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待ちに待ったお茶会イベント。

いよいよお茶会です。


前話までの補足としまして、ヨハネスの一度目の屋敷への訪問はアポなしでしたが、二度目に突然現れたのは孤児院なので驚いてはいましたしシルフィーヌは嫌がってはいますが失礼には思っていないのかなと思います。

孤児院の子供達は領主の姉弟のことをとても信頼しています。

ちょっと距離は近いけれど、前世の記憶を持っている主人公としてはあまり気になることはないようです。

それでも身分差もありますし、自分達の将来のことを考えて行動してくれている姉弟や領主夫妻には感謝しかないので、一生懸命教えてもらったことを覚えて、将来恩返しが出来たらと思っています。

アニーの口の軽さについては、聞かれたからといってその情報が何に使われるのか分からないのだから簡単に他人に話してはいけませんと孤児院の院長を交えて施設の子供達に説明しました。

アニーにしたら、ヨハネスにカスクルートのパン屋のことで聞かれて、うちの領主もお嬢様も私達のためにこんなに凄いことをしてくれているって自慢したかっただけなので、話してはいけないとは思っておらず、孤児院に現れたヨハネスを見たシルフィーヌの反応から、知られたくなかったのだと悟りました。


妖精と話が出来る件は家族(勿論弟のルー)と信頼のおける一部の使用人(オリゴさん含む)と親友のマリアンナが知っています。

この件に関しては、おそらく世界に一人だけで公になれば悪いことに巻き込まれる可能性が高いことから、弟のルーカスにも口を酸っぱくして話しているので(他の人に知られたら姉様が殺されてしまうかもしれないと)誰にも言いません。

まだ5才ですが、いずれ子爵を継ぐ立場なのでこの辺りからお父様に厳しく躾られていきます。


8才になった。

いよいよ、マリアンナがヨハネス様と婚約する切っ掛けになったイベントだ。


第二王子であるアンドリュー=ヴァイツェンブロート殿下と年の近い貴族たちを集めたお茶会。

ここには同じ年の攻略対象者達が全員揃っている。

油断なんて出来ない。


まず、王城に向かう時にマリアンナに決して池に近付かないように言った。

マリアンナの今日の運勢を占ったら水難の相が出ているから、絶対に気を付けて!

って念を押したから大丈夫だと思うけど、強制力が働く可能性もあるし(神様はシナリオ無視して良いよって言ってたけどいまいち信用出来ないし)なるべく側にいるようにしよう。

それより皆が池に近付かないように警備の人に頼もうかな。

池に落ちたら危ないんで見張っててくださいって。


でも、そもそもヨハネス様が虫に驚いたりしなければマリアンナが池に落ちることもないのに。

虫が苦手なら今度孤児院に来たときにイタズラで虫を投げつけてやろうかしら。


まだ何にも恨みはないけど、マリアンナの無事が証明されるまではヨハネス様は敵よ!


お城に入ると庭園に案内された。

綺麗に手入れをされた花々が美しく咲き乱れ、優しい甘い香りが辺り一面に漂っている。


そこにあるテーブルに色とりどりのお菓子と見覚えのあるパンが並べられていた。

どうやら今日はそこから好きな物を選んでお皿に盛り、席につくバイキング方式らしい。


第二王子に挨拶をして早々にその場を離れる。

警備の人に池に落ちたら怖いので見張っていてほしいとお願いした。

皆それぞれ、好きな食べ物をお皿に盛り付けて席に着く。

私の隣は勿論マリアンナ。

それなのに反対側の隣には何故かヨハネス様が座ってきた。


「シルフィーヌ嬢こんにちは。」


何でわざわざ隣に座ってきたの?

そんなことは言えないからあくまでも愛想良く、


「ごきげんよう、ヨハネス様。」


と挨拶をした。


隣のマリアンナが紹介して欲しそうにしてる。

嫌~!

マリアンナがヨハネス様に興味を持ったら困るのよ。

でもこのまま紹介しないで無視する訳にもいかないし…。

覚悟を決めて紹介する。


「ヨハネス様、こちらは私の親友でパニーニ伯爵家の長女マリアンナです。」


「初めまして、マリアンナです。」


「マリアンナ、こちらはブリオッシュ辺境伯家の長男ヨハネス様です。」


「パニーニ伯爵令嬢、初めましてヨハネス=ブリオッシュです。」


挨拶を交わしたけど会話が続かない。

というか、ヨハネス様マリアンナのこと避けてる気がする。

私の時は最初っから名前呼びしてきたのに、マリアンナは家名で呼んでるし。

どういうことなの?


それでまたヨハネス様のお皿にはパンが乗ってるし。

どれだけパンが好きなのさ。


「ブリオッシュ辺境伯令息様はパンがお好きなのですか?」


長っ!名前呼ぶだけでめっちゃ長い。

でも相手が家名で呼んできてるのに、馴れ馴れしく名前呼びなんて出来ないよね。


「パンが好きなのは否定しないけど、お菓子の甘過ぎる感じが苦手なんだ。」


「まぁ、そうなのですね。そのパンは優しい甘さですものね。」


私を挟んで会話しないでよぉ。

ここでマリアンナがヨハネス様に惚れちゃったら厄介だぁ。


どうしようかと悩んでいたら、ヨハネス様に声を駆けられた。


「シルフィーヌ嬢、少し話があるのだけど一緒に来て貰えないだろうか?」


えぇ、何で?

