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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Rurifine Part. 傍から側へ、そして……
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152. 古代遺跡の正体 ~ルリフィーネの失踪編⑦~

 ルリフィーネの私室で見つかった瑠璃色のオーブを持ったまま、女王一行は王宮へと戻った。

 そして再び開かれた会談の後、スノーフィリアとマリネ、そして魔術に関する知識の深いミズカとくろが、古代遺跡へ向かう事が決定した。



 ――それから数日後、遺跡へ向かう道中の馬車にて。


「ねえマリネ」

「どうしたのかしら?」

 今まで窓からの景色を楽しんでいたマリネは女王の呼びかけに対して、ほのかな笑顔で反応する。


「古代遺跡、私も連れて行ってくれるんだね。てっきり反対されると思ってた」

 出すぎた行動は慎むように言われてきた。

 しかし、今回は同行を許可された。

 その理由がスノーフィリアの中で引っかかっていたのだ。


「私が反対しても、あなたは無理矢理にでも行ってたでしょ? サクヤとこっそり会ったようにね」

「……うん」

 女王の心と行動を見透かした一言は、”嘘も上手くつけない少女”をぎょっとさせてしまう。

 スノーフィリアは、マリネから視線を逸らしつつ彼女の言葉に無言で一つだけ頷く。

「別に責めているわけではないのよ。それはあなたの長所でもあるのだから」

 それに対して、予想以上に驚かせた事を申し訳ないと感じたマリネは、表情を緩めてそうフォローした。


「サクヤとの密会は、幸い他の誰にも見つかっていないからとりあえず不問として……。今回の事だけど、あなたが独断で行けばあなたの責任になるけれど、私と行けば私の責任に出来るじゃない?」

「えっ、そんなの……」

「悪いなんて思わないでよ? そう思うなら、むしろあなたのしたい事を貫きなさい」

「……ありがとう」

「うふふ。ルリちゃん、見つかるといいわね」

 そして、そんな”酸いも甘いも知れた大人の女性”の気づかいに、申し訳なさと感謝を半分まぜたような感情を表情に出しながら、マリネの方を向き一つ頭を下げた。



 水神の国、謎の古代遺跡にて。

 一行は到着すると間も無く、くぼみのある台座の前へと向かう。


「さあ、いくわよ」

 ここからは、誰も体験した事無い。

 何が起こるか、どんな結末が待っているか予想すらつかない。


 マリネは、カバンの中から瑠璃色のオーブを取り出すと、それをゆっくりと台座のくぼみへと置く。

 オーブは元々台座にあったかのように違和感無く、ぴったりとはまる。


 一体どうなってしまうのか?

 消えたルリフィーネの手がかりになりうるのか?

