紅い館のお手伝い③
おひさしぶりですね
ㅤ俺の仕事の内容は紅魔館図書館の本掃除(というか整理)になっていた訳だが、来てみたらなんだこれは。
ㅤ天井まである本棚から崩れ落ちた本が、彼方此方に散乱している。場所によっては、足の踏み場がない程だ。
ㅤそんな本だらけの床をつま先でそろりそろり歩いていると、魔法で本を浮かせ、片付けていたパチュリーにあった。
「久しぶり、パチュ「手伝ってくれるのよね、ここの本をこの紙の通りに並べてちょうだい」挨拶もさせれくれないのか……」
ㅤパチュリーから一枚の紙を渡される。そこには、上から下までびっしりと、本の名前とその場所を示す記号が書き込まれていた。
「うへぇ、この量半端じゃないな……うん?」
ㅤ名前にバツがつけてあるものがある。それもかなりの数。なんだろうか。
「ああ、それはあの『コソドロ』に取られた本よ」
ㅤあいつ、こんなに本を盗っていたのか……ざっと百はあるぞこれ。魔理沙のジャイアニズムは本人も尊敬するほどだろう。
「じゃあ、やりますか」
「お願いね」
ㅤ一つずつ、表を見ながら本を入れてゆく。似たような本や、シリーズものにも関わらず、最後だけ魔理沙に取られたものなどに注意し、入れる。
俺には読めない文字のものから、日本語で書かれた外によくあるような本。それから、古い漫画のようなものから小説まであった。これ、言えば貸してくれるかな。
「ちゃんと返してくれるなら貸すわよ」
おお、さすがパチュリー心が広い。
そんなこんなで、本の整理を進めていく。上を向いて、下を向いて、たまに浮かんで本を入れる。そんな短調な作業の繰り返しであった。
ㅤ数十分か、数時間か。同じ作業をしているせいで、心が無心になりかけた頃、咲夜がお茶を持ってきてくれた。
ㅤ小悪魔、パチュリーも呼ぶ。
「今日のお茶は、咲夜特製スペシャルティーですわ」
ㅤそう言って、お茶をカップに注ぐ。ふんわりと、果物の香りが漂ってきて、とても美味しそうだ。
ㅤ……しかし、その一方で、パチュリーと小悪魔は引きつった笑いを見せていた。
「そういえば、人里から頂いたマーマレードがありました。とってきますわ」
ㅤヒュんと姿が消える。俺は、引きつっ他笑いの理由を二人に聞いた。
「そういえば、貴方は知らないのね……あのお茶の威力を」
「威力?」
「凄いんですよ。なんというか、なんとも言えない味なんです」
「貴方は悪魔だからそう言えるのよ」
「パチュリー様だって魔女じゃないですか」
「まぁ、そうだけれど……」
ㅤそう言って、ひとくち啜る。その瞬間、パチュリーの顔にもっとシワがよった。
ㅤ嫌な予感しかしないな。
「……いただきまーす」
ㅤ一口。
「……!!!」
ㅤ口の中に広がったのは、本当に、「なんとも言えない味」であった。
ㅤ甘くもなく苦くもなく……かと言って不味くもない。お茶という感じはしない。色は綺麗な紅茶の色をしているが、紅茶のあの味がしないのだ。
「不思議だ……不思議過ぎる」
ㅤそれらを総合してただ一ついえるのは。
『二度は飲みたくない』
ㅤ満場一致でその感想だった。
「これじゃあ、口直しが逆じゃないか」
ㅤマーマレードで口直しって、何なんですかね。よく分からないです。
ㅤそんな休憩を終え、俺はパチュリーに呼び出された。
「あらかた終わったわね。そんなあなたに新たな仕事よ」
細かく文字が書かれた、一枚の紙が渡される。……盗品リスト? とか、書かれていた。
「盗人は霧雨魔理沙。ここに書かれている本を取り戻してほしいのよ」
次の任務は、蛇ミッションらしかった。