハネス様に攻撃的な態度を取る。
ヨハネス様もグルマン様の気持ちを汲んで受け流す姿勢を取っていて、更にそれがグルマン様の怒りに火を着ける。
ヒロインに出会い、今まで誰にも言えなかった乳母と幼馴染みへの思いを聞いてもらって、見付からない復讐相手を恨み続けて探し続けることでグルマン様の幸せが失われていくことをその二人は望んでいるのかと聞かれ、二人はいつもグルマン様のことを自分のことの様に喜び、悲しんでくれたことを思い出す。
そんな二人が、自分の不幸せを願う訳がない。
そのことに気付き、ヒロインの支えのおかげで再び人を愛するということを知った。
そんなストーリーだったと思う。
グルマン様が10才の時に起きたこの雪崩は密入国者が妖精達の大切な水晶を採掘したことが原因だろう。
そして今のグルマン様は私達と同じ9才だから、ナンシーの言う、結界を張っている妖精の代替わりの隙を突いて洞窟を発見したのだろう。
水晶を守ることが出来れば、雪崩を防ぐことが出来るし、たくさんの人の命を救うことも出来る。
私はお父様に相談することにした。
おそらく、密入国者は隣国シュトレンの者だ。
またもや隣国が絡んでくる可能性が高い為、慎重に動く必要がある。
私が妖精から話を聞いたことは明かせない事実だし、妖精達が守っている水晶があることもバレてはいけないから、怪しい密入国者っぽい者を見掛けたとブリオッシュ辺境伯に報告し、侵入経路を調べてもらい、グリッシーニ領には怪しい者達が雪山周辺をうろついている様だから警戒して欲しい旨を伝える。
お父様は対外的には商いを通じて、メリッサ率いる諜報部にシュトレンの様子を探らせた。
この間の毒物製造工場の件(湖の妖精の事件)から国王陛下より、シュトレンを警戒するように賜っていて、(この時はシュトレンの侯爵の単独犯だったけど)定期的に探りを入れやすい状態であるそうだ。
何としても水晶を守り、雪崩を阻止したい。
お読みいただいてありがとうございます。
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明日からはまた0時投稿になります。




