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やっぱり◯◯?

あんなに大きな声でヨハネス様が第二王子に婚約報告するものだから他の方々にも知られてしまった。


その後はマリアンナを始めとするご令嬢方にどこで知り合ったのかとか、どうして婚約することになったのかとかを根掘り葉掘り聞かれた。


そりゃあ、たかが子爵令嬢の分際で辺境伯の後継ぎと婚約なんて身の程知らずと思われても仕方ないと思う。


でも私は婚約なんてしたくなかった訳だしそんなの言われても知らないよって話で、ヨハネス様に好意を寄せているであろうご令嬢が物凄い目で睨んでるけど、学校に入る頃には婚約者じゃなくなってるから安心してって言いたい。


根掘り葉掘り聞かれたところで、私の方が急なことに驚いている訳で返答に困っていると、ヨハネス様が


「シルフィーヌ嬢とはカスクルート子爵家の経営しているパン屋で知り合ったんだ。今日の茶菓子と一緒に出されていたあの柔らかいパンははカスクルート家の製品で、売るだけの仮店舗から店内で焼き上げる新店舗が開店するということを聞いて、足を運んだ時にシルフィーヌ嬢が従業員を指導したり、接客をしている姿を見て一目惚れして子爵家に頼み込んで婚約を許していただいた。」


と宣言した。


私が店で接客指導してたの見られてたのか…。

初耳なんだけど。

というか、私達には会話が足りない。

孤児院で顔を合わせても子供達にかかりきりでゆっくり話すこともなかったし。

まぁ二人きりになるのを避けていたんだけど。


ヨハネス様がそう宣言していたけど、それでも不満に思う人はいる訳で、公爵家のご令嬢が馬鹿にしたように、貴族ともあろう者が平民に混ざって店先に出て接客をするなんてはしたない。とか言ってきた。


これも貴族としては言いたいことも分かるし、反論しても面倒なだけだからスルーしようと思っていたら、第二王子のアンドリュー殿下が


「カスクルート子爵家の新事業であるあの柔らかいパンには俺も興味がある。それにカスクルート子爵家は様々な分野で手広く事業を展開しており、領地経営も上手くいっていると聞く。その子爵家と縁を結びたいと思っている貴族はたくさんいるらしいぞ。ブリオッシュ辺境伯家との縁談は何の問題もないと俺は判断するがね。」


と仰ってくれた。

破談ウェルカムだけど、子爵家が誉められたのは素直に嬉しかったから感謝の気持ちを込めた眼差しを向ける。


私と目が合った殿下が


「俺が先に知り合いたかったよ。」


とウィンクしてきたもんだから、ご令嬢方から悲鳴が上がった。


面倒なことになるから余計な燃料投下するなよって心の中で悪態ついていたら、ヨハネス様が


「残念ながら、シルフィーヌは私の婚約者ですので殿下の出る幕はありませんよ。」


って私の腰に手を回して自分の方に引き寄せた。


8才のガキが修羅場ってる!

前世での8才なんてその辺走り回って何にも考えてなかったと思うよ。

本当、子供なのに子供らしくないのは貴族だから仕方ないのかもしれないけど。

色恋の揉め事なんてこの年では無縁でしょうに。


ただこの場で二人のやり取りを見守るしかない私に


「ヨハネスに愛想を尽かしたらいつでも俺のところにおいでねシルフィーヌ嬢。」


なんて更に煽ってくるからヨハネス様から冷気が駄々漏れに…。

やめてぇブリザードが吹き荒れてるからぁ。

私を巻き込まないでぇ。


オドオドするしかなくて、取り敢えずこの場を去らなければって思って殿下に祝福してくださってありがとうございます。と伝えて礼をしてその場を離れた。


私に引きずられながらもヨハネス様は殿下を睨んでいるし、殿下は殿下で愉快そうに笑っているし、もう最悪!!


