第4話 初めての住民
俺は夢の中で、「空を飛ぶ」ことを楽しんで居る。
まぁ、数十センチしか浮いてないけど。
いやー、加減が難しいね!
移動スピードが速過ぎると、
強風で息が出来なくなるし。
城塞都市、いや砦なのかも?
焦げ茶色の壁がぐるっと何かを、
囲っている様に見える。
まぁ、壁の外にも建物見えるけど。
壁には等間隔に尖塔が見えるし、
周囲を見張っているのだろう。
壁の外は広範囲に、畑が続いている。
巨大な畑の中心に街があるみたいだ。
流石に何が実っているかは分からないが、
薄茶色の実が実っている。
こんなに寒いのに、
収穫時が近そうな穂先だ。
まぁ、寒いのはパジャマしか、
着ていないからかもしれないが。
さて、そろそろ畑に近付くから、
支配(対称性)の効果を解除して、
地面に降り立つ。
裸足だから、出来れば道を歩きたいんだが、
見当たらない。
いや、畦道はあるんだけどね!
足、汚れそうじゃん?
でも、作物を踏む訳にもいかないし、
我慢して土の上を歩く。
……結構湿っていて、感触が気持ち悪い。
暫し歩くと、農作業中の住民が、
見分けられるようになった。
元は白色であったであろう、
オーバーオールみたいな衣服を着ている。
うん、それだけ!
色々と大事な所が見えそうだっ!
こちらに気付いた住民もいるが、
特に話しかけられる様な事もなく、
街に近付いていく。
畦道の近くにいれば、
こっちから話しかけたんだけどな。
まぁ、行き当たりばったりを楽しもうじゃないか。
街を囲う城壁まで辿り着いたが、
壁に入口がある訳も無く、
城壁に沿って歩いて行く。
壁は三階から四階建て程度の高さがあると思う。
結構高いし、揺れたりもしていないから、
厚さもあるんだろうな。
それに、元々焦げ茶色という訳では無く、
灰色の石材を積み上げて、
何かを塗っているらしい。
所々、禿げて地肌が見えている。
……やっと道が見えた!
まぁ、踏み固められただけみたいだが。
道には人が並んでいる姿が見えるから、
その列の先に門があるんだろう。
身分証とか、求められたりするかな?
え?人?
ファンタジー……。
動物の耳が見えます!!
列の最後尾へ並びに向かうが、
なんかじろじろ見られる。
まぁ、こんなにカラフルな服を着た獣人、
見当たらないからな。
近付くと、別に皆が皆動物の耳が、
付いている訳では無いらしい。
耳は付いていないが、
首が毛むくじゃらとかもいる。
なんというか、大分混血が進んだみたいな?
まぁ、元からホモサピエンスみたいな人間が、
いない夢の世界なのかもしれないが。
最後尾に着き、早速情報収集だ。
最後尾は大きい垂れ犬耳が付いているおばさんだ。
茶髪に青い瞳、耳の中心部は白い毛で覆われている。
まぁ、率直な感想は邪魔そうな耳、だな。
顔は動物系、可愛いらしい感じだ。
小さく纏まっているというか。
オーバーオールを押し上げている胸は、
中々の物だ。
彼女が若ければ谷間を凝視していただろう。
大きい袋を複数周りに置いている辺り、
街で何かを売るか、仕入れた帰りだろう。
「すいません。
此処に並べば街に入れますか?」
言葉を発してから、気付いた。
日本語、通じるよな?
時々、英語しか通じない夢とか見るんだが。
「よそ者は、銭貨5枚だよ。」
声は歳を感じるが、
それでも若さを失っていない。
あと20年、若ければな。
通行税があるって、ファンタジーの定番だが、
現実でそんな事したら、
人が寄りつかなくなりそうだ。
「持ち物がある様に見えますか?」
手荷物も何も無いから、
命からがら逃げてきた設定にする。
「……ギルドに登録してるかい?」
ちょっと、警戒された気がする。
まぁ、当たり前だけど。
さっきまでの声は、
よそ行きの声だったらしい。