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悪役令嬢の親友でした。

某動く城の準主役似の美青年神様が言うには、あの私が死ぬ原因だった動物が、たまたま私の元の世界に遊びに来ていた神様だったそう…。


何であんな夜中にあんな田んぼ道に居たのかとか、何でイタチ?だったのか色々気になることもあったけど、それよりもまずは私の今の現状を知ることが一番大事。


うっかり死ぬ運命じゃなかった私を死なせてしまったから、罪滅ぼしに転生させてくれたらしい。


しかも私が学生時代にハマっていた乙女ゲームの世界だって。

何だそれ…。

何でゲーム?

この神様は乙女ゲームの世界の神様なんだって。

じゃあもしかして私は主人公(ヒロイン)


期待半分、部屋にあった姿見で確認する。


「これ誰?」


正直なところ、そこに映っていたのは外国人風ではあるけれど、目を見張るような美人でもなければ、誰をも虜にするような愛らしい美少女でもなく、どちらかといえば整っている位の影の薄い印象の少女だった。


淡い茶色の瞳にミルクティ色の髪を腰まで伸ばした6才程に見える少女。


「もしかしてモブ?」


そう口に出すと、急にそれまでの記憶が甦った。

私の名前はシルフィーヌ=カスクルート、カスクルート子爵家の長女で現在6才。

カスクルート子爵は手広く商売を展開していて裕福な方だ。

王都に商会を構え、色々な物を販売している。

私には2才下の弟ルーカスがいて、彼は長男なのでいずれ子爵家の後を継ぐ。


シルフィーヌはゲームの攻略対象であるヨハネス=ブリオッシュ辺境伯子息の婚約者の親友。

ヒロインがヨハネスのルートに進んだ時に、泣きながらヒロインに抗議して、それを見掛けたヨハネスに見苦しいと切り捨てられる悪役令嬢の親友。

そして婚約破棄されて失意のまま修道院に行くことになる悪役令嬢の親友。


そう、あくまでも親友。

所謂モブ。


この悪役令嬢になる親友はマリアンナ=パニーニ伯爵令嬢。

パニーニ伯爵夫人とカスクルート子爵夫人(私のお母様)が学生時代からの親友で、私とマリアンナは赤ちゃんの時から交流があって大親友だ。


ゲームのことを思い出してしまうと、この親友の破滅ルートをどうにかしてあげたいと思ってしまう。


モブに徹して平和に暮らしていけるのが一番だけど、マリアンナが婚約者に捨てられて修道院に行くのを黙って見ていることなんて出来ないよ。


幸いまだマリアンナは婚約をしていない。

確か8才になって初めて呼ばれたお茶会で、虫に驚いたヨハネス様がたまたま池の近くにいたマリアンナにぶつかって落としてしまったことから婚約者になったんだったハズ。

このお茶会は王城の庭園で行われていて、これまた攻略対象である第二王子と同じ年頃の貴族の子息、息女が集められ友好関係を築く切っ掛けにする目的で開かれたものだ。

そこには子爵家の私も勿論参加する。


その日は絶対にマリアンナが池に近付かないように気を付けようと心に誓った。


頭の中でここまで考えを巡らせていると、存在を忘れていた神様が割り込んできた。


「ごちゃごちゃと考えているところ悪いけど、私も忙しくてね…。死なせてしまったお詫びとして前世の記憶を思い出した時に授けようと思っていた能力をあげるね。」


「能力?」


「そう。それは妖精の姿を見て話が出来るという能力。」


「え、この世界妖精がいるの? 」


「妖精はいるよ。この部屋にも今一人いるよ。早くキミと話したいって。」


「でも、妖精が見えて話が出来るって傍目から見て独り言言ってる怪しい奴になっちゃうんじゃないの?」


「キミはまだ6才だから教わっていないのかもしれないけど、この世界にはたくさんの妖精がいて、自然を豊かにしてくれる存在として、人々に愛されているんだよ。」


「妖精が見えたり話したり出来る人ってどのくらいいるの?」


「妖精の姿が見える人間は一定数いるよ。ただ、話したりは出来ないからお互いコミュニケーションは取っていないし、干渉もしていない。」


「今ここに一人いるっていう妖精は私と話したいって言ってくれてるんだよね?お互い干渉しないんじゃないの?」


「それが、キミの能力。唯一コミュニケーションを取れる存在になる訳。」


「そんな大それた役目!私はモブなんだし、目立ちたくないからそんな能力いらないよ!?」


「ダメ、これは決定だし、そんなこと言うと妖精が悲しむよ。」


「だって死なせたお詫びでしょ?私の平穏さえ保証されたらそれで十分だよ…。」


そう言い終わるとパアッと灯りが灯って、これまた某ネズミ主人公の会社の空飛ぶ年を取らない少年の話に出てくる光る粉を出す妖精にそっくりな可愛らしい妖精が目の前に現れた。


「あ、ティ◯カーベル?」

「じゃあ私はもう行くね~!良い人生を!グッドラック!」

そう言い残して神様は消えた。


残された私と妖精。


とりあえず妖精には謝った。

妖精と関わりたくない訳じゃなくて、一人だけ特別な能力を持つことが怖かったと言ったら分かってくれて許してくれた。


妖精の名前はナンシーと言ってなんと妖精の女王様だった。

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