第9話 宿屋の娘
俺は夢の中で、城塞都市エリッヒの、
アフマンさんの宿屋の納屋という、
寝床を手に入れた。
まぁ、宿泊用の部屋じゃ無いから、
足りない備品を、
運んで貰うのを待っている所だ。
「宿屋の者でーす。
開けて貰えますかー?」
少しでも広く使おうと、
道具を片付けていたら、
女の声が聞こえた。
アフマンさんより、若い声だ。
ドキドキだ。
「はい、今開けます。」
木製の扉を開くと、
大きい垂れ犬耳を持ち、
動物系の可愛い顔立ちの少女が居た。
オーバーオールではなく、
軽装だか革製の鎧を着けている。
だが、それでも隠しきれない二つの果実!
うん、アフマンさんのご息女に違いない!
「えっと、アフマンさんの娘さんですか?」
「そうですけど、退いて貰って良いですか?」
ちょっとご尊顔を眺め過ぎたかもしれない。
あと胸も。
「あ、すいません。
見蕩れてしまいました。」
こういう時は、素直に白状するに限る。
ノリがいい子なら、
暫しの立ち話も出来るだろう。
彼女は納屋の中に入り、荷物を置いていく。
彼女の武器は、
腰の後ろに差してある短剣2本だろうか。
短剣と言うには長いけど。
「……これがトイレです。
明日の朝食後、
あっちにある勝手口の近くに置いておいて下さい。
毛布ですが、汚さないで下さいね?
食事はこの中に入っていますから、
食べ終わったら、
こちらも勝手口に置いておいて下さい。」
満面の笑みで言われました。
可愛い……けど、怖い!
いや、可愛い!!
髪の毛を少し脱色しているのか、
アフマンさんより、
かなり薄い茶色をしている。
光の加減で金髪に見えなくも無いだろう。
「そんなに綺麗ですか?」
青い瞳を合わせてくれたので、
凝視してみた。
「えぇ、とてもお綺麗です。」
本当は可愛いと思っていたが、
本人が綺麗と言って欲しそうだからな。
「お母さんの言う通りの人ですね。
私は冒険者パーティ白黒のリーンです。
力尽くとか、考えない方がいいですよ?
それでは。」
「私はトモエと言います。
運んで頂き、
ありがとうございました。」
彼女は扉から出ると、閉める前に、
微笑みながら、こちらをチラッと見てくれた。
可愛い!!!
看板娘に籠絡されそうだ。
まぁ、既にされているんだけど!