恐怖
夢、なのだろうか。
辺りが暗い。
真っ暗だ。
恐怖で頭ん中がどうにかなりそうなぐらいに。
僕の目の前に、僕がいた。
やはり夢の中という推測は合っているのだろう。
夢の中の、つまりもう一人の僕と僕は沢山話をした。
「君は、何のために戦ったの?」
「仲間を、親を兄弟を守るために戦ったよ」
「君にメリットなんてあった?」
「いや、全くと言っていいほど、メリットなんてなかった」
「今後、君が君であるために、どうしたい?」
「……誰かのために、戦いたい」
沢山話をしたが、どれもこれもつまらなかった。
だけど、何故だろう。
つまらなかったのに、とても楽しかった。
自然と、もっと話したい、話していたい、と考え始めた。
「じゃあ、僕はもう消えるね」
「そんな事言うなよ。僕を一人にしないでくれっ」
「大丈夫。また、君に会えるよ。……さよなら」
僕が夢の世界から、現実へと意識を覚醒した頃。
僕はもう地獄の入口に立っていた。
✝︎✝︎✝︎
「あぁぁあああぁあぁぁっっ!!」
「良いわ、そそるわ、最高だわっ! もっと、もっともっともっと聞かさてっ。その叫び声を!!」
何度叫んだかも忘れてしまった。
気付かずぬうちに、いや、気付こうとしなかっただけかもしれない。
一本一本、自分の足の指が切り取られていく。
大きなペンチで爪を剥ぎ取られたかと思えば、次に大きなハサミのようなもので指を切断されていく。
グランカはまさに、『拷問』を受けていたのだ。
「ほらほら、早く魔法で回復しないと死んじゃうかもよ?」
「……っ! 『治癒』っ!」
グランカは自分の魔法に縋るしかなかった。
体は動かそうにも動かせない状態である。
アルルの放つ魔法『捕縛鎖』によって拘束されていた。
グランカは椅子に座っている。
手足は捕縛鎖によって動かすことなどできない。
ただ、死なないために、生きるために、自分の魔法に縋ってこの地獄が終わるのを待つしかなかった。
「…………はぁ、はぁ……あぁああぁあああっっっ!! ヒー……ル!」
「うふふふふっ。今日はこのぐらいでお開きしましょう。グランカ・ホーネット。明日はあなたでもっと楽しいことをしてあげる。拒否権はないわ、だってあなたは」
──私のペットなんだから。
「……は、あは、あはははははっ。あはははははははははっ!!」
怖かった……。
何度も何度も、涙を流した自分の笑い声が脳髄に響いたことが。
苦しかった……。
目の前が真っ暗になって全部が消えそうな程の思いが。
許せなかった……。
次々に仲間が殺されていくというのに、ただ、呆然と見ていた自分が。
気付けば、グランカの髪は部分的に白くなっていた。
人というのは膨大なストレスによって髪の色素が抜け落ちる、と聞いたことがある。
グランカもまた、その一人。
「僕は……僕は……。一体、いつまでこんな地獄を、味わなければいけないんだ……」
次第に、心の奥底から負の感情が露になる。
「……死ぬのは嫌だっ。殺されるのは嫌だっ。僕の邪魔をするヤツは、グチャグチャにしてやるっ!! 殺す! ぶっ殺す! ぶち壊す! …………僕は、たたかいたく、ないっ」
グランカは、自分の感情すらまともに制御することができない状態であった。