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図書室の間違った使い方~2~

 実験片付けた。

 普段ならこのままトランプかUNO出すけど、今日はこのまま雑談っていうか推理に入る。

「ええと、じゃあ色々考えてみようか。『辞書ばっかりリクエストする理由』」




「俺としては図書委員および司書さんへの嫌がらせ説を推したいですね!」

 刈谷がいきなり言い始めた。なんか……気持ちは分かるけど。なんか。

「つまり!リクエストを辞書ばっかりにすることで図書室の機能を失わせようという邪悪な試みですよこれは!」

「流石に無いでしょ、それは」

 早速羽ヶ崎君に切って捨てられた。

「いやいやいや!でもよく考えて下さいよ羽ヶ崎君!」

 でも刈谷、めげない。

「いいですか!辞書っていうのはですねえ、分厚い!でかい!重い!3拍子揃った書籍なんです!」

 うん。重しに使ったりするよね。辞書。

「そんなものが大量に蔵書に加わるとしたら、どうですか!俺達図書委員の仕事は力仕事になってしまいます!」

 いや、それぐらい別に、どうってことないんじゃ……だって辞書でしょ?辞書、普通に手で持てるじゃん……。

「ええと、じゃあ刈谷の推理は、『図書委員への嫌がらせの為』っていうことになるのかなあ」

「はい!」

 すっげえ無理がある気がするけど。なんでわざわざそんな回りくどい事するんだっていう。嫌がらせならもっとやりようあるじゃん。棚の本全部抜いて横に積んでおくとか、順番バラバラに詰め直すとか……。


「あ、それから『嫌がらせ説』はもう1個根拠があるんですよ」

 まだあるんだ。

「筆跡です」

 筆跡。

 ……辞書をリクエストしてるリクエストの紙は、全部なんとなく筆跡が違う、って刈谷、言ってた。

 で、わざと変えたらこんなもんかな、っても。

「俺は筆跡を『わざと変えた』上で、『同一人物』が辞書をリクエストしていると思うんです」

 うん。というかこれ、複数人でやってるとは思いにくいし。それは分かる。

「あー……つまり『明確な悪意がある』って言いたい訳?」

「そうです。悪意も無く、ただ本当に辞書をリクエストしたいんだったら、筆跡をわざわざ変える必要はありません。だからこのリクエストは本当に辞書が図書室に欲しいわけではなく、何らかの悪意を持って行われた嫌がらせだと思うんですよ!」




「嫌がらせはまあ、こうやって刈谷が困ってる時点であり得ない話じゃないかなー、とは思うけどさー……少なくとも力仕事をさせてやる!ってんじゃないよ。絶対」

 針生の言う通りだと思う。なんか違うと思う。

「だから図書委員への嫌がらせにしても、内情知っててさー、変なリクエストばっかだったら困るって知ってて、やってるんじゃない?俺だったらそうする」

 あー……あ。

 そっか。

「本のリクエスト、今してる人って、図書室によく居る人、だけ……か」


「それです!それですよ角三君!本のリクエストの募集についてはまだ図書だよりが発行されてませんから、図書室に置いてあるリクエストボックスを実際に見るしか知る方法が無いんです!つまり犯人は、よく図書室を使っている人物!これで犯人が絞られましたね!」

「という々、図書室使ってる人じゃないとそもそもこういうことやる動機が無いんだから、そんなの分かりきった事だろ」

 うん。まあ……一応、『図書室を全く利用しないけれど図書委員に恨みがある』みたいな人の犯行じゃない、っていう仮説は立てられる……よね?

 実際に図書室に行かないとリクエストの存在を知れないわけだから、よく図書室使ってる人ぐらいしか、犯行を実行できないし、多分、よく図書室使ってる人ぐらいしか、犯行を実行する動機も無い……。




「じゃあ、図書室、見てみる?」

 突然、加鳥が言いだした。

「僕ら、あんまり図書室使わないよね。だから図書室の中の事、よく知らないし、実際に見てみないと分からないことってあるんじゃないかなあ」

 うん。そうだと思う。俺、図書室の中身、正直今、頭に思い浮かばない。

「は?この面子でぞろぞろ図書室行くわけ?」

「うん」

 羽ヶ崎君が嫌そうな顔してるけど、加鳥、全く動じない。まあ、羽ヶ崎君が嫌そうな顔してる時で、本当に嫌に思ってる時ってあんまりないし。

「行ってみっかー。ついでになんか面白い本あったら借りてみよっかなー」

「俺のおすすめが丁度、図書室入り口に置いてあるんですよ!是非!」

「刈谷のおすすめはなんかやだなー」

「そんな、ひどい……」

 で、針生と刈谷も立ち上がったら羽ヶ崎君も渋々立ち上がって、俺達はぞろぞろ図書室に向かうことになった。




 静かだった。当たり前か。図書室だから。

「あ、図書室内ではお静かにお願いしますね」

 刈谷がなんか図書委員っぽい。当たり前か。本当に図書委員なんだし。

 ……図書室の中は本がいっぱいだった。いや、これも当たり前なんだけど……。

「ええと、リクエストボックスはこれかぁ」

 加鳥が小さい声で言いながら、受付カウンターの横の机に歩いていった。

 そこに置いてある小さい箱に、『リクエストBOX』って書いてあって、『本のリクエストを受け付けています!』ってだけ書いてあった。箱の横にはリクエスト用紙もあった。

 どっちも、カウンターの横の机に置いてあるけれど、それってつまり図書室の端っこだから、あまり目立たない所にあることになる。カウンターからも見えづらい位置。これじゃあ誰が入れたか特定するのは難しいかも。

