第52話 治療院
俺達はケフの大森林の冒険を終え、
ゴブリンの被害者達を運んでいる。
「あ、着きました。
この建物です。」
城塞都市の中を進むと、
治療院に到着したらしい。
何度か曲がったから、
場所はよく分からない。
木製の表開きの扉がある建物で、
扉は馬車ごと建物の中に、
入れそうな大きさだ。
色は黄色を主体としており、
3階建ての高さがある。
アフマンさんの宿屋と同様に、
建物自体が地面より、段差二段分程高く、
その差にはスロープが置いてある。
案内をしてくれた女ギルド職員が、
扉を開けてくれる。
ニースちゃんは、馬車を操り、
そのまま一階に進めていく。
一階の中程に、カーテンが掛かっており、
奥が見えない様になっている。
階段も見えないから、
此処は馬車などの出入り口なんだろう。
「門番の方々は、ここまでで大丈夫です。
お疲れ様でした。」
女ギルド職員がそう言って、
荷台の帆を支えていた、
門番達を帰していく。
「ありがとうございました。」
フレンダさんが代表してそう言うが、
門番達は顔色を悪くして、
手を上げるだけだった。
帆が外されて、
彼らの表情が悪かった理由が分かった。
悪臭がしている。
酸っぱい様な、腐った様な、
不快な匂いだ。
女ギルド職員が慌てて、
治療院の扉を閉める。
「クラリスさんは一階に、
後の子は二階に運んで貰えますか?」
「トモエさんは、
座って休んでいて。」
フレンダさんはそう言って、
ミルクさんとクラリスを運んで行く。
カーテンが捲れると、
奥にはベッドが幾つか見えた。
一階に他の滞在者はいないらしい。
「分かりました。」
まぁ、ずっと座っていて、
休んでいたんだけどね。
ほぼ全裸の女の子達を、
俺が運ぶのは躊躇われたので、
言われるがまま、
俺は御者台で休んでいる。
扉が僅かに開くと、
一組の男女が入って来た。
所々に赤黒い染みが付いた、
ややピンク色のオーバーオールを、
身に着けている。
おっさんは頭部がツルッツルで、
おばさんは髪に白が混じっている。
獣耳は無いが、
二人とも腕がフサフサしている。
二人が持つ大きい革製の鞄には、
溢れるばかりに、
布きれが入っている。
「ご苦労様。
こんなに大人数じゃ、
人手が足りん。
暇なら手伝ってくれ。」
おっさんに手でクイクイと呼ばれる。
「リーダーに入って来るなと、
言われました。」
「え?君って冒険者?
なら、手伝わなくて良いよ。
彼女らを助けてくれて、
ありがとう。」
おばさんに感謝されたのは良いんだが、
一体俺は何に間違われたんだ?
「お疲れ様です。」
暫し待っていると、
最後の女の子も二階に運び終わり、
リーンちゃんとニースちゃんが戻って来る。
「いえ、私達は運んだだけですから。」
少し顔色が悪いが、
二人は鎧に付いた血や肉片を、
布で綺麗に拭き取り出す。
漏れ聞こえる声から、
フレンダさんとミルクさんは、
クラリスの治療を手伝っているらしい。
「あとは治療院と魔法使いに任せるから、
私達は冒険者ギルドに行くよ。」
「「分かりました。」」
戻って来たフレンダさんの掛け声で、
俺達は冒険者ギルドに向かう事になる
この二人も少し顔色が悪くなっているが、
リーンちゃん達よりは元気そうだ。
俺達は冒険者パーティ白黒の共用馬車に乗り、
冒険者ギルドに向かっている。
フレンダさんとミルクさんは、
鎧に付いた血や肉片を、
布で綺麗に拭き取っている。
「冒険者ギルドでは、
何をするんですか?」
会話も無い馬上に、
居心地の悪さを感じてきたので、
そんな事をフレンダさんに聞いてみる。
「トモエさんの、
パーティメンバーの申請よ。
報酬の話になる前に、
やっておかないと、
面倒な事になるから。」
そういえば、ゴブリンロード戦は、
フレンダさんとの、
野良パーティという扱いになりそうだ。
獲物が強かったから、
「新人が着いて来ただけ」と言い訳しづらい。
移動に使った荷馬車を、
ミルクさん達が守っていたから、
そちらの事も考慮しないと、
いけなくなる。
確かに、面倒な話になりそう。
パーティメンバーにしてしまえば、
全てパーティの活動に出来るし。
「冒険者ギルドの承認、
取れますかね?」
「なんとかなる!」
フレンダさんは自信満々に言うが、
さっき女ギルド職員と、
話していた内容と違うよっ!




