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創造のその先へ  作者: 隠/陰
序章
3/9

003. 目覚め

序章連続投稿三日目です。

誤字脱字、文法誤用などありましたら御指摘お願いします。






 柔らかく、暖かな風に頬を撫でられ、俺は心地よい眠りから覚めた。



「う~ん。なんか変な…………。夢を見てた気がするな。朧げにしか思い出せないな……」



 春の新芽たちがなだらかにそよぐ風に吹かれ、その若くも力強く、微香を放っている。

 気持ちを落ち着けるには十分な薫りだ。


 三六○度、見渡す限り深く苔生した絨毯のような草原が広がっている。

 小高い丘、そして碧く、どこまでも深い空。快晴だ。


 どうして俺はこんな何もない原っぱのど真ん中で眠っていたんだろう。

 ここはどこなんだろうか。

 本来ならチュートリアルクエスト満載の初期村にスポーン。出現するはずなんだろうけどな。


 それにしてもこれは想像していた物を遥かに凌駕(りょうが)している。

 まさかこれ程までこだわるとは思ってもみなかった。


 完全なる感覚の再現。

 そう言って差支えない程の完成度。

 風も揺れる草も、肌に触れる服の感触も。何もかもがリアルだ。

 これが本当にVRなのか。仮想と現実の境目が全く分からなくなる。


 そよぐ風の肌を撫でていく感触。

 植物の放つ芳香を感じる嗅覚。

 陽の光による心地よい暖かさ。


 異世界だと言われても疑うことすら馬鹿馬鹿しく思える程の完成度。

 何度でも言ってやる。この完成度は常軌を逸しているだろう。



「ほんとにすごいとしか言いようがないけど、こんな場所にほっぽりだすのはダメじゃないかな~。せめて村が見える位置とかじゃないと詰むだろ。常識的に考えて」



 どれだけ周りを見渡してみても、人の営みの「ひ」の字も、「い」の字すら感じ取ることが出来ない。

 感覚的におよそ二十キロ先まで見えているが、点在する林以外には何もなかった。



「は? ちょっと待て。いやいや、くっきりと見えすぎじゃないか? 情熱的に考えて」



 確かにゲーマーの癖して現実での視力は良い方だった。

 だが、裸眼で二十キロ先を細かく観察するなんて不可能だ。どこの部族出身者だよって話になる。

 でも今ではそれを自然と、それこそ呼吸するかの如く自然に行っていた。

 まるでずっとそうしてきていたように。



「もしかして感覚が増幅、ブーストされてるのか?」



 俺は考えた仮説を確かめるために目を閉じた。

 そうすることで視覚以外の感覚を研ぎ澄ませると思ったから。

 集中して微かな音を聴き取ろうとする。



「これは驚いた。視覚を遮るとその分の能力を別の感覚に充当出来るんだな」



 小さな虫が土を踏みしだく音。


 地中で寝ている小動物の心拍音。


 それらを確実に聴き分けることが可能だったのだ。

 それこそ世界と深く、まるで一体になって繋がったかのような全能感を感じられる。

 音のみで悪と戦うヒーローが居たけど、この世界ならなることが出来るだろう。


 俺は続いて匂いを感じ取ることに集中する。


 先程までは微かにしか感じられなかった。青臭くも決して不快ではない、植物の薫り。

 それがどうだ。今では植物の種類ごとに匂いを嗅ぎ分けられるし、同じ種類でも個々の微量な違いさえ感じ取られる。

 絶対に臭いものは嗅ぎたくない。死んでも嫌だ。

 いや、多分だが嗅いだらバッドステータスで死ねる気がする。


 そんな風に現実では体験することの出来ない経験に俺は没頭していた。

 だが不意に強い空気のゆらぎを感じた。


 方角が分からないから便宜上、俺の正面方向から左後方とだけ言っておこう。

 その道に通じる人たちには○八方向とでも言えば良いのだろうか。



「なん……だろう…………。さっきまではなかった匂いだな…………。人……かな? あとは、この音は馬だな……」



 その突如現れた気配。

 姿を確かめるために俺は目を開け、感じた気配の道筋を辿るように振り返った。


 距離にして三キロ程度だろうか、そこには十七名の騎士のような一団が見えていた。

 その一団に続いて何も存在しないはずの空間から見栄えの良い馬車が這い出てきた。

 まるで縦に水面でもあるかのように波紋が広がっている。

 なんて綺麗な光景なんだろうか。スクショ機能はないんだろうか。



「あんな魔法見たことがないな。てことは新たなNPCなんだろうな」



 確かにTWOでも空間魔法という魔法は存在した。

 ただ、それは物の時間を操作する魔法であり文字通り《空間》を操るような物ではなかった。

 なんで空間魔法って名付けられたんだっけな。思い出せない。


 一体どういう仕組みなんだろう。

 あの水面みたいなのを(くぐ)ると違う場所に繋がっていたりするんだろうか。

 それとも姿が見えなくなるんだろうか。

 知りたい。とても知りたい。


 一団は周りを警戒しながらも明らかにこちらへと向かってきている。

 彼らの意図が分からないが、ようやく何もない原っぱで対話が出来そうな人たちが来たんだ。

 これは天からの思し召しだろう。

 一番近い村まで送って貰えという。


 実際問題、聞きたいことも何個かある。

 これは彼らがここに来るのを待つよりは、俺からも近寄るべきだろうな。

 なんと言っても早く会話をしたい。


 たとえNPCだとしても何もない原っぱを歩き回るよりは楽しいはずだ。


 旅は道連れ、世は情け。だったかな?

 きっとボッチの俺を見かねて近寄ってきてくれてるんだろうからな。






ここらへんまでは私が好きな「なろう」作品の流れを踏襲する意識で書いてみました。

如何だったでしょうか? それっぽいVRMMO物感が出ていれば嬉しいです。


次回移行は徐々に私が本来好きである、

本格ファンタジィ世界へと移っていければと思っています。

(保険としてですが、

  私がそれを表現できるとは言っていません。思っていません。

  努力はすごいしてると思っています。

  なんたって壮大なケルティック音楽聴きながら書いてますから!


※ 2020/05/09 漢字のミスを修正。積む→詰む

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