 とりあえずリクエストボックスを遠巻きに眺めた俺達は、ぞろぞろ移動して、辞書の棚を見に行った。

「ここが辞書の並びですねー」

 刈谷が言ってくれるまでもない。辞書とかが入ってる棚だった。……多分俺、ここにある本、卒業まで1回も使わない自信、ある……。

「結構棚、大きいね」

 辞書以外にも事典とかのでかい本が入ってたりするから、棚自体が割と大きい。だからか、結構スカスカしてる。ほとんど空いてる段もある。空いてる段が丁度、腹のあたりの位置にあるから、ますますスカスカに見える。なんかレイアウト間違えてる気がする。

「あんまり辞書、置いてないんだねえ」

「そりゃ、使わないもの置いとかないだろ。……っていうかこれだけあれば十分でしょ」

 国語、漢和、和英、英和らへんは数冊ずつ置いてあるし……他にもフランス語とドイツ語ぐらいまでならある。うん、十分。

「あれ?リクエストに和仏の辞書とかもあったよね?もうあるじゃん。リクエストしなくていいじゃん」

「そうなんですよねー……なんで既にあるものをリクエストしたのか!」

 刈谷の怒りは分かるけど、大きい声出さないでほしい。辞書の棚の裏、自習スペースだから、気にした方がいいと思う。というか図書委員なんだから気にしろよ……。




 それから辞書とかの棚を見たけれど、特に何も発見は無かった。棚だった。

 そのまま人の少ない自習スペースを抜けて、もう一度リクエストボックス前に来た。

「あ、さっき書いてもらった奴、入れときますね」

 刈谷がポケットからさっきのリクエスト用紙を出して、箱にねじ込……もうとして、止めた。

「あれ、また入ってる」

 リクエストボックスに既に用紙が入ってたみたい。

 刈谷はごそごそやってリクエストボックスの中の紙を出した。割とごっそり出てきた。

 で、開いて、見た。

「あ、辞書じゃない……けど、うーん……」

 すごく微妙な顔した。

 気になって俺達も覗いてみたら。

「ええー……」

「うーん、これは……?」

「よかったじゃん。とりあえず辞書以外のリクエストでしょ」

「いやいやいや、こ、これは……ええー……?」

 一枚目。『百科事典』。

 二枚目。『出版についての本』。

 三枚目。『図書の販売について』。

 四枚目。『読書法について』。

 五枚目。『百科事典』。

 六枚目。『学校図書館についての本』。

 ……以下、似たようなのがいっぱい。数えてみたら20枚ぐらいあった。

「……これ、リクエストした人、読むのかなあ……?」

「いや……ええー……人の趣味とやかく言える立場じゃないけどさー、でも俺、これはなんか変だと思う」

 俺も変だと思う。

 なんか……すごく偏ってるし、普通、興味持たないだろ、っていうジャンルの本ばっかり選んでるかんじがする。

 いや、確かに変なジャンルの本って少なそうだし、読みたい人はもっと欲しいのかもしれないけど……うーん。

 ……駄目だ。

 わかんね……。




 結局その日、色々推理してみたけれど、答えは出なかった。当然か……。

 リクエストについては刈谷が他の図書委員とか司書の先生に相談して扱うみたいだから、実害はそんなに無いと思うけど……なんか、すっきりしない。




 すっきりしなかったから、次の日、部活じゃない日だったから図書室に寄った。

 なんか場違いな気がする。1人で入るとますます、場違いな気がする。

 ……やっぱやめようかな、と思って、図書室を出ようとしたら。

「あれっ角三君もかぁ」

 加鳥と遭遇した。

 うん、やっぱ気になるのは一緒か。


 加鳥と一緒にリクエストボックスを見てみた。なんか悪いな、と思いながら覗いてみたけれど、今日は中身は空っぽだった。まあ、昨日の今日だし。

 次に、辞書の棚の並びをもう一回見に行く。

 ……そこに。

「あれっ?どしたの?2人して珍しいね」

 舞戸が居た。

 ……。

「あの、舞戸さん、何でこんなところに?」

「非常にここの居心地がいいからである」

 舞戸は辞書の棚の陰に椅子持ってきて座って、そこで本読んでた。普通に自習用の机あるんだからそっちで読めばいいのに……。

「まあ、隅っこってなんかいいよねえ。分からないでもないよ」

「うん。隅っこっていいよね。……本読むにしても自習するにしてもさ、やっぱり自習机の方に行くと、どうしても相席になっちゃって気を遣う羽目になったりするからね。あんまりあっちには行きなくないんだ」

 あ、それは分かるかもしれない。相席になったら落ち着かなさそう。

「特に何かね、こう、相席好きな人っているじゃない。他の机空いてても、敢えて相席してくるタイプの人、いるじゃない」

 そんな人居るの?俺、知らない……。

「自習スペースの机は限られてるから、詰めて使うべきっていうのは分かるんだけどね。どうしても相席だとうっかり目が合っちゃったりした時にこう、落ち着かないから……」

「うんうん、そっかー、そうだよねえ」

 ……あれ。なんか、加鳥が考え始めた。

「……刈谷の当番って、今日だったりするかなあ」

 加鳥がカウンターの方を覗くと、すごくタイミングよく刈谷が顔を出した。すっげえ。

「ちょっと、聞いてみなきゃなあ」

 それで加鳥、カウンターの方へ歩いていった。

 ……何か、分かったのかな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ぁー。。。この犯行が成功した場合、某女子が本借りたら読まずに教室に帰る姿が見える。。。
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