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どうして居るんですか?

パン屋は週に一度お休みがあって、今日はいつも頑張ってくれているエリー、カイル、アニーのいる孤児院にオリゴさんと一緒に作ったパンを持ってやって来た。


この孤児院では赤ちゃんから14才までの子供が生活している。

この国では15才で成人を迎える為、孤児院を出て働かなければならないのだ。

その為に孤児院の中では皆で役割を交代でこなして、一人で暮らしてもやっていけるように生活力を身に付けさせているそうだ。

それでも孤児院を出て働き口を探すのは一苦労で大抵の男子は肉体労働、そして女子は工場内での内職などの大変だけど安い賃金の職場に行くことが多い。

平民の識字率の低いこの国では、読み書きや算術が出来ない者は自由に仕事を選ぶことも難しい。


平民が通える学校を作れたら一番良いのだけれど、私にはそこまでの財力も権限もない。

だからせめて領地の子供達に最低限の読み書きと算術を教えようと、休日はルーと一緒に孤児院に顔を出すようにしている。


孤児院以外の子供達は自分の家の家業を継ぐ者が多いけれど、読み書きが出来ないのは一緒のこと。

こちらは希望者だけ教会に集めて、その考えに賛同してくださった神父様とお母様が読み書きと算術を教えてくれることになった。

あまりにも希望者が多かったから、翌週からはお父様も一緒に教えてくれている。


カスクルート家は子爵家で貴族だけど、商売もしているし地域密着型なの。

それに領地の子供達の識字率が上がれば、やれる仕事も増えるから未来投資に繋がるってお父様も賛成してくれた。


身内自慢になっちゃうけど、本当に良い両親を持てて幸せ。


ルーは自分より小さい子達を集めて絵本を読み聞かせて、絵本の文字を耳から教えてる。

私はその他の大きい子達に読み書きと算術を教えて、分からないところは質問を受けたりしてる。


それで今日もパンを持って孤児院に来たのに、孤児院の前につい最近見たばかりの馬車が止まっていた。


あれってブリオッシュ辺境伯の馬車だよね…。

どうしてうちの領の孤児院に?


嫌な予感がするけれど、エリー達がパンを待ってる。

行かない訳にもいかないから、重い足を引きずってドアを開ける。


「やあ、シルフィーヌ嬢!」


あぁ、やっぱり。

どうして居るんですか?

ヨハネス様…。

しかも何でそんな笑顔…。


ヨハネス様って笑わないんじゃなかったの?

学校に上がるまでに何か笑わなくなる切っ掛けがあったのかな?


固まっていると目の前までやってきたヨハネス様が私の手を取って建物の中に引き入れた。


「ごきげんよう、ヨハネス様。」

なんとか挨拶を口にする。


ルーはヨハネス様に懐いたみたいで、嬉しそうに話しかけてる。

どうして居るんですか?って聞いてもいいかな?

失礼かな…?


そう思っていると、聞きたかったことを答えてくれた。

もしかして心が読める?

そんな訳ないよね。


「この間、カスクルートのパン屋に行った時に従業員の女の子に君達兄弟が週に一度孤児院で字の読み書きや算術を教えてるって聞いたんだ。それで一度覗いてみたくてね。」


誰よ~!

ヨハネス様に余計なこと言ったのは!


チラッとヨハネス様の後ろに目を向けるとアニーが手を合わせて『ゴメン!』てしてる。

アニ~!


でも来てしまったのは仕方ない。

いつも通りに皆に教えるしかないね。


パンを院長先生に渡して、ルーと私で二手に別れる。


ヨハネス様は最初ルーの方を見て、次に私の方を見に来た。


パン屋で孤児院の子供達を働かせているのを見て、興味を持ったそうだ。


子供が家業を手伝って店頭に立つことも珍しくないけれど、率先して孤児に仕事を与えるところは少ない。

それなのにカスクルートのパン屋では孤児を雇っているし、領主の姉弟は孤児院で読み書きや算術まで教えてるって言うし、更に領主であるカスクルート子爵と奥方も平民の子供達に教えているらしい、ということまでアニーから聞いたらしい。


はぁ…。

私の周りにはお喋りが多いのかな?


いつも通り勉強を終えて、皆でパンを食べる。

少し余分目に持ってきたからヨハネス様の分もある。


「やっぱり君のパンは美味しいね。」


「私のじゃないですよ。カスクルート家のパンです。」


「そうだったね。でも本当に美味しい。」


ヨハネス様が本当に美味しそうな顔で言うから私も素直に嬉しくなる。


「ありがとうございます。」


「そういえば、この後はどうするんだい?」


「この後はですね、皆で遊びます。鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり。」


「それは楽しそうだね。私も一緒に遊んでも良いかな?」


嫌です!って言いたいけど、ルーが「勿論です!」って大きな声で返事しちゃったよ。

まぁ断れないんだけどね!


かくれんぼをすることになって、ルーが鬼になった。


皆でバラバラになって隠れていると、ナンシーがやって来て、見たことがない子供の妖精を連れてきた。

周りに人が居ないことを確認して隠れながら小声で話しを聞いていると、どうやら最近生まれたばかりらしい。

それで、挨拶に来てくれたんだって。

週に一度は来れる限りここに来るから宜しくねって私も挨拶した。


かくれんぼも終わって、次はダルマさんが転んだをやろう!ってなって、ヨハネス様がそれ何?って聞いてきた。


前世の子供の遊びだけど、そう説明する訳にもいかないから外国の遊びですって説明した。

皆でワイワイ楽しく過ごすことが出来た。


そろそろ帰る時間になって、子供達にお別れの挨拶をして建物を出る。


ヨハネス様が、

「また来てもいい?」

と聞いてきて、やっぱりルーが「勿論です!」だって。


良い奴っぽいけど勘弁してよ。

攻略対象者とは深く関わりたくないんだよ。



お読みいただいてありがとうございます。

毎日0時に予約投稿しています。

宜しくお願いします。


いよいよ次話は8才のお茶会です。

マリアンナのフラグを無事に折ることは出来るのでしょうか?

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