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俺、大地に降り立つ

俺が降り立ったのは…

「なんですかね、あれ」


いつ洗濯したのか定かではない、よれた戦闘服に筋肉質の身を包んだひげもじゃの男は、誰に尋ねるでもなく独り言のようにつぶやいた。


高さ数メートルほどある四足歩行のRVライドビークルを、元々はホテルであった瓦礫の影に入れて緊急停止させてハッチを開くと、上空をゆっくりと通過する飛翔体に目を光らせる。


「聖国め、また何かやるつもりなのか」


同じように、空を仰ぎ、悪態をつくメガネをかけた優男。彼はきちんと洗濯された、工兵が着るようなツナギ姿だ。


「こちらに気づいている様子はなさそうだ。次のキャンプで上層部に連絡を入れよう。どのみちここでは無線は通じないからな」


RVから身を乗り出し、飛翔体を撮影していたパイロットスーツ姿の女が二人にそう告げた。


「「了解!」」


「しかし、奇妙な形をしている。今まで見たどのタイプとも違うようだ」


彼らは飛翔体が見えなくなってからさらに10分ほど様子を伺い、RVの背中に搭載された発電用ディーゼルエンジンを始動させ、瓦礫のホテルをチェックアウトした。


---


「なーんにもないな」


「え、ええ」


俺と金髪乳だけ女神が降り立ったのは教会だったと思われる場所。


事前にスルーフィードを飛ばして偵察した際の情報とはまるで違う。


「えっと、どうも、その」


「金髪さん、場所を間違えたのならはっきり言ってください」


「あうー」


どうやら降り立つ場所を間違えたようだ。


かろうじて四分の一ほど残っていた教会の壁には、そこかしこに人為的な破壊の跡が見受けられる。


「これは銃弾による…ん?」


気配を感じて振り返ると、薄汚れたぼろぼろの服を着た少女が立っていた。


元々は白かったと思われる野生色になったうさぎらしきぬいぐるみをぎゅっと抱きしめている。


ちなみに俺は現在、銀色のにくいアレの姿だ。


「あの、か、かみさま?かみさまなのですか?おいのりがとどいたのですね!」


少女は金髪女神を見て泣き崩れた。


---


少女に手を引かれ、女神と向かった先は避難用シェルターだった。


道すがら、半ば倒壊した家々を見て違和感を覚える。


スルーフィードが送ってきた映像では高層ビルが林立し、かなり文明の進んだ世界だと思ったのだが、ここは石造りの平屋が多く、未舗装の田舎道が続く。


某ゲームの文明レベルで言えば産業革命が始まる前とでも言うべきか。金髪女神の隣を歩く少女をよく観察すると、粗末な麻のワンピースに木靴というスタイルだ。


数分ほどでたどり着いたシェルターとは名ばかりの薄暗い地下倉庫には、数十人ほどが詰め込まれ、みなが口々に不安を漏らしている。


薄暗いのが幸いしているのか、俺の銀色のにくいやつの姿を見てもだれも気にもしない。


「みんな!かみさまをつれてきたよ!かみさま、こちらです!」


しかし少女の声はざわめきにかき消され、正体不明の俺たちは特に警戒される様子も無く、奥へと進む。


「女神さん、この銀色の姿だとすごい目立つはずなのに、みんなの反応が薄くて逆に怖いんだけど」


「え?今スーツ姿なんですか?普通にいつものラフな格好に見えますが」


バイザーの隅に「スーツ隠蔽 : オン」という表示を見つけた。


人前だと結構恥ずかしいから、気合入れて我慢していたのに!スーツのばか!


人ごみを掻き分け、さらに奥のほうに進む。


「かみさま、みんなをなおしてあげて!」


シェルターの一角にけが人が集められていたが、どこを見ても医療器具らしきものは存在しない。


「金髪さん、なにかこう「癒しの光!」みたいな必殺技は出ないの?」


「残念ならが、私たち女神にはそのような力は備わっておりません。あくまでも仲介役ですので」


がっくりとうなだれるおっぱい女神。


「せめてこの人たちの手当てだけでも…」


そんなことを考えていると不意にどすん、どすんという音が響き、シェルターの天井からぱらぱらと土が落ちてきた。


---


突然のゆれに、ざわざわと騒がしかったシェルターの中が静まり返る。


何かが歩き回るという表現がぴったりな音は、シェルターの入り口付近まで移動したあたりで急に消える。


入り口付近を凝視していると、差し込む外光をバックに人のシルエットが浮かびあがる。


「私は軍から派遣された者だ。避難民の誘導を命じられている」


シェルターの奥まで届く声にはあまり威圧感は無かった。声の主はどうやら女性のようだ。


---


俺と女神、そしてここまで案内してくれた少女はシェルターに入っていた人たちと共に外に出る。


村に残っていた無傷の荷馬車がかき集められ、連結されていく。


負傷者や子供、身重な女性や老人が優先的に乗せられ、その先頭には見慣れない物がつながれた。


高さは人の背丈の三倍ほど。グレーに塗られた巨大なカニの甲羅のような構造物から四本の足が突き出した不恰好なスタイルのそれには複数の砲門や銃座があり、一般用ではないことが見て取れた。


負傷者を運ぶのを手伝っていた俺はその見慣れないものを凝視していた。


「どうした、第二世代のライドビークルを見るのは初めてか?」


先ほど、シェルターの入り口で軍の関係者を名乗っていた女性から声をかけられた。


「ライドビークルというのか。地元では見かけないからつい」


少なくとも俺の住む世界には四足歩行の戦闘車両など存在しない。はずだ。中二心をくすぐるデザインではあるが、何かが足りない。


「これまでと形状の異なる第二世代は遺構から見つかったばかりだから無理も無い。少なくとも数百両は埋まっているらしいから、そのうち珍しくなくなるだろう。これで聖国との戦いが有利になれば…」


いま戦いと言った?俺は隣で呆けている人をつついて、小声で話しかける。


「金髪さん、この世界、もしかして戦争中なの?」


「私、聞いてませんよ…」


突然、カニの甲羅の上から誰かが怒鳴った!


「隊長!聖国のやつらが来ます!」

こちらの更新はしばらくぶりです。

どきっ!ゾンビだらけのショッピングモール!(首が)ぽろりもあるよ!

という方向で書いていたのですが、急遽変更しましま。

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