 全員が固唾を飲み、これからの展開を見守っていた。


 ……。

 ……。

 ……。


「……あれ?」

「ねえ、何も起きないよ?」

 しかし、オーブを置いても何かが起こるわけでもなく、周囲は怖いくらいに静かなままだった。


「予想が外れたかしら、それとも他に何か……」

 置いてからしばらく経っても何ら変わった様子は無い。

 一行はそもそもオーブと古代遺跡の関連性や、オーブ自体、遺跡自体に疑問を感じていた。


 その時だった。


「ね、ねえ! これ!」

「遺跡が光りだして……!」

 今まで静観を保っていた周囲の石柱が、突然、不規則に強く光り輝きだす。

 森の中の古代遺跡は瞬く間に光に包み込まれ、女王一行はその光に飲み込まれて意識を失ってしまった。



「こ、ここは?」

 そして次に気がつくと、今まで見た事もない場所に全員が立っていた。


「あの古代遺跡は、結局転送装置だったってわけね」

 光った瞬間意識が飛び、気がつくと周囲の景色ががらりと変化する。

 それは、魔術で他の場所へ転移した時と同じ感覚だった。

 スノーフィリアもその感覚は体験済みであり、マリネの結論に無言で頷き同意した。


「それにしても、ここはどこかしら?」

 古代遺跡は、人や物を運ぶ装置だった。

 それは解ったが、問題は運ばれた先の場所が解らない事だった。

 周囲は砂と岩の塊が転がっており、植物は一切生えておらず、生き物がいそうな感じはまるでしない。


「見渡す限りの砂の地……、地霊の国かな……」

 ここまで広大な砂漠は、スノーフィリア達の世界でも地霊の国くらいしか存在しない。

 だからこそ、女王を含めた他の人らも、ミズカの言った曖昧な結論を信じるしか無かった。


「違う」

 そんな中、寡黙なくろがそう一言だけつぶやき、見慣れない物体を拾って差し出す。


「えっ?」

「これ……」

「変わった形ね、何に使うものかしら?」

 その物体は、魔術で使う媒介や器材にも見えた。

 しかし、魔術に精通しているミズカやマリネやくろが見ても、どんな素材で何のために作られたかは、即座に答えが出なかった。


 ミズカはくろから謎の物体を受け取ると、その物体の反応を見ようと、手をかざして意識を集中させた。

 本来なら、何らかの反応があるはずだった……。

「反応しない……」

 だが、謎の物体は彼女の行為に対して、何ら反応を示さない。


「あれって、なんだろ」

 三人はくろが拾った謎の物体に興味を示している時、今まで周囲の景色を見ていたスノーフィリアは、遠い先を指差しながらそう言う。


「建物……、かしら」

 女王が指で示す先には、何やら円柱状の建物のような物が複数あったが、あまりに距離が遠すぎるせいか、ゆらゆらとしていて不確かだった。


「行ってみよう?」

「ここで待っていても仕方ないし……、そうするしか無さそうね」

 このままこの場所で、反応の無い謎の物体と睨めっこをし続けるより有用と思った一同は、遠くに見える景色を目指す事となった。


「でも通そうね」

「んー、馬車も無さそうだし、やっぱ歩くの?」

 しかし、見える景色から察するに、目的の建物がある場所はかなり距離があり、誰もがそれにうんざりしていた。


「大丈夫だよ、私に任せて。解放する(リリースオブ・)白雪女王の(ホワイトクイーン・)真髄エッセンス!」

 そんな中、スノーフィリアは三人に無邪気な笑顔を見せた後に、解放の言葉を発した。

 すると女王は眩い光に包まれていき、今まで着ていた衣装や髪型が変化していき……。


「雪花繚乱! スノーフィリア聖装解放!」

 水色のスカートがふわりと広がったドレス姿になると、変身中に女王の体を纏っていた青白い光は粒状となって散らばり、砂漠の大地を明るく照らした。


「スノーフィリア・アクアクラウンが命ずる。晴好の空を駆けし光輝なる白の使者よ、我の下に姿を現し、正しき者達を真実の未来へと導け! 白雪水晶(ホワイトクリスタル・)の雲天戦車ヴァルハラ・チャリオット!」

 そして、変身が終わると間髪無く、スノーフィリアは詠唱を終えて指先を遠くの景色へ向ける。

 すると、指先から雪のような光の粒が一つこぼれ落ち、そこから豪奢な飾り付けが印象的な四人が乗れそう馬車と、同じ飾りがついた衣装と兜を被った御者の男が現れた。


「どうした! 我を呼んだか!」

「私達をあそこまで運んで欲しいの」

 御者の男の強い口調に若干圧倒されつつも、スノーフィリアは願いを伝えた。


「いいだろう、連れて行ってやる! さあ乗れ早く乗れ! 時間は待ってはくれないぞ!」

 どうしてここまで強い口調で、急がせるのだろうか?

 全員がそう思いながら、呼び出した馬車へと乗りこんでいく。


「いくぞっ! はぁっ!」

 全員が乗り終えると馬車の扉は自動で閉じ、御者は威勢のいい一言を発して手綱を締めると、馬車は物凄い勢いでその場から離れていってしまった。

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