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創造のその先へ  作者: 隠/陰
序章
4/9

004. ヘルマの使徒

序章も残す所、二話となります。

今回は一応、ヒロインキャラの初登場回となります。

誤字脱字、文法誤用などありましたら御指摘をお願いします。








「貴様! そこで止まれ! それ以上近付こうものなら問答無用に叩き斬ってやる!」



 もしも神が居るのなら、俺の今の状況を端的に、そして簡潔に教えてくれないだろうか。

 ウキウキ気分で歩いてた俺に。


 先遣隊のようにやってきた騎士風の男たちに囲まれること数分。言われた通りに微動だにしなかった。

 そして遅れて到着した馬車。

 到着を確認した男たちの中で一番偉そうな人、つまりは鎧だけではなく外套を(まと)っている男なんだが、馬上から華麗に降り立ち、こちらを睨め付けながら馬車へと近付いて行った。



「ヘステバン様、(くだん)の者は如何致しましょう」


「そう警戒するでないマルク。彼の者はそなたらに囲まれても何もせなんだではないか」



 馬車からそう声を上げながら見事な意匠の施された服を着て、柔和な笑顔を浮かべたおっさんが出てきた。



「ヘステバン様! 馬車より出られるのは危険でございます! 御身に何かあっては!」



 どうやらマルクと呼ばれた騎士長風の男と恰幅のいいおっさんの会話からして、このおっさんは結構な存在のようだ。

 それにしてもヘステバンなんて家名の貴族っぽいキャラクター居たっけな。

 どの国家にもヘステバン家という名前は存在しなかった気がする。

 流石にフレーバーテキストまでは覚えていないから確証はないが。



「良い。私が直に確認したくなったのだ。遠目では分からなんだがあの服飾。到底我が国の職人では再現することは出来まいて。ともすれば何処(いずこ)かの国の王族、ないしは高貴なる身分の方であろう。して、皆の者よ。そう構えるでないと言ったであろうに。今すぐに警戒を解かれよ」



 おっさんによる鶴の一声で俺を囲んでいた男たちは迅速に剣を抜き放てる体勢を解いた。


 おっさんが値踏みするかのようにこちらを見てきた。

 これって、もう発言してもいいんだよな。



「あ~。ヘステバン様、でしたっけ? 俺はしがない旅人、流しの詩人をやっています。名をクォートと言います」


「貴様ぁ! 許しを得ずに声をはっ」


「良い! 良いのだ。マルク」



 柔和な顔からは想像もつかない大音声に少しびっくりしてしまった。

 だが、このやり取りでマルクさんは信頼しても良い人だと思えるな。友好的な関係であればだが。

 忠誠心の(たか)さが分かるとはこういうことなんじゃないかな。



「とんだ失礼を致しました。私の警護が彼の者の役目であり、彼はその任を全うしようとしたまでなのです。従って彼の責任は主人である私が負うのが世の常でありましょう。ですので今後クォート様のいかなる要請へもお応えする代わりに、ここはご容赦願えませぬかな」



 このおっさん。言葉遣いからして貴族なのは確実だろう。

 そうでなかったとしたら、貴族社会に籍を置く人物ってとこだな。


 まぁ別に臨戦態勢の騎士に囲まれていても死ぬような恐怖は感じなかった。

 なんとなく大丈夫な気がしたんだよね。

 見た感じ装備が弱い。俺の装備に比べれば惰弱だ。


 一方的に恩を売れるんだから乗っておいて損はないか。

 おっさんの目的、思惑が不明だから博打にはなるけどな。



「別に構いませんよ。もし俺が逆の立場だったら同じことをしたはずですし」



「神ヘルマの慈悲に深き感謝を。さて、クォート様。こんな場所では落ち着いて話など出来ますまい。なので、どうですかな? 私の馬車にご一緒しませぬか」


「ヘステバン様!」


「なんだ? マルク。今の会話を聞いてもなお、この御方が危険であると申すのか? そなたの人を見る目を疑わねばならぬかな?」


「あっ、いえ。そのようなことは……ありませんが……」


「ならば問題あるまい。さぁ、では参りましょう。クォート様」



 馬車へ近付きながら横目にマルクさんを見てみたが、まだ何か言い募ろうとしているようだ。

 だがおっさんが颯爽と馬車へと入り、俺を誘導している姿を見、深い溜め息を吐きながら馬へと向かって行った。

 多分、普段からこの自由奔放なおっさんに振り回されているんだろうな。

 俺の良く知る友人の後ろ姿が重なって見えた気がした。



「その方が魔力溜まりにいらっしゃった方ですか?」



 馬車へと乗り込もうとした時、おっさんとは似ても似つかない、可愛らしい鈴の音のような声が聞こえてきた。

 娘でも一緒に連れているんだろうか?



「そうでございます。ミューヌ様」



 様付けか。おっさんが敬称を付けて呼ぶってことは、中の人物も同等の存在ってことだな。

 ちょっと乗りたくなくなってきた。

 誰が好き好んで、固そうな会話をアウェーな状態で楽しめるんだ。

 人との会話に飢えている俺でも願い下げたい。


 とは言え、既に手を戸口の内側へと滑り込ませてしまっている。

 ここで引くのは失礼にあたるんじゃないだろうか。

 貴族社会に詳しければ良かったんだがな。



「はじめまして。私は至元(しげん)の塔の管理者代理。サーサリア・ネイン・ミューヌと申します。あなた様のお名前は?」



 至元の塔? なんか聞き覚えがあるな。

 どこで聞いたんだっけかな。

 とりあえず名前を聞かれたわけだし、答えながら乗り込むとしますか。



「これはご丁寧にどうも。俺はジルベルト・クォート《創造(ザ・クリエイション)》です」



 長年の習慣によって自然と定型文を口にすることが出来た。

 《壱拾(じゅう)》の保持者や、ユニークスキル保持者は自身の名前の他に二つ名を一緒に名乗るのがネチケットだったんだ。


 名乗りながら相手である声の主へと目を向ける。

 そこには燃えるような紅のローブに身を包み、透き通るような白髪の可憐な少女が居た。

 見惚れるように少女を見つめてしまったのだが、彼女は息を飲みながらその口元へ両手を持っていき始めていた。そしてその淡く、深い空色の瞳に涙を蓄え始めてしまった。



「お、おい。どうしたんだ。俺なんかマズったか!? おっさん!?」



 こんな可愛い女の子に急に泣かれることなんて、一度たりとも経験したことがない。

 俺は自然におっさんに助けを求めてしまった。流れるままに。



「お戻りになるのを……心よりお待ちしておりました…………。マスター」



 決壊寸前だった瞳のダム。

 その言葉と共に涙は零れ落ち、柔らかな日差しを反射しながら、白磁のような肌を流れ落ちていく。


 何も出来ないまま白銀に輝く塊が俺の胸に飛び込んで来ていた。



「ほっほっ。これはこれは」








あくまでも私のイメージですが、

ヘステバンは高貴な身分のトル○コのような人物です。

あくまでも私のイメージですよ。


ローグライクゲームが好きなものでして。。。


※ 2020/05/09 漢字のミスを修正。壱十→壱拾

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