どうしてこうなったのよ。


人気のないところまで連れてきてからヨハネス様に詰め寄る。


「ちょっと!白紙になるかもしれないのに何でわざわざ宣言する必要があるのよ!」


怒りに任せて怒鳴り付ける。

口調が悪くなってることにも気付かずに次から次へと文句が出る。


「あんな殿下の挑発にまでのって!からかって楽しんでるのバレバレなのに!」


あまりの私の剣幕に怒りの表情から一転ポカンとしていた。


「シルフィーヌ、すまない…。」


いつも自信満々なヨハネス様のシュンとした様子に毒気が抜かれた私は


「分かれば良いんです。身分差のある婚約なのですから不満に思う者はいます。あの私のことを馬鹿にしてきたご令嬢だって、ヨハネス様のことが好きだったのかもしれませんし、こんな商人の真似事をしているような格下の者が婚約者ですって言われても受け入れ難いのでしょう。」


「しかし、私は事業に真剣に取り組むそんな君の姿に惚れ込んだんだ。誰にも文句は言わせない。」


苦々しい顔でヨハネス様が言うけど、こんな貴族の子供達が集まっているところでいきなり言うことじゃないですよって宥める。

怒っているのは私の方なのに。


「他の男にシルフィーヌを盗られたくなかった。」


ボソリと呟く。


「こんな貴族らしくない子爵令嬢なんて誰も相手にしないから心配し過ぎですよ。」


って私が言うと


「君は分かってない!自分にどれだけの魅力があるのかを。僕だって本当は脅したりなんかしないで普通に求婚したかったんだ。」


()だって!普段は()って言ってるのに!動揺してる?

こういうところは8才なのかもね。


「じゃあ普通に求婚してくれたら良かったじゃないですか。」


ふぅ。とため息を吐くと更に必死な顔で


「初めてなんだ。こんなにどんな手を使っても手に入れたいと思うのは!孤児院にいる男共の中にも君に恋慕を抱いている者がどれ程いるか!今日だって殿下は冗談っぽく言っていたが、君のことを気にしている様子だった!だから一刻も早く僕のものだと宣言する必要があったんだ!」


一息に口にして息を荒気る。

落ち着け少年。


「私はそんなにモテませんよ~。」


まだぶつぶつ言ってるけど、そろそろお茶会に戻らないといけないし渇でも入れとくか!


「ブリオッシュ辺境伯家の後継者ともあろうお方が女一人のことで心を乱すのはみっともないですよ!」


ハッとしたように我に返るヨハネス様。

落ち着いたか?少年よ。

私はというと凄く怒ってたのにもっと怒ってる人がいたら妙に冷静になるあの感じよ。


「さぁ戻りましょう。私のことは何を言われても気にしませんから、ヨハネス様も乱されませんように。いつもの冷静沈着なヨハネス様でいてくださいねぇ。」


と手を引いて会場に戻ろうとすると手を引き返されてよろける。

ガシッと抱き止められ力強く抱き締められた。


「先程の乱れた口調の叱責。堪らなかった。」


って耳元で囁かれて鳥肌が立ち、思わずヨハネス様を押し返す。

8才だというのに力強く、腕を振りほどくことが出来ない。

私だってパン作りで腕力に自信がついてきたと思っていたのに。

キッと睨み付けると頬を赤く染めた。


やっぱりこいつマゾなんじゃないの?


「そういう強気なところが大好きだよ。僕だけに見せて欲しい。」


8才なのに歪みすぎでしょう!


「いいから、離して!」


そう叫んでやっと離して貰った。


その後はマリアンナと一緒にお茶を飲んだり他のご令嬢方の質問を適当にはぐらかして過ごした。


物凄く長い1日だった。


お読みいただいてありがとうございます。

毎日0時に予約投稿しています。

宜しくお願いします。


やっぱり◯◯(マゾ)

私の中の最初の設定ではヨハネスはもっとミステリアスクールな感じだったのですが、シルフィーヌの前では残念系イケメンなようですね(笑)

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