ストレスを発散しよう。
あの地獄のようなお茶会から数日。
両家の顔合わせも済んですっかり外堀を埋められてしまった。
まぁ、結果だけを見たらマリアンナとヨハネス様の婚約フラグを折ることが出来た訳だし?
私としては不本意だけど、12才まで我慢すれば良いだけだから今までと同じように好きなことしていれば良いだけ。
それでもまぁ婚約者になったからには、定期的に会う必要があるらしくて…。
孤児院のボランティアで会ってるんだからそれで良いじゃん!って思うんだけど、二人で過ごす時間が必要だって両親にまで言われたら従うしかないじゃない。
確かにまだ奴がどんな人物か見定められていないし?
婚約を白紙にするにしても、その後学校での付き合いとかもあるから、友人位にはなってもいいかもしれないしね。
そんな訳で、今日はシェフのオリゴさんとパンの試作をしてる。
パン生地を台に叩きつける時に心の中で「ヨハネスの馬鹿~!」とか「勝手に惚れて勝手に巻き込むな~!」とか「実は変態~!」とか叫びながらバンバン打ち付けてストレス発散してる(笑)
しかも試作が出来たら食べさせるって契約?だから奴が来るときに作ったりしてる。
それに今日は奴の苦手な甘い系のパンにしようと思ってるから、大好きなパンが甘くてショックを受けるがいいわ!
我ながら意地悪だけど、菓子パンも作りたいと思ってたから作ってるだけだし、文句は言わせないよ。
このパン生地には砂糖と卵と牛乳とバターも入ってる。
砂糖が入っている生地は焦げやすいから、他のパンより少し低めの温度でちょっぴり長めに焼くのがポイント。
パンの中にはたっぷりの手作りカスタード!
そう″クリームパン″を作ったのだ!
まだ中身が入ったパンは作っていなかったけど、新店舗の売上も上々だし、そろそろ新作を出していかないとなって思って。
カスタードクリームは甘さ控え目ではあるけど、お菓子が苦手って言ってた奴にはどうかしら?
反応が楽しみだわ(笑)
そんなこんなで″クリームパン″は出来上がって、奴が時間通りにやってきた。
応接室にお茶とパンを用意してもらって早速新作ですって勧めてみた。
勿論中身が甘いクリームとかは教えない。
うふふ…。どんな反応を見せてくれるのかしら?
パン大好き少年なヨハネス様は新作のパンを見て目を輝かせた。
卵を溶いて表面に塗り光沢を出してから焼き上げたパンはツヤツヤ輝いていて、食欲を掻き立てる。
オリゴさんが上手に焼いてくれたから、ツヤッツヤでしょ?
早く食べなさいよ(笑)
「早速いただくよ。」
一思いにガブッといっちゃって!
心の中のニヤニヤを外に出さないように気を付けながら反応を待つ。
驚いてる(笑)
甘いから嫌だった?
「ヨハネス様、どうなさいました?もしやお口に合いませんでしたか?」
しおらしく眉尻を下げて訊ねる。
完璧な淑女顔!(笑)
「いや、中にクリームが入っていたことに驚いてしまったけど、とっても上品な甘さで気に入ったよ。」
はぁあ?
甘いの嫌いって言ってたじゃないのよ!
「甘いのは苦手ではなかったのですか?」
ちょっと悔しくて訊ねてみる。
「これは私が甘い物が苦手なことを知っている愛しの婚約者が、私のことを考えながら作ってくれたものだから、どんなに甘くても最高に美味しいに決まっている!」
超キラッキラな笑顔でそう言うヨハネス様。
嫌がらせってバレてたのもムカつくけど、意地悪されてるのに何喜んでるんだよ!!
結局ストレス発散にはならなかった。
最近、ルーカスがお父様に心身ともに鍛えよとか言われて剣術を習い始めたんだけど、ヨハネス様も剣術やってるからって、うちに来たときは相手をしてくれてる。
ルーもすっかり義兄様って懐いちゃってて、面白くない。
やっぱり辺境伯家だけあって毎日鍛練してるんだって。
それであれだけ力強かったのかって納得。
私も自分で身を守れるように、ルーと一緒に体術というか護身術を習い始めた。
抱き締められて振りほどけなかったのが嫌だったからね。
あれからは強引に抱き締めたりとかはされてないし、ちゃんと節度を守った関係でいてくれているようだから警戒心はだいぶ薄れてきたけど、私の周りの人達も皆ヨハネス様のことを気に入ってるんだよね。
外堀は完全に埋まってるって感じ。
まあ12才までに靡かなきゃ良い訳だし、余裕でしょ?
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急遽本日17時にもう1話公開することにしました。