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ピンク色の教科書~1~

1月28日

天候 :雪が降りそうで降らないから俺は悲しいです!

記録者:鳥海

 さて。

「ど、どうしてこうなった……?」

 珍しく鈴本が顔引き攣らせてるのを見つつ、俺達は1つの段ボール箱を前に、全員が全員、それぞれに静かに、『どうしたこうなった』て考えている。

 俺達が囲んでいる段ボールの中には、こう、そういうね!いわゆるエロ本って奴が大量に詰まってるんだなー、これが!

「え……化学の本が、エロ本に、化けた……?」

 ね。元々この段ボール、要らなくなった書籍とか入れてゴミ捨て場に置いたはずなんだけどなー、なんでだろうなー!




 ありのまま起きた事を話すぜ!

 この学校は今、入試前ってこともあって大掃除の真っ最中!年末にやれよと思わないでもないけど、ま、しゃーなししゃーなし。

 そのついでって事で、部活棟に補修工事入ったり、課外学習棟でバルサ○焚いたり、体育館の雨漏り直したりも同時に行われる中!我らが刈谷君が図書委員としてお世話になっている図書室でも大掃除が開催され!それに伴って、我ら化学部は!古い科学雑誌だの科学関係の書籍だのを大量に貰うことになった!

 ……多分、捨てるのが忍びなかったんだと思うんだけど、幾らなんでも段ボール2箱分まとめていきなり押し付けられても俺達困りますわ。うん、いやマジで困った。

 司書さんも俺達が困る事は前提で、『要らなかったら捨ててくれ』みたいなこと言って、段ボール置いてってくれちゃったんだよね。うん。こっちには図書委員の刈谷が居るから、司書さんに強く出られないんですわ。というか刈谷抜きにしても、司書さんに強く出られるメンタルある奴なんて居ないんですわー。

 ……しょうがないからざっと見て、要る奴と要らない奴に分けて、要らない奴はまとめて箱に詰めてゴミ捨て場に捨てた。これがまた、あちこちの大掃除に伴ってゴミ捨て場も大変なことになってて何かと大変な作業だったけど、まあ、なんとか。

 ところが。

 ここで俺達の行動にうっかりミスが発覚。なんと俺達、要らない奴じゃなくて要る奴の方をゴミ捨て場に出しちゃったことが今日発覚!このままだとゴミだけ手元に残って残したかった奴が捨てられる!

 ってことで本日、部活でもないのに集まってるんだなー。それで今日、大急ぎでゴミ捨て場に行ったら、資源ごみの回収はまだだったから、そのまま段ボール残ってて、それをそのまま持って帰ってきて……開けたら『中身がすっかりピンク色に染まってやがった』。

 何を言っているのかわからねーと思うが、俺もなにをされたのか分からなかった……。

 頭がどうにかなりそうだった……というかなってる……全員なってる……。

 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!


「……一応、確認しますが」

「うん」

「元々、捨てた本がこうだった、ということは……つまり科学の本、ということで、人体の神秘を取り扱った本を大量に寄付されていた訳ではありませんね?」

「ある訳ないでしょ馬鹿じゃないの?図書室にエロ本置いてある?」

「ないでしょうねえ」

 うん。無い。というか、本の選り分けしたの俺と刈谷と加鳥だけど、そんなの無かったよ。あったら既に舞戸さんを除く全員で見てると思うわー。うん。

 あ、ちなみに今、舞戸さんは居ません!段ボール開けた瞬間にめっちゃ機転利かせた鈴本が舞戸さん追い払ってくれた。咄嗟に出た追い払い方が「ところで舞戸、悪いがちょっとそこの窓から飛び降りて当分戻ってこないでくれ」だったから、舞戸さんめっちゃ衝撃受けてたけど。

 ま、その衝撃のお蔭で段ボールの中身の確認は有耶無耶にして、そのまま俺らはデュエッ!に入るふりして、舞戸さんだけさっさと帰宅させられたんで丁度良かったんだけどね。うん。(舞戸さんはデッキ持ってないから俺達が決闘し始めると蚊帳の外になるんだわ。ちょっと可哀相だけど)

