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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Fourth Part. 魔術師から賊を経て
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79. 乱れた後に告白される事実

「つまり、サクヤの情報が間違っていた。ブカレスは組織と無関係で、そのブカレスを殺害した犯人と勘違いされて逃げてきたというわけか……」

 サクヤから得た情報が間違いだった事と、ブカレスから得た情報、その貴重な情報提供者を殺害したというあらぬ疑いをかけられた事が解ったハーベスタは、腕を組みつつ手であごを撫でた。


「あれ、サクヤは来ていないの?」

「ああ、今買出しと情報収集の為に港町へ向かっている。サクヤの情報が外れたとなれば、新しい作戦を考え直す必要があるな」

「催眠術も通じなかったしね」

「まあな。それにしても、あいつもタイミングが悪いな、お前達の騒ぎに巻き込まれなければよいが……」

 そして話題の中心となっている人物は、今間違いなく騒動になっている港へ居たままだ。


 ユキは不安だった。

 今あの場所には、ブカレス大主教の命を奪った人が居るかもしれない。

 ただでさえ騒動が起きて混乱状態なのに、もしもサクヤの存在が組織に知れていたなら……。

 サクヤの命も奪ってくるはず。

 もう嫌、もう私の前で誰も死んで欲しくない!

 お願いだから死なないで……。


「そうそう、中央精霊区にサクヤも来てたみたい。別の用事みたいだけども」

「ほう、そうか。まあ別の用事だろうな」

 ついでにマリネは中央精霊区にもサクヤが居た事を告げるが、これはお互いに蛇足だったと思ったのか、話を発展させる事も無いまま軽く流してしまう。


「いや、待てよ……」

 蛇足の話題から次の話題に移ろうとした時、ハーベスタは何かに感づいたのだろうか?

 視線を落とし、何やら深く考え事をする。

 その行為がどういう意味を持つのかは、ハーベスタ以外は誰も解らない様子だった。


「ああ、すまない。ご苦労だった。実に有用な情報だった」

 ほんの少しの間の後、周りが置いてきぼりになっている事に気づいたハーベスタは固く組んでいた腕を解き、頭をかきながら全員に一言だけ謝罪をする。


「それで、そっちは何がやばいの?」

「俺達がここに潜入しているのがばれた、近々ハイドラ騎士団が大挙して来る」

「そんなの、別のアジトにいけばいいじゃない」

「そうしたいが、他の同志から国内のアジトの殆どが組織と国の兵士達に潰されたという連絡があった。国境の警備も厳しく、港もお前らの騒動で使えない。ハイドラ騎士団相手に戦うという選択肢は無いが……。まあアジト以外の別の場所へ逃げるか、投降するかの二択だな……」

