第5話 初めての収入
俺は夢の中で、此処がどんな世界なのか、
情報を集めている。
城塞都市に入場する列に並びながら、
前に並んでいたおばさんに話しかけてな。
「この都市は入市税払わないと入れないよ?
まぁ、その服売れば、
結構な金額になりそうだけどね。」
「お姉さんが買ってくれますか?」
ここで「おばさん」なんて呼ぶ奴はいないよな?
歳取った女は若く見られたいし、
若い女は落ち着いて見られたいものだ。
「私が?うちは宿屋で服屋じゃないからねぇ。
まぁ、どうしてもって言うなら、
考えなくもないけど。」
つまり、評価額よりかなり安いなら、
買ってやるよって事だな。
「街に入れたら、
お姉さんの宿屋に泊まらせてくれませんか?」
「うちは男禁止の宿屋だよ。
納屋なら、まぁ、いいけどさ。」
納屋か。
今、太陽の位置から考えると、昼頃だよな?
それでこの寒さ、しかも服売ったら下着だけだぞ。
寒そうだ……。
いや、寝る場所がない方が困る!
夢も中々目覚めないし。
「お願いします。お姉さん。
色々失って、困っているんです。」
「いい加減、お姉さんなんて辞めてくれよ。
買ってやるし、泊めてやるから。
恥ずかしいったらありゃしない。」
なんで照れてるだよっ。
ばばあに興味は無いぞ!?
「ありがとうございます!
大変助かります!
このお礼はいつか必ずさせて頂きます!
……それで、いくら位になりますか?」
おっと、つい社風が出てしまった。
何でもかんでも、でかい声、
強いイントネーションで話せば良いってもんじゃ無い。
「そうさねぇ。
宿泊料を先に貰うとして、
上着一枚、銀貨4枚でどうだい?」
銀貨って、何?
交換比率は如何程?
まぁ、上着だけでいいなら助かるけど。
「えっと、銭貨5枚を銀貨で払うんですか?」
まぁ、銭貨って言う位だから、
銀貨より下だろう。
また、銅貨では無く銭貨って言う事は、
銅貨もあるんだよな?
「銀貨1枚分は銅貨で払うから、
心配しなくていいよ。」
つまり、所持金は銀貨3枚と、
銅貨数枚になるって事だな。
「それで、服屋で売ったら幾らになりそうですか?」
笑みを浮かべて聞いてみる。
一応、価値を知っておきたい。
「あと銀貨2枚は付くんじゃないか?
貴族用の服だろう?」
貴族もいるのか。
そして俺は貴族用の服は着ていても、
貴族には見えないと。
まぁ、貴族とか言う特権階級なら、
列に並んだりはしないか。
「売ります!」
このおばさん、娘とかいないかな?
とっても可愛い娘とか!
「即決だねぇ。
他の商人に聞かなくて良いのかい?
もっと高く買う人もいるよ?」
「男子禁制って事は、
寝ている時に襲われたりしなさそうですし、
良い宿屋の納屋に泊まれるなら、
銀貨2枚の損は受け入れます。
寧ろ、数日泊まりたい程です。」
「……こっちがやられちゃったかな?
まぁ、納屋なら何日泊まったっていいけどね。」
言質、頂きました!
安全に眠れるって大事だよな。
「色々とやっているので、
商売事があれば、よろしくお願いします。」
まぁ、色々やって楽しむ方がいいよな?
冒険者に拘って、交易をしなかったり、
商人に拘って、戦いをしなかったり、
実に勿体ない!!
「寒いです。」
パジャマの上着を脱いで、
おばさんが首元から取り出した、
麻の袋(多分)に入っていた硬貨と交換する。
財布ってそこに仕舞うんですね。
そして、見えそうです!!
……銀貨3枚と銅貨10枚。
これが俺の全財産だ。
交換比率は1対10らしい。
こんな単純な交換比率でいいのか心配だが。
「男なのに弱っちいねぇ。
まだ暖かい方だろ?」
「そうですね。」
これで暖かいのか。
平均気温が低そうだ。