「っていうかこれって、単にゴミ捨て場から間違えた段ボール持ってきた、ってことでしょ?さっさとこれ戻して科学雑誌の方持ってこないとマジで捨てられるんじゃないの、雑誌」

 羽ヶ崎君が言うことは尤もなんだけどね。ね。

「いや、そう思ってもう俺が確認に行ったー。でも他に本が詰まってる段ボール、1つも無かったよ」

「もう収集されちゃったんですか!?」

「他のゴミは残ってたから、ゴミの収集はまだなんじゃないかなー。でも雑誌の段ボールは無かった」

「……そんなに科学雑誌欲しい人、居る……?」

「いや、角三君。普通に考えれば恐らくその誰かが、こっちの箱と俺達の箱を間違えて持って行ったんだろう。箱自体は同じ段ボールみたいだからな」

 そう。何が問題を複雑化させてるかって、もうゴミ捨て場に俺達が出しちゃった科学雑誌の箱、無かったって事なんだよねー。

 奇遇も奇遇、丁度学校で備蓄食料か何かの入れ替えしたらしくって、その段ボールが大量に出たもんだから、司書さんも俺達も、その段ボール使って雑誌の仕分けしたんだけどさ。エロ本を仕分けてくれたどこかの誰かも同じ段ボール使ってたみたいでさあ……。いやー、参ったね。


「……で、これ、どうする?またゴミ捨て場に置くか?何も見なかった事にして……」

 鈴本がめっちゃ及び腰なんだけど、まあ、それが一番いいかなー?

 ……と、思ったんだけどね。

「いや、それはお勧めしません」

 社長がそう言った。

「……いいですか?もし、資源ごみの回収に際して誰かがこの段ボールの中を見たら、当然、大変な騒ぎになるでしょうね」

「まあ、学校にこんなに大量にえっちな本があったらそうもなるよねえ」

 うんうん、とか加鳥が頷いてるけど、現にあるんだよなー?

「そして、この本を出したのはどこの誰だ、という話になります」

 ……まあねー。うん、なんかこの流れ、この間もやった気がするなー?ガラスのフルートの下りで。

「つまり、俺達に濡れ衣が着せられるということになります」


「……やだ」

「まあ嫌ですよね。俺も嫌ですが」

 まあ、俺達、花の男子高校生だからね!エロ本を学校に大量に持ち込んだ濡れ衣とか着せられたくないよね!やだー!

「しかもこちらはインドア根暗変人狂人集団ですからね。申し開きはできないでしょう」

「最悪だな」

「狂人は社長だけでしょ」

「うわー、なんで俺、ここに居るんだろ……うわー……」

「うーん、実際、針生とか角三君とか鈴本とかはここじゃない所に居れば諸々の罪は免れたと思うなあ……」

「あ、それ、俺もですね!」

「いや、刈谷はどう考えても本人の素養的に駄目ですわー」

「そんな、ひどい……」

 ……で、まあね。

 俺達、何かと濡れ衣だのなんだの着せられまくってるけどさ。その原因の1つが、スクールカースト的な問題っていうか、化学部=根暗オタクインドア派変人狂人変態集団っていう謎の偏見に基づいた一般的イメージなんだと思うんだわ、これが。

 実際狂人だの変人だのばっかなのは正直否定のしようが無いし、学校一どころか地域一の狂人とか抱えてる我が部としては遺憾の意を表明しつつも本人達が真っ先に「まあこう扱われるよね!」って納得しちゃってるとこもあるから何とも言えないんだけどね。というか実際は俺達、アナログのエロ本とかそんなにお世話になる事ないんだけどね!そんな事言ったって誰も聞いちゃくれねえ!世知辛え!


「……とにかく、そんな不名誉は御免被るぞ、俺は」

「まあ、そうでしょうね。となれば、俺達に残された道は1つしかありません」

 鈴本を元気づける為とか全く考えてなさそうな社長が、鈴本の台詞に食い気味に発言した。

「科学雑誌の箱がゴミ捨て場に無い以上、科学雑誌は未だ、犯人の手元にあることになります。よって俺達はエロ本をすり替えた犯人を秘密裏に探し出し、取引を持ち掛けることで全てを丸く収めることができるということです」

 ……やっぱこうなるよねー?うんうん知ってた。


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