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夏生詩集2

ラッシュアワー

作者: 夏生

詩ですが、長いです。ご了承くださいませ。

運行見合せ、振替輸送

増えるばかりの人だかり

ひとつ止まれば流れ滞る

押し押され、行くべき場所へ

何がなんでも


臭いと熱気に覆われて

全部捨ててしまいたい、と

心の叫び、外に漏れだしそうで

すし詰めされて指跡だらけの

窓に押し潰された、その向こう側


淡い花が咲いていた

ほんのり甘い香りを

思い出す

彼女の艶やかな髪にひとひら

のっていた


昨日のことのようだ

手を伸ばせばすぐに

届きそうな距離


つり革を辛うじて握る

生暖かい湿り気に吐き気が

目を閉じてもう一度彼女のことを


とっくに成人しているはず

まぶたに浮かぶのは制服姿の彼女

一緒に歩いた通学路

彼女のカバンに揺れるぽっちゃり犬の

ストラップ


彼女の顔を見ることが恥ずかしくなると

ぽっちゃり犬のストラップいじっていた

ふんわり柔らかい感触が手に残っている


遠くに引っ越してしまった彼女

手紙もメールもゆっくり途絶えた

自然消滅


ショウメツの響きが

酷く感じる

彼女との時までショウメツした

ような響きだ


目を開ければ駅に到着

大勢に押し出された


流れから抜けて一息つくと

目に飛び込んできた

ぽっちゃり犬のストラップ


踏まれた跡がくっきりと

ぽっちゃり犬の腹についていた


「あっ」


顔をあげた先に

淡い色の花が

淡い色の花のような頬で

息を切らせながら


止まっていた電車の

運行再開のアナウンスが

駅構内にこだました










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