ここで言えば良くない?


「ヨハネス様、こちらでお話するのではダメなのですか?」


首を傾げて聞いてみる。


マリアンナが

「お二人は名前で呼び合う程仲が宜しいのですね!」

ってニコニコして言うもんだから焦った。


そんなことないから!って言おうとしたのに、間髪入れずにヨハネス様が

「毎週会う仲だよね。」

って意味深発言してくれやがりました!


何言ってくれてんのよ!


「パニーニ伯爵令嬢には申し訳ないけど、少しだけシルフィーヌ嬢をお借りしてもいいかな?」


いやいやいや、良くないから。


「でも…。マリアンナを一人にするのは心配です。」


やんわり拒否る。


「シルフィーヌ、私のことなら大丈夫だから、ブリオッシュ辺境伯令息様とお話していらして?」


めっちゃ良い笑顔で言われてしまった。


「すまないパニーニ伯爵令嬢。さぁお言葉に甘えてあちらで話をしようシルフィーヌ嬢。」


有無を言わさぬ勢いで手を取られ連れていかれる私。


何で?

何の用よ?


木陰に置いてあったベンチに座らされる。


身構えていると信じられないことを言われた。


「シルフィーヌ嬢、どうか私の婚約者になって貰えないだろうか?」


は?

何?

今、私求婚されてる?


「ど、どういうことでしょう?ヨハネス様?」


パニックだよ。


「そのままの言葉の意味だよ。私の婚約者になって欲しい。」


マジかぁどこでフラグが立った?

困った…。


「しかし、私は子爵家の者です。家格としても辺境伯家とは不釣り合いです。」


素直に思ったことを告げる。


「心配には及ばない。君のご実家であるカスクルート子爵家はたくさんの事業を成功に導き、また領地を豊かにしようと努力を惜しまない。家同士の繋がりを作るのはブリオッシュ家にとっても決して損する話ではない。」


「しかし、急に言われましても家族に相談もしておりませんし…。」


「それも心配いらない。君のご両親にも私の両親にも許可は貰っている。」


はぁあ?今何て言った?

私のお父様もお母様も了承したってことなの?


「だから、あとは君が頷くだけで婚約は成立するんだ。」


外堀を埋められた訳か。

拒否したい。


さすがに攻略対象者は怖いわ。

巻き込まれ回避したい。


「申し訳…」


断ろうと口を開くと途中で止められた。


「私が君の重大な秘密を知っているとしても断るのかい?」


何?パン屋のこと?

脅してきてるじゃん。


「それはパン屋のことでしょうか?」


イラッとして訊ねる。


「いや、違うよ。」


ニッコリ楽しそうに微笑んでいるヨハネス様。


「では私の何を知っていると仰るのですか?」


「単刀直入に言うよ。君は妖精と話したりコミュニケーションを取ることが出来るね?」


何で~!

何で知ってるの?

ルー?ルーなの?


「ルーカスに聞いた訳ではない。」


じゃあ他の家族?


「誰からも聞いていない。」


身内を疑ってごめんなさい。


「実は私も妖精が見えるんだ。話したことも触れ合ったこともないけれど、君は話せるんだよね?」


「そんな訳ないじゃないですか…。」


否定はすぐに退けられる。


「私が初めてカスクルート子爵家を訪れた時に屋敷にいた妖精が何やら伝えていたね?それから、初めて孤児院に行った時も同じ妖精と小さな妖精に話し掛けられていたね。」


見られてたのか…。

言い逃れは出来ない。


「申し出を受け入れない場合はどうなるのですか?」


恐る恐る訊ねる。


「国中にカスクルート子爵家長女は妖精と話したりコミュニケーションをとることが出来る妖精女王の愛し子だって言い触らす。」


拒否権なし。


「何故私なのかお聞きしても?」


「単純に最初はパンに興味を持ってカスクルート子爵家にお邪魔しただけだったんだ。しかし、蓋を開ければあのパンを作っているのは自分と同じ年の女の子だと言うし、その女の子は色々なことに前向きに取り組んで領地を良くしようと努力をしていた。同じ8才である筈なのに、随分と未来を見据えた考え方が出来るのだと感心した。そして会う度に君は私を楽しませた。」


「買い被りすぎです。」


どうしたものかと俯いていると更にヨハネス様は続ける。


「私の周りの女共は辺境伯家の肩書きと私の見た目に釣られて気に入られようと媚びへつらう者ばかり。しかし君は初めて会った時、とても迷惑そうにしていた。」


バレてた?