 ユキ達が巻き込まれた騒動以上に、新世界は窮地に追い込まれている事に気づく。


 ハイドラ騎士団は水神の国の兵団の中では最強であり、大戦時も無数の戦果をあげてきた。

 ユキもそんな騎士団の勇名は知っていたため、今の状況がどういう状態なのかはすぐに理解出来た。


「皆様ご無事でしたか?」

「おおサクヤ、戻ったか」

 全員が深刻かつ、切迫した空気に圧されている時だった。

 今まで買い出しと情報収集の為に港へ行っていたであろうサクヤが戻ってくる。


「港町で大主教ブカレスが殺害されたらしく、そのせいで慌しくなっております。犯人はマリネだという不穏な噂も流れておりましたし、どういう事でしょうか?」

「実はね――」

 マリネは、港で起きた出来事のみをサクヤへ簡潔に伝えた。


「謎の攻撃……、ですか」

「そうなのよ。そんな遠距離から正確な攻撃が可能なのかって思ってね」

「私にはちょっと解らないですね、力になれず申し訳ありません」

 サクヤは文官ではないし、武官でも無い。

 当然、魔術や工学の知見は無い。

 だから灯台からの銃撃に関する詳細な情報を、知らなくて当然なのは全員が解っていた。

 それでも聞いてくれた、頼ってくれた事に対して答えられなかった事が気になったのだろうか、サクヤは申し訳なさそうに頭を下げて謝った。


「で、ハイドラ騎士団の動きはどうだ?」

「恐らく、一両日中にもここへ来るかと」

「ぎりぎりか……、一度新世界のメンバーを解散させるか?」

「解散はしなくてもよいかと、ここから馬を飛ばして半日ほどの場所に私の別邸があるので、そこで皆様を匿います。別邸で働いている給仕には話をつけてありますので、皆様の正体がばれる事も無いでしょう。ほとぼりが冷めるまではそこを拠点として下さい」

「すまない。世話になる」

 相変わらず準備が良いというか、気が利くというか。

 まるでどんな事態にも備えているかのような立ち回り。

 ユキはただサクヤの手際の良さに対し、魅力すら感じてしまっていた。


「よし、じゃあ急いでここから逃げる準備をしろ!」

 こうして、新世界の大逃亡作戦が始まる。

 全員がここから去るための準備をするべく、各々の持ち場へ行こうとする。


「マリネ、少し話がある。来てくれ」

「ええ」

 マリネも同様に、荷物の整理と魔術道具の整備を行おうと、自身が普段から使っているテントへ向かおうとした。

 しかし、ハーベスタに呼び止められてしまい、二人は誰も居ない物影へと消えてしまった。



 ――そしてさらに半日後。

 荷物をまとめ、出立する支度を終えた新世界の人々がサクヤのもとへ集まっていく。


「全員で大挙していけば、逃げている事がばれてしまうでしょう。二つに分けて移動してください」

「俺は最後でいい、現場に居た方が何かあった時に作戦指揮が取れるからな」

「解りました。それではロカ、マリネ、くろ、ミズカは先発隊。ハーベスタ、ユキ達は後発隊でお願いします」

「はい」

「ミズカとハーベスタには、私の別邸までの道のりが記された地図をお渡しします」

「サクヤは一緒に行かないのか?」

「私はハイドラ騎士団のアルマンジへ掛け合い、今回の出征を遅らせられないか交渉してみます。あまり期待は出来ませんが……」

「ああ、解った。くれぐれも無理はするなよ」

「勿論です」

 サクヤの指示の下、まず先発隊であるロカ、マリネ、くろ、ミズカはそれぞれの部下を率いて隠れ家から去っていく。

 サクヤも先発隊を見送ると、ハーベスタへ目線で合図してユキには笑顔を向けた後に、アルマンジが居るであろう水神の国の王都へと向かった。


 そして後発隊のハーベスタ、ユキ、ルリフィーネ、セーラと僅かな部下達だけになった時。


「行ったか……。今しか無さそうだな」

 ハーベスタは部下達に馬の手配を頼み、一時的だが四人から離れるよう命令をする。

 この場に、ハーベスタとユキら一行だけになった事を確信したハーベスタは、急に声の音量を落として三人へ話し始めだす。


「サクヤの別邸へ行く前に、お前達へ伝えておく事がある」

「うん?」

 一体何を伝えたいのだろう?

 今は一刻を争う時なのに、他に何かあるのかな?


「その前に……。おい専属メイド、サクヤはもう居ないか?」

「サクヤ様ですか? 気配がしないので恐らくは……」

「そうか」

 どうしてそんなにサクヤを気にするんだろう?

 ユキにはハーベスタが何故そうしているかが、まるで理解出来ない。


 しかし、次の一言でユキは驚愕してしまう。


「面倒な言い回しはしない、単刀直入に言おう。サクヤは俺達を裏切っている」

「えっ!?」

 ハーベスタの意外な発言。

 私達の為にずっと頑張ってきたサクヤが、裏切っている……?

 ユキはまるで理解できず、思考は空虚な状態になってしまう。

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