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《反逆の回復術師》  作者: 紫色のまる〜い団子
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プロローグ

ちょっとグロい内容です。

お気を付けください。

次々に仲間が死んでいく。


「アハハハっ!!」


戦場の中心区。

響くのは悲鳴と少女の楽しそうな笑い声、ジャラジャラと鳴る鎖の音に切り裂かれていく音。

その音と声を聞くだけで吐き気すら感じる。


「142っ、147っ、163っ!!」


少女が切り裂いていった人数が早々と増していく。

切り裂いた人数が増えれば増えるほど、戦場から聞こえてくる悲鳴が小さくなってきた気がしなくもない。


「もっと、もっともっともっと!!」


その光景を一言で表すのなら『地獄』。

たったその一言で場の様子が分かりすぎるぐらいだ。


しかし、少女の笑い声や悲鳴以外に、こんな声が聞こえた。


「『治癒(ヒール)』っ!」


淡い光が戦場の一部を彩る。

すると、光を受けた兵士達の傷は消えており、服以外は(いくさ)前と言っても過言ではないほどに完璧に治されていた(・・・・・・)

しかし、目を開けることはなかった。

皆、即死だったのだ。


「……あら?」


少女は動きを止め、光の中心をじっと見つめる。

目に映ったのは黒髪に黒い服の目立たない格好をした少年だった。

見るからに戦闘向きではない彼が戦場の前線にいるのは【回復術師(ヒーラー)】だからだろう。

傷の治癒や状態異常の回復を生業(なりわい)としている前後方支援型(ぜんこうほうしえんがた)の職業である。


「あなた、面白い魔法使うわね。私、面白いことが大好きなの。知ってる? 人を殺したらね、悲鳴なんか上げちゃって、その様子を見た人たちがこう言うの。命だけわ〜、って。面白いわよねっ」


カツカツと地面を歩くには似合わない音を鳴らしながら少女は少年に歩み寄る。

聞いてもいないのに自分の性癖を平然と、それどころか熱のこもった声色で説明をする。


「私はアルル・ネイティアって名前なの。あなたは?」

「……っ!」


いつの間にか相手の攻撃圏内にまで歩まれていたことに気づいた少年はアルルと名乗る少女を睨む。

怨念(おんねん)の込められたその瞳を見るなり、アルルは赤く火照(ほて)る頬を両手で抑え、くねくねと体を動かし始めた。


「いやーんっ、そんな熱い視線で見られたら、私、あなたを殺したくなるじゃないのっ」

「……は、はは。危険なんて言葉だけじゃ収まりそうにない存在だな」

「あら、そう? 私はただ自分のやりたいことを、自分の思ったことを言っただけなんだけど?」

「頭の中で殺すなんてポンと出る時点で充分(じゅうぶん)危険だろうが。……僕を殺そうってか?」


自然と距離を取るために臨戦態勢に移る。

自分に出来ることは魔法(ヒール)と回避だけ。

この現状では魔法なんかよりも回避を優先させるべきだろう。


「そうしてみようかしらね」


アルルは(なま)めかしく舌なめずりをする。

滲み出てくる色気と同時に恐怖が押し寄せてくる。

見た目とは異なる、言葉とは全く異なる、何かが押し寄せてくる。

そして、気づいた時には遅かった(・・・・)


「なっ!!? あ、あああ……ああっ!!!」


先程まであった右足の膝から下が無くなっていたのだ。

警戒していたはずなのに、それでも反応することが出来ないほどに高速だった一撃は、少年の無くなった足が物語っているだろう。


「ひ……ひ……っ! ひー、ルっ」


右足を両手で抑えながら詠唱を口にする。

すると切断された右足が生えてきたのだ。


「そういえば、あなたの名前聞いていなかったわ。お名前、な〜に?」

「誰が、お前なんかに……! ああぁぁあぁああっ!!」


今度は左腕が吹き飛ぶ。

無くなった左腕を治すべく、左肩に手を添える。


「ひー、ル!!」


またしても、その魔法名を口にするだけで腕が生えてくる。


「質問が聞こえなかったの? 名前は?」

「…………グランカ・ホーネット……」


ようやく名前を聞けて嬉しいのかアルルはニヤ、と再び艶めかしく舌なめずりをする。


「そう。グランカ・ホーネットって言うのね。いい名前だわ。……そうね、そうよ。殺すのはまだ惜しい。だから、死ぬまで私のペットとして生きなさい」


その言葉を最後にグランカの意識が途切れた。

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