だって本当に面倒だったんだよ。

パン作ってる最中だったし。


「そこで益々君に興味を持った。パン屋に行けば孤児院の子供達が働いていて、更に勉強まで教えていると聞く。この目で確かめたくて先回りして孤児院で待っていれば、やはり私の顔を見た瞬間とても嫌そうな顔をしていた。」


嫌だったんだよ普通に。

何で居るの?って帰れって思ってたし。

どんだけ顔に出てるんだろ私。

商売をする者としてポーカーフェイスは身に付けねば。


「孤児院では自分より年上の子供達に勉強を教えているにも関わらず、物怖じすることなく丁寧に教えていて…。」


それは前世の大人の記憶があるから年上でも子供って思っちゃうだけなんだけどね。


「自分より身分の低い者達にも変わらず対応する優しさに惹かれ、私以外に見せる眩しい笑顔を私にも向けて欲しいと願うようになった。」


そんなあからさまにヨハネス様にだけ笑いかけなかったっけ?

美少年が一生懸命口説いてくれてるんだろうけど…。

結局は能力バラされたくなかったら婚約しろって脅しだからなぁ。

死んだときが25才だったから精神年齢は結構いってるし、いくら美少年でも脅しから入ったからトキメキよりドン引きだよ。


「今も私のことを蔑んだ目で見ている。堪らない。」


なんかヨハネス様ゾクゾクしてるんだけど!

何、変態なの?マゾ?


「君を手に入れる為にはどんな手段だって使う。」


口元は笑っているのに目が笑ってな~い!

めっちゃギラついてる。


そういえば、ヒロインと仲良くなった切っ掛けも自分(ヨハネス)に冷たかったからとかだったっけ?


思いっきり性癖ぶち抜いてしまった訳か!


「ああ…。その冷たい眼差しを、私のことが愛しくて堪らないという眼差しに変えていきたい。」


何か言い出したこの変態。

話が前に進まない。


「あ、あの。ヨハネス様?」


「何だい?シルフィーヌ。」


うわ呼び捨てしだした。

まだ了承してないから!


「ヨハネス様、たまたま私の機嫌の悪いタイミングで冷たくしてしまったことは謝ります。しかし、それで婚約を決めるのは尚早ではないでしょうか?きっと私より素晴らしくヨハネス様の好みに合う女性が他にいらっしゃると思うのです。まだ8才ですし、もう少し考えられた方が宜しいのではないでしょうか?」


自分にだけ笑いかけないって言うからそんなことないですよって満面の笑みでそう言うと


「やはり君の笑顔は私を滾らせてくれる。」


滾る?

冷たくされるのが良いんじゃないの?


「冷たい君も優しい君も全てが愛しくて、他の誰かに盗られる前に私の物にしたいんだ。」


話が通じなさ過ぎだろ。


「シルフィーヌ、どうか私と婚約してくれ。本当なら今すぐに結婚したいところなんだ。」


8才で結婚は無理でしょ(笑)

前世でも子供同士で結婚しよ~って言ったりするのあるけど、こいつはマジだわ。

どうやったら逃げられる?


「シルフィーヌ。取り敢えずお試しでも構わない。学校に入学するまでに私は君を落としてみせる。しかしどう頑張っても、君が私に惹かれることがなかったら婚約を白紙に戻す。受け入れて貰えないだろうか?」


本当しつこい。

入学までに私が靡かなきゃ良い訳でしょ?

いくら美少年でも12才なんてまだまだ子供なんだから余裕かも?


「その代わりに、君の秘密は婚約続行するかどうかに関わらず誰にも言わないと誓おう。」


全く。

神様が変な能力付けてくれたおかげで、変なのに絡まれちゃったじゃないのよ!

神様のアホー!


このままここで話していても先に進めないし、一旦この条件を受け入れるしかないかなぁ。

嫌だけど!


「分かりました。その代わりに本当に12才の入学までに私がヨハネス様に好意を抱かなければこの話はなかったことにしてくださいね?」


あと4年。

付かず離れずで頑張ろう。

相手は子供だし、負けない!!


「シルフィーヌ!嬉しいよ。受け入れてくれて有り難う。」


あんたが拒否権与えないように、かなり強引に外堀を埋めたり脅したりしてきたんでしょうに。


小さくため息を吐く。

嫌そうな顔も隠さない。

私が嫌がってるのバレてる訳だし。


ボンヤリしているとヨハネス様が私の手を引いてベンチから立たせ、歩き出した。


どこに行くの?


何となく引かれるままに着いていったらそこには第二王子。


「アンドリュー殿下!ブリオッシュ辺境伯家長男ヨハネスはたった今カスクルート子爵家長女のシルフィーヌ嬢と婚約致しました!」


何でっかい声で言ってくれちゃってるの!

12才までは白紙に戻す可能性もあるんだから、公にすべきじゃないでしょ!


「そうか。ヨハネス。それは目出度い。祝福しよう。」


第二王子も何か認めちゃったし。

どうなるのよ私…。




お読みいただいてありがとうございます。

毎日0時に予約投稿しています。

宜しくお願いします☆

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